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エピソード3 俺は元々流れ者。世話になった街の人に恩を返して消えるつもりだ

次回は、20時に投稿します。

 街の人達の笑顔、暖かく迎えてくれたエルミリーの家族。

 この世界に来てから、毎日が戦いの中だった俺は、ひさしぶりに平和を味わっていた。

 ユイも、ここにいたら…死んだ彼女の事を思い出す。


 そんなある日、事件は起こった。

 街で若い女の変死体が発見されたのだ。


 エルミリーと俺は急行する。

 彼女は、暴れて自分の部屋をグチャグチャにかき回し、事切れていた。

 俺は、彼女の体の臭いをかぐ。

 覚えのある甘い香り…。


「インゲルタだ。間違いない」


 俺は、言った。


「それは、何なの?」


 エルミリーが、聞いてきた。


「こいつは戦争中に魔族が、人間の弱体化を狙ってばら撒いた麻薬だ。人間の作った麻薬とは違って魔法で生成されている。飲めば1週間は幻覚と運動量の増加が続く。こんな風に暴れ続ける。得られる快楽は凄まじいが、もはや毒だよ。これは過剰摂取での死亡だ」


 俺は、これが魔族が作った麻薬だと答えた。


「そんなものを誰が?」


 エルミリーの表情が暗くなる。


「彼女は、酒場で働いていた。聞き込みしてみましょう」


 彼女は、そう提案してきた。




 俺達は、彼女の働いていた酒場で客やマスターに聞き込みをした。

 昨日までは、普通に仕事をしていたらしい。


「ミランダなら、少し前まで領主の愛人だったらしいぜ。その事で、領主をゆすっていたらしい。昨日も、金をせびりに行くと言ってたな」


 俺達は、死んだミランダという女と仲の良かった客から、領主との関係を聞いた。


「とにかく、領主様に聞いてみましょう」


 エルミリーは、言った。




 次の日、俺達は領主の館に向かった。


「領主様、酒場の店員のミランダの事について聞かせていただけませんか。あなたの愛人だったそうですか」

 

 領主は、衛兵二人を横に付け、応接室で俺達の前に現れた。

 エルミリーが、領主にミランダの事を聞いた。


「知らん。酒場の女の事など覚えておらん!」


 領主は、苛立ちながら答える。


 俺は、これは間違いないなと思った。


「領主様、そんな言い訳が通るわけありませんわ。あなたと彼女の仲は知られています。ゆすられていたんでしょう?口封じで、ヤクを過剰摂取させて殺したか?」


 俺は、領主に詰め寄った。


「無礼者め!」


 横にいた衛兵二人が、剣を抜いて俺に襲い掛かってくる。

 俺は、一人を窓から投げ飛ばした。

 ここは、二階なので、大きなダメージを受けて、すぐには戻れないだろう。

 もう一人に素早く当身を入れて、後ろ手に締め上げる。


「領主様。俺は、この真面目な自警団員とは違って流れ者だ。あんたが、どうなろうと知った事じゃない。正直に喋った方がいいぜ!ミランダを殺したんだろう?ヤクは、どこから手に入れた!?」


 俺は、そのまま領主に凄んだ。


「ひいいい、確かに、あの無礼者は殺した。しかし、領主をゆすった女を無礼討ちしたところで、貴族である、わしを罪に問う事は出来んぞ」


 領主は、そう言った。


「そうかもな。しかしヤクはどこから手に入れた?魔族と繋がっているなら、領主とはいえ、ただではすまないぞ!」


 俺は、更に領主に言った。


「ワシではない!あれは衛兵のハルトに用意させたのだ。あいつの後ろには魔族の組織がいる。この事を知られれば、わしもただでは済まん。許してくれ!」


 締め上げていた衛兵の手を放す。


「分かった、その代わり、俺達の事は不問にしろ。そして、ハルトの居場所を教えろ。このヤクが、この街に出回る事だけは許せん。奴は俺が捕まえる」


 俺は、そう言った。


「わ、分かった。不問にする。しかし、あいつは勇者だ。誰も勝てない!」


 領主は、了承した。


「心配するな、俺も勇者だ」


 俺は、そう言った。

 ハルトが、街外れの森に麻薬売買のアジトを作っている事を聞くと、俺達は領主の館を後にした。




「どうして、あんな無茶を!お前は、自分の命がいらないのか」


 館を出ると、エルミリーが俺を責めた。


「俺は、お前や、お前の家族、街の人達に暖かく迎えてもらった。みんなに恩を返せるなら、思い残す事は無い。勇者は、俺一人で始末する。」


 俺は、彼女を抱きしめて言った。


「バカヤロー!!誰が、お前を一人で行かせるものか!たぶん、相手は勇者一人ではないぞ!私は、着いていく。誰かが、お前を大切に思っているかもしれないだろう!その事を考えた事があるのか!」


 エルミリーは、俺を突き飛ばして言った。

 彼女の両目から涙がこぼれる。


「わかった、すまない…」


 俺は、もう一度、彼女を抱きしめた。

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