7月29日 3回戦(淮南高校戦)
もし、この試合で負けたらどうなるのだろうか?俺は、そう考えることがとても怖かった。1.2回戦では考えなかったことも急によぎってしまう。聖徳高校の先発ピッチャーは、優聖。この暑さもあり、無失点で抑えられるとは考えにくい。向こうは、"聖淮戦"で先発しなかった湯浅。大きい体から鋭いボールが放たれていた。ベンチからは、大きな声が聞こえる。勝つか負けるか、それしかない。"侑大!!"。ベンチの方からだった。
今日も健太郎は、元気だな。これだけは、あの日と変わらなかった。きっと、健太郎が応援してくれるはず。こんなところで諦めきれない。"プレイボール"。審判の大きな声が響き渡った。灼熱の太陽の中、俺はヘルメットを深く被りこんだ。データでは、ストレート、カーブ、スライダー、チェンジアップの4つ。とりあえず、ストレート狙いに打席に立とうか。サインをうなずき、ゆっくりと足をあげた。あっ!!ボールは一直線にキャッチャーミットに吸い込まれていった。
湯浅クラスになると、ストレートだけ狙っていると変化球には、対応できなくなるだろうな。じゃあ、
2球目は、どうしようか?ストレートとチェンジアップにヤマをはることにした方がいいだろうか?
再び、湯浅は、サインに頷き足を上げた。湯浅のフォームとともに、俺もバットをひき、ボールがくるのを待った。遅い!!腕から、ボールが離れた瞬間、ストレートではないことがわかった。チェンジアップアップだ。ゆっくりとバットを振り出したが、ボールは落ちずに横へと曲がっていくのだった。ストライクツー!!。審判からも大きな声が聞こえた。これで、ツーストライクノーボール。完全に俺が不利なカウントとなってしまった。
ネクストバッターサークルからは、八幡が。ベンチからは健太郎たちの声が聞こえる。ここで打ちとられてたまるか。ここで、どのボールにヤマをはるか。やっぱりストレートか?この打席は、最悪捨てるしかない。俺は、ストレートにヤマをはり、タイミングをとることにした。一直線にきたボールは、まっすぐ、まっすぐ俺の方へと向かってくる。俺がバットを振り出したところに、ちょうどボールが向かってくる。バットを振り切った瞬間、ボールは、センターへと飛んでいくのだった。気がつけばスタンドから、大きな声が聞こえ俺はそれに応える様に右腕をベンチに向かって拳をつきつけていた。




