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美根我の気掛かりな時間  作者: しろ組
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六、可能性

六、可能性


 美根我達は、第七黄橋小学校の宿直室へ、戻った。全員で、銭市場へ(とつ)るよりも、手分けして、疑わしい場所を見張った方が良いと判断したからだ。そして、逗子が、拉致(らち)されて居ると思われる場所へ、誰が行くのかを決める話し合いを始めた。

「美根我さん、俺の考えだと、銭市場の倉庫前が、取り引き場所としては、有力だと思うんだけどな」と、廉が、意見を述べた。

「しかし、この時間だと、営業中だから、倉庫までは行けないだろうね」と、黄休が、指摘した。

「そうですねぇ。下手すると、不法侵入で、出禁にされるかも知れませんね〜」と、美根我は、腕組みをした。逗子が、居なかった時の事を考えると、気乗りしないからだ。

「取り引き場所を、別の所に構えているかも知れないわよ」と、珠姫が、口を挟んだ。

「確かに、銭市場での取り引きは、犯人達には都合が悪いかも知れないな」と、廉が、同調した。

「そう言えば、メリケン兵が、どうとか言ってなかったっけ?」と、黄休が、あっけらかんと言った。

「ええ。逗子ちゃんを誘拐した奴らが、話して居たわよ」と、珠姫が、補足した。

「メリケン兵が、出入りしても、不自然じゃない場所の可能性が、大きいですね」と、黄休が、口元を綻ばせた。

「だとすると、団松山の登り口に在る駐車場が、怪しいかもな」と、廉が、口にした。

「確かに、あの駐車場が、この街の中では、一番広いですね」と、美根我も、納得した。メリケン兵の為に造られた駐車場と言っても過言でないくらいメリケン兵の軍用車両が、頻繁(ひんぱん)に停まって居るからだ。

「珠姫、他に、奴らの会話で、覚えて居る事は無いか?」と、廉が、尋ねた。

「確か、模罹田とか、灰吉とか、あと、もう一人は、判らないけど…」と、珠姫が、顔を顰めた。

 その瞬間、「あ、あいつらですかっ!」と、美根我は、激昂した。ゴー・ホーム事件の時だけでなく、逗子の誘拐にも関与している事を知ったからだ。

「び、美根我さん! 落ち着いて下さい!」と、廉が、慌てて宥めた。

 美根我は、我に返った。その直後、珠姫と黄休の怯える姿を視認した。次の瞬間、「す、すまない…」と、陳謝した。そして、ゴー・ホーム事件の事を語り始めた。

 しばらくして、「完全な逆恨みだよ。美根我さんが、“黄紙”を貰うのは、おかしいよ!」と、黄休が、理解を示した。

「そうよ。今度は、逗子ちゃんまでも奪おうなんて、許せない!」と、珠姫も、憤慨した。

「美根我さんが、取り乱すのも無理無いぜ。でも、これで、絞り込みが出来たな」と、廉が、含み笑いを浮かべた。

「そうですね」と、黄休も、相槌を打った。

「私、模罹田って人の顔を知って居るわ」と、珠姫が、口にした。

「あの色黒で、自称“二枚目”とか抜かして、銭市場を仕切って居る奴だったな」と、廉が、不快感を露わにした。

「僕は、配給の列に並んで居たら、規則違反だから、出禁だって言われたよ!」と、黄休も、憎々しげに言った。

「は?」と、美根我は、目を白黒させた。ここまで、性根が腐っているとは、思わなかったからだ。

「美根我さん、人を集めて、銭市場へ凸っちゃうか?」と、廉が、やる気満々で、問うた。

 美根我は、頭を振り、「叩くのでしたら、取り引き現場でやりましょう」と、提言した。現場を押さえるしかないからだ。

「銭市場は、私と黄休君で、見張りをするわ」と、珠姫が、申し出た。

「そうだね。僕も、それで良いよ」と、黄休も、賛同した。

「じゃあ、俺等は、ここで、待機ですね」と、廉が、士気を高めた。

「そうだね。何が起こっても、動けるように、時を待ちましょう」と、美根我も、了承した。ここは、どっしりと待つべきだからだ。

「動きが有れば、僕が、知らせに戻るよ!」と、黄休が、得意顔で、告げた。

「黄休君の足では、時間が掛かり過ぎるわ」と、珠姫が、冷ややかに言った。

「聞き捨てならねぇな!」と、黄休が、怒鳴った。そして、「じゃあ、他に、手が有るのかよ!」と、食って掛かった。

「そうね。これよ」と、珠姫が、モンペの右ポケットから手鏡を取り出した。

「確かに、黄休君よりも速い伝達方法ですね」と、美根我は、頷いた。伝言(メッセージ)を送るのに、最適な手段だからだ。

「確かに、黄休が、銭市場から走るよりも速いし、俺達も、動き易いからな」と、廉も、納得した。

「ちぇ! まあ、僕も、楽が出来るから、良いけどね」と、黄休が、渋々聞き入れた。

 美根我達は、合図の話し合いを始めるのだった。

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