第2話♡ハワワッ⁉早くも主人公襲来
レン君家族の一室に着きました。このドアの奥にこの世界の主人公がいます。いろんなことが怖いです。レン君はこの世界のわたしと幼なじみですので、少しの差異も変に思うかもしれません…。あと、わたしに恋の思いがあるのかも心配です。
「お邪魔しまーす。」
きれいな玄関です。どうしましょう、ここで待っていても仕方がないですし、リビングはどこでしょう?正面のドアっぽいです。
「母さんおかえり…っていおりちゃん⁉どこ行ってたの、メールも電話の反応無いし…心配したんだよ」
これが女角レンですね。何に恥じない目隠れです。
「女角レン…」
「そうだよ?どうしたのいおりちゃん」
大きく深呼吸、できるだけ乙女の顔でレン君の目を見る。
「レン君…わたしと…付き合って」
「…ごめん、それはできないよ」
レン君は悲しい顔をしています。おかしいですね、こういう場合って戸惑いながらも喜ぶと思うのです。聞こえないふりもしないなんておかしいです!
「おかしいです!こんなにかわいい幼なじみに告白されているのになんで断るのですか⁉ひどいです!」
「そんな顔しないで、とりあえず手を洗いに行こう」
何か勘違いしているのです。そういえばこの世界のわたしは両親を失っていました。わたしの手を優しく握って運びます。一つ目の作戦は失敗です。
こんなことを考えているうちにレン君がわたしの世話をしていました。いつの間にかリビングのソファーに座ってます。
「はいホットココア、シュークリームと一緒にどうぞ」
わたしの買ったシュークリームがお皿に乗ってます。シュークリームにココアって甘々にあまです。
「いただきます。」
…
「それで、今日はどこに行ってたの?」
「ときめき学園に行ってました。用事があったのです。」
「そうなんだ、でも一声かけてほしかった。僕にとっていおりは大切な家族なんだから」
レン君の言うことに納得できず、あせりといらだちがふつふつと沸きます。
「ならなんでダメなのですか、大切なら恋人になってもいいではないですか」
「大切だから…僕だけが幸せになっちゃだめなんだ。それに、僕にとって君は妹みたいなものだからね。」
「はぁ、わかりました、もうそれでいいです。」
嫌いではないけど恋愛感情もない。男性の考えていることはよくわかりません。そんなこと考えている間にレン君の母親が帰ってきました。
「ただいまぁ、いおりちゃん、大家さんからスペア鍵を借りてきたわ。もし明日学校でも見つからなかったら、大家さんにお願いして鍵を変えてもらいなさい。」
「鍵ありがとうございます。そうします。」
「夕飯までまだ時間があるから、せっかくだしお風呂に入ってきなさい。」
「はい。」
…
レン君の母親にすすめられお風呂に入ります。お風呂場で気になったのは女性用のアメニティです。最初はレン君の母親が使っているアメニティと思ったのですが、元の世界でわたしが使っていたものと同じなのです!なんだかイケおじの力が働いていそうです。
「ふー、さっぱりしました!そろそろ出ましょう。」
頭の中でぐるぐる回る疑問といらだちを温かいお湯で溶かして、スッキリしたので風呂場を出るためにドアを開けます。
「あっちょうどよかった、はい替えの服とタオル。着替えたらゲームしよう。」
「えっ、………あぁっ⁉」
この主人公やろう、わたしの裸を見て表情を変えないどころか躊躇なく服を手渡ししてきました。ありえません!もしですよ⁉もし彼にとってわたしが妹のようなものだったとしてです、女の子の裸を見た態度でしょうか。
「ハワー‼もう一回お湯に浸かって気持ちを落ち着けなくては。」
お湯に潜ります。発熱した顔の温度でお湯が沸騰しそうです。もう少しだけ浸かっています……。
…
「おばさん、いいお湯でした…。」
「長湯だったわねぇ、夕飯できてるからレンを呼んできてちょうだい。」
「はい。」
どこがレン君の部屋かわからないので適当なドアを開けます。違いました。向かいのドアを開けます。いました。のんきにゲームをしています。
「レン君、夕飯です。」
「ちょっと待って今いいところだから…。」
「ほら、行きますよ!」
レン君の腕をつかみ無理やり連れていきます。レン君は惜しそうにしながらも、わたしにつかまれることは嫌じゃないのか抵抗をしませんでした。
リビングに着くといい匂いが漂ってきます。夕飯はお米と味噌汁、ヒレカツとキャベツの千切りです。
「明日は入学式だからねぇ、ヒレカツでゲン担ぎよ。」
「母さん…。」
2人の会話を横目に椅子に座ります。ヒレカツ…そういえば、この世界に来ていなかったら今日の夕飯はヒレカツでした。友だちのみっちゃんと受験の合格を願うためにヒレカツを食べようと約束してました…。
「…いただきます。」
レン君とおばさんが何か話し合っていますが耳に入ってきません。わたしはしょっぱいご飯をただ黙々と食べ続けました。
…
「ごちそうさまでした。」
「おそまつさまでした…。」
なぜかおばさんが涙を流しています。
「おばさん、どうしたのですか。」
「大丈夫よ、いおりちゃん。私たちがついているわ。もう明日の準備をしたほうがいいわね。レン、いおりちゃんを送ってあげなさい。」
「わかった。いおりちゃん、立てる?」
「さすがに立てます!」
そういいながらもレン君の手を借りながらわたしの一室の前まで連れてきてもらいました。
「これ、いおりちゃんのカバン。明日は早い時間に呼びに行くから今夜はすぐに寝るんだよ。おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
レン君が帰ったあとしばらくドアの前に突っ立っていました。おばさんの涙、力が入らなかった私の体、その理由をなんとなく考えて気持ちの整理をつけます。
「大丈夫、ドアの先はこの世界のわたしのいた場所だけど、わたしじゃない。だからお父さんもお母さんもいないのは普通のことだから、大丈夫。」
…
ドアを開けます。
自分の家ではない雰囲気
玄関にはかわいい女性ものの靴がいっそく
靴を脱いで廊下、手前の左右にドアが1つずつ
右側のドアを開ける。スーツや大人っぽい洋服がクローゼットを満たしています。
左側のドアを開ける。女の子の部屋。ファンシーな家具やかわいいぬいぐるみが置かれ、甘い匂いもします。
「ここがわたしの部屋…。まるで小学生の頃のわたしが夢見た部屋みたい。親が違えばわたしもこんな部屋で暮らしていたのでしょうか…。でもやっぱり違う。なんて言えばいいのか具体的には分からないけど、ここは他人の空間って感じがして気持ち悪い。」
もう一度部屋をよく見ます。机には明日持っていくものが整えて置かれていました。わたしはそれらをカバンの中に押し込みます。
「この部屋ですることは…ないですね。歯を磨いてさっさと寝てしまいましょう。」
部屋を出て洗面所に来ました。歯ブラシが1本だけ置かれています。備品置き場に歯ブラシの予備があったのでそちらを使います。歯を磨いている途中、ふと風呂場を見たらわたしのアメニティがありました。
…
歯を磨き不快感をお水で流し出したので寝ます。
「あの部屋で寝るのは嫌ですしご両親の寝室を借りましょうか。」
ぼぅとした頭でリビングに入ります。
「けほっ…ちょっとほこりっぽいです。」
リビングとふすまでつながっている和室がご両親の寝室でしょうか。端に畳まれた布団を見つけました。適当に広げて寝ましょう。
「おやすみなさい。」
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