8月3日 第1クール(2日目)
講義室は、まだ少しだけ眠るように空気が温く、窓際の俺の机にはノートと鉛筆が整然と並んでいた。
健太郎「そんなに大変?」
俺 「そこまでかな」
2日間の第1クールをふりかえっていた。
健太郎「お前は、余裕だよな」
俺 「そんなことねぇよ。この後も塾だし」
健太郎「今日も行くのか?」
健太郎の質問に頷いた。勉強会の部屋は学校とは違いどこか落ち着かない居心地だった。
俺 「4組のメンバーは来てるのか?」
健太郎「そうだな。結構いるな」
俺 「サッカー部は?」
健太郎「サッカー部は、いないな」
アイツらは、ちょうど大会の真っ最中じゃないか?
俺 「健太郎は、第一志望決めたのか?」
健太郎「全然決めてないな。行くとこねぇな」
俺 「ハハハハハ」
健太郎のふざけた顔が妙に面白かった。
健太郎「侑大は、決めたのか?」
俺 「とりあえず、国立のいくつかは受けるよ」
健太郎「さすがだな」
俺 「受けるだけはな」
俺たちの前にあるホワイトボードには、今日の講義内容がびっしりと書き出されていた。授業中に書いて消したであろう文字が薄く残っていた。
健太郎「今度、旅行行こうぜ」
俺 「もちろんだ。いつ行くんだ?」
健太郎「一応、18とか考えてる」
俺 「じゃあ、そこは空けとくよ」
旅行行くことは、以前から健太郎と決めていた。"チーム健太郎"で行く。おそらく、これが最初で最後になるだろうな。チーム健太郎には、俺、永谷、竹田、田畑の5人だ。
俺 「みんなには、言ったのか?」
健太郎「ああ。一応連絡は入れてるよ」
俺 「楽しみだな」
健太郎「そうだな。まだ、みんなにも会ってないしな」
ここから、勉強のムードが高まっていくし遊びどころではなくなるだろう。そう思うと今しか行く時がない。
俺 「竹田とか何してるんだろうな?」
健太郎「アイツは、謎が多いからな」
俺 「いい奴なんだけどな」
健太郎「そうだなぁ」
健太郎は、ああ見えて意外と交友関係が広い。なんて言うんだろうな、みんな健太郎に絡みたくなるのだ。
俺 「そう言えば、健太郎は引退試合行くのか?」
健太郎「いや、行かねぇな」
俺 「そうなのか」
健太郎「もう、野球はいいかな」
引退して約2週間目に入った俺たちのもとに、引退試合の連絡が入ったのはちょうど昨日のことだった。




