7月23日 練習試合(東宝高校戦)10
セカンドの健太郎は、何かを言っているが他の野球部たちがうるさくて聞こえなかった。放課後の部活動になるといつもこんな感じだ。だが、これからはそうじゃない。負けた瞬間、俺たちの高校野球終わる。そう思うと、いつものプレーはできなかった。センターフライを捕ると、すぐにセカンドの健太郎に投げ返した。ボールを捕った健太郎もホームに向かって腕を振る。健太郎のボールは、橋本のキャッチャーミットに吸い込まれていった。
ー7月14日ー
再び、セットポジションの東阪のストレートはとてつもなかった。健太郎がスクイズを決めた後、東阪は、ようやくエンジンをかけたみたいだった。ここまで、ストレートしか投げていないのに、まったく当たらない。優聖、健太郎に投げていたストレートよりも15kmくらい速くなっているんじゃないか?俺は、打席に立ちたくて仕方がなかった。チェンジとなってしまい、健太郎はセカンドに向かっていく。優聖は、この回から、ピッチャーみたいだ。5対5という展開で、マウンドに上がるのは大変だろうな。
いくらベストメンバーが出ていないとはいえ、平常心でいられるなだろうか?投球練習が終わった優聖は、キャッチャーを見つめていた。優聖の球種は、ストレート、カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップと多彩だった。東宝高校は、3番の山宮が打席に入った。左打席に入った山宮は、優聖の初球を鋭く振り抜いた。打球は、あっという間にライトの頭上に。
橋本「あんなことある?」
橘 「はははははは、笑えねぇな」
笑えない。本当に。
橘 「あんな奴、本当にいるんだな」
橋本「本当だよ」
山宮は、ゆっくりとダイヤモンドを一周していた。
俺 「あれは、たしかに卑怯だな」
橋本「まぁ、最後までアイツのピッチング見守ってやろうぜ」
俺 「そうだな」
打って当たり前のように、ホームベースを踏み次の打者と河岸とハイタッチをした。審判から投げられたボールを受け取った優聖は、下を向きながら何かを考えているようだった。後輩を心配するようにマウンドに向かったのは健太郎だ。二人は、何かを話しているようだが、ここからではわからない。
橋本「あんな簡単に打たれたら、困るよな」
橘 「野球ってこんなに簡単だっけ?」
簡単じゃない。アイツらが異常なだけだ。優聖の投げこんだストレートが通用する日はくるのだろうか?




