表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/80

6月27日 バント練習

 今日は、バッティング練習ではなくバント練習が中心のメニューだった。グラウンドの一角で、順番にマシンのボールをバントしていく。俺たちは、一列に並び、バントの決まり具合によって声をかけていく。健太郎、永谷、八幡、俺、橘と続いていく。

 二つ前の健太郎が上手にバントを決め、選手たちから大きな声が聞こえてくる。白球が、バットと接触するたび、綺麗な金属音が鳴り響き、選手たちが動き出す。健太郎の後に入った永谷のバントは、キャッチャーフライトなり、大きな声が飛び交った。

 そして、監督が前に出てきて、厳しい言葉を投げかけた。おそらく、監督は、永谷自身の戒めと励ましの意味を持ちあわせて声をかけたのだろうと思っていた。グラウンド上には、これまでにない集中力が出てきていた。八幡は、一球できっちり送りバントを決め、俺はバッターボックスに向かった。最後の大会だからこそ、送りバントやスクイズなどで試合の流れを左右する時がくる。だからこそ、この練習には意味があるのだ。

 バッターボックスに入った俺は、マシンにボールを入れる山口を見つめた。最初からバントの構えをしていた俺は、山口がマシンにボールを入れた。横から見ている感じだと、これまでより速く感じる。あまりの速さに、構えていたバットを引いた。少し高かったことも功を奏した。この速さならバットの芯をもつ右手にいつも以上に力をいれる。

 そして、二球目を待った。バットの真ん中付近に当たったこともあり、ファースト方向へとゆっくり転がっていく。待っている選手からも「ナイスバント」と大きな声が聞こえてくる。こうした一つ一つのバントが、夏の大会を左右していく。俺たちは、丁寧にボールを転がしていく。この後も、硬いグラウンドの上で繰り返されていくバントの音。それはまるで、誰かに追われる中を走る心の鼓動であるかのようだった。

 蒸し暑い中、風が吹き抜けていく。夕闇の訪れとともに各々疲労感を感じてきたみたいだった。それでも、最後の優聖までがきっちりバントを決めたのだった。最後のバントが終わると、監督や俺たちが大きな拍手をしたのだった。そして、エースの橘や橋本たちは、満足げな表情だった。そうした二人の選手を見るとこれまで以上に、俺たち選手たちも身体をほぐれ、テンションが上がっていくのであった。そして、監督は大きな声を出し、バント練習からノックに切り替わろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ