7月13日 あの日
今日の夕食は、麻婆豆腐に餃子かぁ。中華だな、完全に。お母さんと妹は、すでに食べているみたいだった。家の中にもいないみたいだ。どこかにいっているみたいだった。家に帰るのが遅れた俺は、急いでご飯を食べていた。この後、何かあるというわけではないが早く宿題を終わらせて明日の準備に充てたいと俺は考えていた。
明日行われる大会前最後の練習試合。対戦相手は、群馬北高校と滋賀県にある東宝高校。どちらも、全国大会に出場したことのあるチームだった。どちらの高校にも勝つことは難しいけど、惨敗に終わると、不安を残しての大会初戦になる。誰しも勝って勢いをつけたいと考えているところだろう。後は、スタメンだ。背番号こそ、一桁番号にはならなかったが、みんな虎視眈々とスタメンの座は狙っている。明日が、どんな試合になるのか楽しみだ。俺も、調整なんてウカウカしていられない。
確実に結果を出さないと。俺は、群馬北高校のエースである中川、東宝高校のエースである生方をイメージしながらバットを振っていた。おそらく、どちらも投げてはこないだろうけど、万が一来た時のためを想定していた。なんとしてでも、明日いい試合をしてチームに勢いをつけたい。それがレギュラーの役割だ。俺も、一時、試合に出られなかったんだ。ベンチの奴らの気持ちもわかる。あんな思いは、正直したくない。
補習中、騒ぎながら宝来たちとトランプをしていた。それが、監督に見つかり練習禁止。永谷に至っては、ただ寝ていたそれだけ。俺たちは、運がなかったとしかいいようがない。それから、俺たちは、みんなが練習しているのを見ながら、掃除の日々だった。昔は、練習なんてしたくないなと思う日々だったし、健太郎みたいに自主練なんて絶対嫌だった。けど、レギュラーを剥奪されてから全てが変わった。自分の前にあった当たり前のことが、全て当たり前じゃないことに気がつけた。練習ができず、掃除ばかりした日々や試合に出れるずボーッとみんなの活躍を見るしかなかったあの頃には、絶対戻ってはいけなかった。
どのみち、本気で野球をやるのは今年で最後だろう。大学に行って野球はやるのだろうか?自分自身でも、わからないけど悔いの残らないようにしたい。夏の大会が終わる最後の時まで、大事にしたいと思えるようになった。気づいたら、あの日のことを思い出していた。夕食を食べ終えた俺は、自分の部屋に向かうのだった。




