5月22日 練習禁止
まさかの、今日から練習禁止。放課後、俺は、教室から野球部のグラウンドを見つめていた。グラウンドでは、ノックが行われていた。昨日までは、こんなことになるなんて考えたことすらなかった。昨日の5時間目、数学の授業が補習になった。クラスメイトの宝来に誘われて、トランプをしていると、横で授業をしていた野球部監督の野間がやってきた。完全に俺のミスだった。俺たちが騒いでいたのを横のクラスにバレてしまった様だった。同じ野球部の永谷は、居眠りをしていた。
俺と永谷は、2週間の練習禁止。そして、その期間は、学校の掃除をしなければならなかった。来週は、白峰工業高校、再来週は、城西大学附属高校との練習試合があった。6月中旬には、"聖淮戦"という試合が待っている。これは、聖徳高校と淮南高校が各部活の交流試合のことをさす。野球部は、ここ2年間勝利することができておらず、今年にかける意気込みは強い。
これから大事な試合が続く中で、今回の出来事が起き、俺自身とても悔しい思いをしていた。そんなことを考えていると、永谷が声をかけてきた。
永谷「おいー」
永谷は、俺の肩を叩きながら、笑っていた。
俺 「どうした?」
永谷「早く練習したいん?」
俺 「練習は嫌やけどな‥‥」
永谷「やりたくなってるやん」
俺 「まぁな。このままで終わるのはな」
永谷「このまま終わったら、ネタでしかないな」
俺 「ホンマやな」
永谷「今日の日がいつか報われるように頑張ろうや」
俺 「やな!」
俺は、少し笑顔を取り戻すことができた。
永谷「侑大は、どこの大学行きたいの?」
俺 「うーん。国立かなぁ」
永谷「そうなんや。どこらへん?」
俺 「理想は、神戸とか広島の大学かなぁ」
永谷「賢いなぁ」
俺 「そんなことないよ。永谷は?」
永谷「俺は、工科大学いく」
俺 「受かりそうなん?」
永谷「あんま偏差値高くないしいけると思うよ」
大学の話をしていると、俺たちの高校生活も残り1年をきっていることに気づいた。ゴミ箱に入っていたゴミ袋をとり出し、結んで廊下の外に出した。永谷を見ると、ホウキで素振りをしていた。俺は、黒板の近くにあった新聞紙を丸めた。丸めた新聞紙を、ホウキを振り回していた永谷に向かって投げ込んだ。永谷は、来たボールを打とうとスイングをしたが、ボールは当たらなかった。