5月23日 遠山陵
今日も、昨日に続いて、放課後は教室を掃除していた。練習禁止になって2日目。今日は、廊下掃除を行っていた。同じく練習禁止になった永谷は、職員室に行っていたので、俺は一人で廊下のゴミを集めていた。すると、後ろから足音が聞こえてきた。
健太郎「あっ、お掃除屋さん、ご苦労様」
俺 「おい!」
健太郎は、いつもと変わらずイジってきた。
健太郎「掃除楽しい?」
俺 「楽しいわけないやろ!」
健太郎「ハッハッハ」
俺は、ホウキでゴミを集めながら答えた。
俺 「練習は?」
健太郎「今日は、先生に呼び出しくらってるからいけそうにないかな」
俺 「ちゃんといけよ」
健太郎は、どこか元気がなさそうに見えた。
健太郎「確かにな。まぁ、バッティング練習終わりぐらいに合流できそうかな」
俺 「それくらいにはいけそうやな」
健太郎「うん」
俺 「ていうか、なんで職員室行くの?」
健太郎は、俺が集めたゴミを見ていた。
健太郎「知り合いについて」
俺 「は?」
健太郎「俺の知り合いについて、聞かれるみたいな感じ」
俺 「誰?」
健太郎「ひみつ」
俺は、ロッカーから、ちりとりを取ってきた。
俺 「なんで?」
健太郎「口軽いやん」
俺 「軽ないよ」
健太郎「お前は、口軽い」
俺 「おかしい、おかしい」
健太郎「お前が、もう少し口が堅かったら教えててんけどなぁ」
俺 「なんや、それ」
俺は、廊下に集まったゴミをちりとりでとり、ゴミ箱の中に入れた。
健太郎「もしさぁ、友だちが学校やめるって言ったら、お前はとめる?」
俺 「どーだろ?相手によるかな」
健太郎「俺がやめるって言ったら?」
俺 「一応、理由は聞くかな」
健太郎「一応ってなんやねん」
健太郎は、何かに迷っている様子だった。
俺 「ハハハ。だれかやめんの?」
健太郎「いや、この前の遠山みたいにさ、やめるってなった時どうしたらよかったんかなって思って」
俺 「先に知ったんやっけ?」
聖徳高校野球部には、遠山陵という3年生の部員がいた。しかし、お父さんの仕事の関係で、5月から東京に引っ越してしまった。
健太郎「うん。引っ越す1日前に知った」
俺 「それ、オモしろいよな」
健太郎「だよな。あれから、あいつらなんか言ってたりした?」
俺 「うーん。八幡とか佐伯は引きずってると思うけど。引っ越すんやから、しゃーないよな」
健太郎「まぁな。あの時、みんなに言っとくべきやったんかなって今さら思えてきたわ」
俺 「遠山は、なんて言ってたん?」
この後も、健太郎との話は続いた。久しぶりに親友との話は大いに盛り上がっていた。