第1話♡ドキッ‼少し早めに高校入学⁉
こんにちは!わたし藍野いおりです!
実は今大ピンチなのです。というのも、さっきまでリビングのこたつで友だちのみっちゃんとみかんを食べていたのですけど、気が付いたら知らない服を着て知らない学校の前に立っていたのです!!
「ハワワー、いったいどういうことです?あれっ!なんだか声が可愛くなってます!」
それにさっきまでこたつがいるほど寒かったのに、今は少し暖かいです。わたし困惑、頭真っ白!とりあえず誰かにこの場所を聞かないと。
わたしはあたりを見渡しました。目の前の学校、名前は…『ときめき学園』⁉なんだか頭悪そうです…。
「なんだと、学園の名前にケチをつけるのか最近の若者は」
「いやいやさすがにこの名前はどうかと思いますよ…って誰ですか!どこからかイケボおじさまの声がします。」
「名前などどうでもいいのだよ、それよりも私は上だ。」
上を見ました、巨大なイケおじの顔が雲の上から見下ろしています。
「君の名前は…藍野いおり君だな、よしいおり君今日からはこの世界に住んでもらう。何か質問はあるかな?」
「あのー、帰りたいのですが」
「なぜだ?最近の娘は異世界で男にちやほやされたり、ゲームの世界で有名になりたいのであろう?」
「いやいや、わたしは帰りたいのです、帰って受験結果が知りたい、みっちゃんと高校生活を楽しみたいのです!」
「ふむ…まず、受験結果が知りたいの方だが、どうやら受かったそうだよ。」
「やった、惜しくば受験結果の封筒を開く儀式をしたかったけど」
「次に、みっちゃんと高校生活を楽しみたいの方だが、私のお願いを叶えてくれるならば実現させよう。」
「わたしは元の世界にか・え・り・た・いのです!帰らせろー」
「わかったわかった、帰らせてやる」
「本当⁉」
「ああ、だが私の願いを叶えたらな」
「どんなの?」
「それは、
『この世界の主人公、女角レンと結ばれること』
だ」
「メカクレン?ロボなの?目隠れなの?」
「目隠れだ。君が死ぬまでに彼と結ばれることができたなら、元の世界にカエしてやろう。」
「もしかしてですけど、その目隠れ君はハーレム系主人公ですか?それって、女の子がどんなにアプローチしても『え?なに?よく聞こえなかった』で有名な鈍感系主人公ってやつですかーっ⁉」
「よくわかっているではないかしかも、君は彼の幼なじみである。」
「ハワーッ‼それってそれって⁉現実では絶対にないようなアプローチをしても『いや、あいつは幼なじみで、なんていうか妹?みたいな感じ?』とか周りに言いふらして、関係を深めることも切ることもできないよう強要される幼なじみですかっ⁉」
「ずいぶんと詳しいな」
「みっちゃんが言ってました‼」
――――
わたしはしばらくおじさまの話を聞きました。おじさま曰く、『明日から、君はときめき学園の1年生だ』『君の家や町の情報はポケットのスマートフォンのマップアプリにあるから、今日はこの町を散策しながら帰りなさい』『君と女角レンとの今までの関係値だが、同じマンションの隣同士で家族間の仲は良かったが、"藍野いおり"の両親が原因不明の事故で亡くなったため、以前より深くなっている』そうです。
この世界の両親といても居心地が悪いだけなのでありがたいのですが、海外旅行とかでよかったのではないのでしょうか。
一通りの説明を終えたおじさまは楽しめといって消えました。学園前にぽつんと一人、さてどうしましょう?とりあえず、クラブ活動の声が聞こえるので学園に潜入しましょう。
「ただ今の時間は12時前、食堂はあるのでしょうか」
学生服を着ているおかげか誰もわたしを変な目で見ません。明日の準備でしょうか、先輩たちが椅子や机を動かしたり紙を貼ったりしています。来客用のスリッパを履いて食堂を探します。カレーの匂い…わたしのセンサが匂いの元へ連れていきます。2階奥のドアの先…
「カレーください‼」
そこは、家庭科室でした。ドアには『料理部使用中』の看板がありました…。
「君は誰かな?」
白い頭巾と白いエプロンを身に付けた女性が現れました‼
「はじめましてっ、カレーの匂いに釣られて来ました『藍野しおり』といいます。カレーくださいっ」
170センチメートルはあるスラリとした女性は笑顔でゆっくりと近づいてきて、わたしの肩に両手を置いて
「しおりちゃんだね、何年生?」
「にっ二年生…ですっ!」
嘘をついた
「そっか、ふーん、いいよ、カレー食べさせてあげる。」
いつの間にか女の人はわたしの後ろにいて、カバン置き場や手洗い場を親切に案内してくれました。そして、いよいよカレーです。部長っぽい人が食事のあいさつを終えました。
「いただきますっ!はむっ…お、おいしい、これが高校の味!」
「おいしいかぁよかった、料理部は毎週土曜日に実習をしているからよかったらまた来てね」
「はいっ!絶対来ます!」
なんだか料理部の人たちが嬉しそうな目でわたしを見ている気がしますが、このカレーの誘惑には勝てません。隣でさっきの女の人が優しい目をしていますが気にしません!
「…ごちそうさまでしたっ」
「おそまつさまでした。食器を片付けるね。」
「お手伝いします、お皿洗いくらいはさせてください」
「今日はお客さんだからすわっててよ。」
「…わかりました」
しゅん…わたしは役立たずなのです。料理部員たちは洗練された連携で食器や料理道具、机を綺麗にしていきます。
「また来てよ、ゆっくりと教えてあげるから。」
「はいっ、センパイ!今日はありがとうございました!」
「うんうん、またね」
わたしはカバンを手に取り家庭科室を出ます。
藍野いおりが去った後の家庭科室にて
「さっきの子かわいかったねー」
「ちずるっさっきの子が気になる?」
「まあね、ボクのことを先輩呼びするってことは新入生、でも入学式は明日だから勝手に入ってきたのかな?面白くて可愛い子。餌付けはしたからあとは待つだけだよ。」
「ちずるってロリコン?」
「あんなに小さな子、膝にのせておきたくない?」
「それはわかる。」
ちずると呼ばれる高身長でショートヘア、スラリとした人間は低い声を出せは王子様である。ちずるの友だちはちずるのスカートを見ながらそう思った。
戻って藍野いおり
お昼ご飯を食べたらなんだか眠くなってきました。屋上か中庭か迷います。時計を見れば時間は午後1時、そうだここはときめき学園です、『ラブコメで屋上は定番!』とみっちゃんも言ってた!
「待ってろおくじょー!」
『関係者以外立ち入り禁止』
無理でした。…どうしましょう、屋上につながる階段を探すのに時間と体力を使ってしまったので睡魔に耐えれません。よもや…ここ…まで…か。
「おーい、こんなところで寝てはいけませんわ、…起きませんね。仕方ありません、生徒会まで運びましょうか。」
…
「うーん…よく寝ました!」
床で寝たので快眠ではないと覚悟していたのですが、なぜか柔らかいベッドと枕が用意されたみたいです。
「よく眠れましたか。」
倒れた体から正面をよく見ると大きな影の奥に美しい女性の顔がありました。となると、わたし枕と思っていたのは太ももですか…。ふむ
「ハワッ⁉誰ですかッ?」
「それはこちらの言葉ですわ。あんなところで倒れていたら誰もが困惑します。」
「すみません、藍野いおりといいます。睡魔に勝てませんでした。」
「次からは気を付けてくださいまし。」
「はぁい。」
わたしは身を起こし女性を見ます。ロングの金髪、豊満な胸、女神さまと呼びましょう。
「ところであなた見たことありませんが、もしかして入学式の日を間違えまして?」
「そっそうなのですっ!ちょうどいいので学園内を探索していました。」
「はあ…ずいぶんとやんちゃですわね、いけませんわよ、まだ入学していないのですから不法侵入と同じですわ!」
「ごめんなさい」
しゅん…
「(きゅん!)…仕方ありませんわ、屋上は行かれまして?」
「まだですっ!」
「では屋上を案内しますわ。」
…
「藍野いおりさん、ここから先はあまり他言しないように。」
「わかりました!」
女神さまはそういうとポケットから鍵を取り出し、屋上のドアを開けました。
「どうぞ、ごらんなさい。」
「ハ、ハワー!綺麗なお花とおしゃれなテーブルとイスがありますっ。」
「ここは生徒会と植物部の秘密の庭ですわ。天気の良い日にはお茶会をしてますの。」
「おぁーすごいですねっ!」
「生徒会に入ったらお昼寝場所とお菓子が楽しめますわ、ですので生徒会に入りなさい。」
「えっ…すみません、実はこの高校に入ってからしなければならないことがあるので生徒会には入れません。」
「そう、残念ですわ…。でも、お昼はいますからいつでもお昼寝しにきてくださいまし。」
「はいっ!お言葉に甘えさせてもらいます!」
「では戻りましょうか。」
そういうと女神さまは階段へのドアに歩き始めました。わたしはもう1度だけ秘密の庭を見て目に焼き付けました。
…
「では気を付けてお帰りくださいまし。」
「はいっ、さようなら」
藍野いおりは生徒会室を出ていった。女神さま、名前はアリスというが、アリスは1人ソファーに座る。元生徒会の役員たちは仕事を終え午前中に帰ってしまった。アリスも任期を終えているので生徒会長ではない。目をつむり思い出を振り返る。去年も一昨年もトラブルが多かった。今年こそは何事もなければいいのだが…。しかし、藍野いおりという新入生は中学1年生といわれても違和感ないほど無邪気だ。余計なことを覚えさせないように生徒会で囲うべきだろう。アリスは歪んだ笑みを浮かべながら策を考えていた。
…
今の時間は午後3時、スマートフォンでマップを見ながら帰宅中です。わたしが明日から通うときめき学園は丘の上にあって、帰りは下りで楽ですが、登校は足を鍛えられそうです。わたしの自宅は徒歩だけだと1時間かかるっぽいです。バス通学確定です。でも今日は町を知るために歩きます。しばらく歩くと商店街に着きました。コロッケの匂い、誘惑です!ケーキ屋さんもあります!
「シュークリームください!」
「シュークリーム1つですね、少々お待ちください。」
当店自慢のシュークリームには勝てませんでした…。待っている間に店内を見ます。真っ白の壁とあたたかい光、決して大きくはないガラスのショーケースの中にあるいろんな種類のケーキ、雰囲気は最高です!それに奥からただよう焼きたてシュークリームの香りはわたしのお腹をキュルキュル鳴らします。
「お待たせしました。」
小さな箱に包まれたシュークリームをもらい、お金を渡します。帰ったら食べましょう。
…
商店街を抜けて自宅へと歩きます。ようやくついたころには空がオレンジ色に染まっていました。
「ここがわたしが住むマンション、それと主人公が住んでいるマンション」
「ッいおりちゃん!おかえり、どこ行ってたの⁉」
知らないおばさんが血相変えて近づいてきました。たぶん、主人公の母親ですね!
「ただいまですっ、見ての通り学園に行ってました!」
「そうなのぉ?偉いわねぇ、夕飯はできてるからいつもの時間にいらっしゃい」
「ありがとうございます!」
まだ、自分の一室がどこかも分かってませんが、おばさんの好意はありがたく頂戴しましょう。おばさんも帰る途中だったので一緒にマンションに入ってエレベータに乗ります。その間にカバンの中から鍵を探します。
「あれ…ない?」
いままで確認はしてませんでしたが、さすがにイケおじが入れ忘れることはないと思ってました。スペアの隠し場所なんて知らないので困りました。
「レン君のお母さま、実は鍵を学園に忘れたようです。」
「そうなの?じゃあ、大家さんに電話しておくからうちにあがってちょうだい」
「はい…。」
レン君家族の一室に着きました。ついに主人公の女角レンと対面します。わたしが元の世界に帰るための唯一の希望…せめてイケメンであってください!
――――
ラブコメを書きたくなったので書きました。この回を含めて12回で完結予定です。12回分のタイトルは作ったので、あとはやる気の問題です。不定期投稿です。いいねやブックマークを付けてくれるとうれしいです。