真夏のくしゃみ
※武頼庵(藤谷K介)様主催『24夏のエッセイ祭り企画』参加作品です。
連日、過酷なまでに暑い日々が続いています。
暑い屋外と、ガンガンに冷房の効いた屋内との温度差に、しんどいと感じたり、めまいを覚える方も多いでしょう。
でも、自分の場合は少し違います。真夏や真冬に急激な温度差を感じると、毎回ではないものの、結構な頻度でちょっと困った症状に見舞われてしまうのです。
──くしゃみが出ます。
ひたすらくしゃみが出続けます。
それも『はくしゅんっ!』とかいう可愛いものではありません。それこそ芸人さんがコントでワザとやるような『ぶぅえっくしょーいっ!!!』みたいに豪快なヤツが連発です。
数分間に渡ってくしゃみが続けざまに出て、止まらなくなってしまうんです。
家の中ならまだいい方です。しばらく経てば、嘘のようにぴたっと治まるんですから。
これが街中だと、けっこうな範囲の注目を集めてしまいます。
何しろコントみたいなくしゃみですから、最初は生暖かい視線なんです。『お? 何かお調子者が受け狙いでやってんのかな?』みたいな。
でも、それがひたすら連発ですから、段々と視線が怪訝なものに変わっていくのがわかります。『おいおい、あいつ何かヘンな病気なんじゃねぇの?』とか。
特に小さなお子様を連れたママさんなどは、急いでお子さんを身体の影に隠して『ウチの可愛い〇〇ちゃんに移したら許さないわよっ!』と警戒心剥き出しです。ううう、穴があったら入りたいよう──。
さらに厄介なのは、車の運転を始めた直後に起こったりするケースです。
何とか気力で目を閉じてしまわないように堪え続けますが、最悪、車を路肩に停めて波が治まるのを待つ必要もあるでしょうね(まだそこまでの経験はないですが)。
あと、最近は電車に乗る機会がほとんどないのですが、もし満員電車で発作が起こってしまったら──自分の周囲にぽっかりと謎の空間が出来ることは想像に難くありません。
若い頃はこんなことなかったんですけどね。これも老化の一種なんでしょうか。
実はこれ、以前に調べたところでは『寒暖差アレルギー』というらしいです。
一般には7度以上の急激な温度差がキーになって、くしゃみや鼻水、鼻詰まりが起こるというものです。
でも、それはあくまで俗称で、正式には『血管運動性鼻炎』というのだとか。症状は確かにアレルギーに似てますが、特定のアレルゲンに反応しているわけじゃないですしね。
どうやら温度差に適応しきれなくて、自律神経のバランスが一時的に乱れるのが原因らしいです。
症状を抑えるには、鼻炎用の点鼻薬もアリだそうですが、数分待てば治まるものにあまり薬を使うのも、ねぇ。
予防法としては、『寒いところに出る時にはさっと羽織れる上着やマフラーを用意すべし』などとありましたが、逆の場合はどうしたらええねん。
クーラーの効いた部屋から炎天下に出るたびに、いきなりマッパになるわけにもいきませんし。
そもそもメカニズムがよくわかっていないので、対策として『ストレスのない生活を』『食生活はバランス良く』『適度な運動を』などとも色々なサイトに書かれてますが、まあ、気休めですよね。
そういうわけで、これに関しては特に病院に行ったりするわけでもなく、『起こったら起こったでその時はその時。数分間ただ耐えるべし』という方針で放置しています。
お米アレルギーなどの厄介な症状と戦っている諸先輩方に比べれば、どうってことないですしね。
ただ、自分が一番心配しているのは──。
冠婚葬祭などの厳粛な場で、この症状が出てその空気を盛大にぶち壊してしまうことなのです。
この先もし万が一、まかり間違って自分が芥〇賞とかの大きな賞を取ってしまった暁には、前代未聞のマヌケなコント受賞会見が実現してしまうかもしれません。