5月25日 監督
白峰工業高校戦から一夜明けた野球部は、朝からバッティング練習に励んでいた。俺は、相変わらず掃除をしながら、八幡や佐伯たちの打撃を見ていた。
今日は、陸上部たちが走る近くにいた。陸上部は、自主練習の様子。若林や二宮たちがストレッチをしていた。
俺は、掃除をし終えて、雑草を取り始めた。雑草も放っていると、こんなに生えてくるものなのかと感心していた。
永谷「おいー」
俺 「うぃー」
重そうな足取りで俺の元へやってきた。
永谷「今日、宿題出した?」
俺 「あぁ。出さんのバレたら、めんどいやろ?」
俺と永谷は、同じクラスだ。
永谷「そうやねん。でも、今日出してないんよ」
俺 「バレたらヤバいぞ」
永谷「やな」
ただでさえ、今は、練習禁止になってるのに、これ以上、問題になる。
俺 「今日の練習って午後から何か知ってる?」
永谷「知らんな。でも、ノックするやろなー」
俺も、いつまでもレギュラーという立場ではいられない。今度は、レギュラーをとりにいかないといけない。そのためには、バッティングの感覚が必要だ。早く、練習がしたかった俺に対して、永谷は、やる気が全くなかった。
俺 「やっぱそうか」
永谷「たぶんな。いつまで、俺ら掃除するの?」
永谷は、いいかげん、掃除することに飽きている様子だった。草抜きをしながら、イライラしていた。
俺 「監督がいいって言うまでやろ」
永谷「そんなんしてられるかって話よな」
俺 「まぁな」
草抜きをやめて、バッティング練習を見る永谷だった。
永谷「今日何すんの?」
俺 「どういう意味?」
永谷「放課後」
俺たちは、放課後、野球部でハンバーガー屋やカフェに寄って、遊んでいることが多かった。俺たちにとって、あの時間は、とても貴重だった。
俺 「放課後は、塾行くな」
永谷「じゃあ、大富豪できへんやん」
俺 「そうやな、また、今度やな」
そんなことをしていると、後ろから監督がやって来た。
監督「お前ら、ちゃんとしてるんか?」
俺たちは、勢いよく返事をした。
監督「お前らがちゃんとやれるんやったら、午後から練習入れ」
永谷「ありがとうございます」
俺も、永谷に続きお辞儀をした。
監督「授業中もやぞ」
そう言って、監督は、バッティング練習の方へ戻っていった。