7月20日 練習試合(東宝高校戦)7
ユニフォームを着替えて今日も練習に向かう。橘や橋本たちが長野県予選のトーナメント表を貼っていることに気がついた。何をしているのだろうか?コイツらは。俺たちの初戦の相手である取手高校、その横にある海美高校の名前が見える。俺たちは、どこまで勝ち上がれるのだろうか?理想としては、白峰工業高校とやるまでは負けたくない。そう頭の中で考えていた。そのためには、まずは初戦。ここを勝つしかないのだった。
ー7月14日ー
7回裏の俺たちの攻撃は、あっさり3人で終わってしまう。もしかしたら、次の回くらいに、東宝高校のエースである東阪が投げるんじゃないかと期待していた。先ほどまで、キャッチーを座らせて投げており、俺はベンチからずっと眺めていた。遠くから見るだけでいいピッチャーであることがわかる。8回の表。マウンド上には、再び飯田がたっていた。 東阪裕翔。初めて、彼の名前を聞いたのは今から2年前。全国大会で1年生から投げていた。コーナーに投げわけるストレート、バッターのタイミングを外すチェンジアップ。大きくは、この二つの球種でバッターを翻弄していた。俺が見た中では、群馬北高校の中川に次ぐピッチャーだと思っていた。東阪は、打たせて取りにいく時と三振を取りにいく時などギアを変えながらピッチングができる。一方、群馬県北高校の中川は、ギアは変えてピッチングはできるものの打たせて取るピッチングはしなかった。正確に言えば、できないのだろうけど。
東宝高校のバッターが打ち上げた打球は、レフト正面だ。ベンチから大きな声が上がる。そして、次の打者をショートゴロに打ち取ると、東阪がブルペンから出てきた。まさか、、、、、。驚きを隠せず東阪を見つめる。やはり、ベンチでスタンバイをしているようだ。もしかした、次の回に投げるのだろうか?飯田が投げている先で立ち上がり、ベンチ前でキャッチボールをし始めた。いよいよ、出てくるんだな。横にいた橘が、キャッチボールをしているのは東阪ではないかと言い始めた。
最後のバッターは、サードゴロになり選手たちがベンチへと引き上げてくる。"ナイスピッチ!!"。キャプテンの川中や副キャプテンの佐伯が声を出し、俺たちは円陣を組みはじめた。俺は、円陣には、興味がなくマウンド上に誰が上がるのか、それだけが気になっていた。マウンド上に上がるのは、やはりあの男だった。




