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エピソード4 勇者対勇者、俺は本当の幸せを手に入れる

 曇天となった次の日、俺はエルミリーを残して、ハルトのアジトに向かった。

 やはり、彼女に危険な真似をさせるわけにはいかない。


「遅かったじゃないか?ケン」


 森の中の廃墟になった洋館の前で、ハルトと、その部下のゴロツキ達が待ち換えていた。

 彼の足元に、領主の死体が転がっている。


「貴様、雇い主を殺したのか?」


 俺は、言った。


「は?こいつは、街でヤクをバラまく隠れ蓑に丁度いいから、金を掴ませて利用していただけだ。それなのに商品を、くだらん事に使いやがって」


 ハルトは、領主の頭を足で踏みつけて言った。


「だが、まあいい。これで、やっと、ムカつくお前を殺せるんだからな。最後に教えてやるよ。俺は、戦争の最中から魔族と繋がって、ヤクを横流ししていたんだ。それを、お前の女に見つかった。お前の恋人のユイを殺したのは俺なんだぜ」


 ハルトが、そう言った瞬間、俺は拳銃を呼び出して、眉間に一発ぶち込んだ。


「ははは、皮肉なもんだねえ。俺達に与えられた力で、俺達を殺す事は出来ないんだからなあ」


 ハルトは、のけぞった顔を起こす。

 眉間には風穴が開いたが、平気な顔をしている。

 みるみる傷口が塞がってしまう。


 ハルトは、アサルトライフルを呼び出し、俺に向けて乱射する。


「ぐはっ!」


 俺は、全身から血を流しながら膝をつく。


「最後に一回だけチャンスをやる。俺の下に着け。そうすれば命は助けてやる。俺達を馬鹿にした、この世界の人間を助けても意味は無いだろう?それよりも、二人で甘い汁を吸おうぜ」


 ハルトは、俺を仲間に誘った。


「この下衆がぁああ!!」


 俺は、ハルトと、その仲間に銃弾を撃ち込んだ。


「ははは!無駄無駄ぁ!」


 ハルトの仲間のゴロツキは全員倒れたが、ハルトは洋館に走って逃げ込んだ。

 俺は、その後を追う。


「さあ、決着をつけようぜケン!」


 思ったより広い廃墟の洋館の中に、ハルトの声が響く。

 俺が入ると、中は吹き抜けになっていた。

 しかし、ハルトの声は反響し、どこにいるのか判断しにくい。


 俺は、暗がりの中、それっぽい方向に歩いていく。


「ドカァ!」


 俺は、床を踏み抜いてしまった。

 中には、尖った木が仕掛けられている。


「ブービートラップ…」


 俺は、なんとか足を引き抜く。


「ははは!昔は、よくこれで魔族共を足止めして撃ち殺したもんだよな!」


 暗い洋館の中。

 どこからか、ハルトの嘲笑が響く。


「ダダダ!」


 俺の体に、ハルトのアサルトライフルの弾丸が撃ち込まれる。


「死ねえええ!!」


 俺の後ろにあったドアが開き、ハルトが俺の首を狙ってアサルトライフルに銃剣として取り付けられたナイフを突き立てる。


「ぐぬぬぬ!!」


 俺は、素早く前かがみになってナイフを引き抜くと、振り向いて持ってきていたナイフを引き抜いて構えをとる。

 

「そりゃあ、刃物は用意しているわな」


 ハルトが言った。

 俺達の首筋に、冷や汗が流れる。


「きぃいいえええええ!」


 ハルトは、怪鳥音を発すると、銃剣を振りかぶって飛び掛かってきた。

 俺は、拳銃に取り付けられていたフラッシュライトを点灯して、ハルトの目に向ける。


「うっ!」


 彼は、一瞬怯んだ。


「この、不埒者め!」


 その時、暗がりから、エルミリーの叫び声が響いた。

 彼女がハルトの後ろに飛び出し、槍で彼を背中から刺し貫いた。


 その隙に、俺はナイフをハルトの首目掛けて振り切った。

 偶然にも、それは彼の首の関節の間を切り裂き、首と胴体を切り離した。


「運のいい…や…つめ…」


 そう言いながら、ハルトは絶命しかける。


「…」


 俺は、無言でハルトの首と胴体を押し付けた。

 やがて、くっついて再生を始める。


「何故、助けた…」


 ハルトが、にごった声で言う。


「お前は死刑になるだろう。だが、最後まで生きろ。俺達は、同じ世界からやってきた仲間だからな」


 俺は、彼の体をロープで拘束しながら言った。


「やはり、私が来て正解だっただろう?一人で行くんじゃない!」


 エルミリーが言った。


「ああ、助かったよ。最高のタイミングだったぜ」


 俺は素直に言うと、親指を立てた。




 俺達は、教会にハルトの裁判を依頼した。

 やがてハルトは、首都に移送されていった。

 重罪を犯した彼は死刑になるだろう。


「ふう…」


 俺は、間借りしていたエルミリーの家の一部屋を整理し、旅支度を整えていた。

 もう一度、生き直すのも悪くない。

 そんな風に考え始めていた。


 その時、部屋のドアが勢いよく開いた。


「何をしている!母上の、美味いシチューが待っているぞ!」


 エルミリーは、そう言った。

 ドアの向こうには、エルミリー、彼女の両親と妹が立っていた。


「ケン君、この街の為に、もう少しいてくれないか?」


 彼女の父親が言った。


「ケン!私は、お前のバディだ。一人では行かせないぞ」


 エルミリーが言う。


「この娘ったら、あなたが出ていくなら自分も一緒に行くと言って聞かなくて」


 母親が言った。


「お姉ちゃんを一人にしたら許さないんだからね!」


 妹が、そう言う。


「仕方ないですね…」


 俺は、旅支度の入ったザックを床に置いた。

 エルミリーと、その妹に手を引かれて、俺は暖かい食事の待つテーブルに向かった。


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