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6月25日 横断幕

 俺たちは、練習が始まる前、部室でたまっていた。昨日、掲げられた横断幕についてだった。今日は、いつもより他のメンバーも集まるのが早かったみたいだ。俺たちのクラスは、6時間目が自習ということもあり、掃除が終わり次第、永谷と部室に来たのだった。俺たちが来た頃には、すでに橋本や橘たちも来ており、いつもの盛り上がりを見せていたのだ。


 八幡「これ、書いたのだれ?」


 誰も返事をしない。


 川中「橘とか橋本やろ?」

 橘 「ちゃうちゃうー」

 橋本「違うよなー。


 お互いを見合わせながら話をしていた。


 八幡「じゃあ、誰や?」

 橘 「侑大とか健太郎やろ」


 健太郎「ちゃうわ、バカ」

 橘  「お前、やりそうやな」

 健太郎「やるか。てか、これ、俺の字じゃないだろ」

 橘  「たしかに」


 健太郎は、昔から字にはこだわりがあった。なので、健太郎が書いたかどうかは、一目見ただけで判断できた。

 

 橘 「じゃあ、侑大やな」

 俺 「俺、こんな字綺麗に書けませんから」


 一斉に笑い声が起きた。これは、昔、橘が監督に使った言葉で、一種のネタになっていた。すると、橘のチョップをかましてきた。右首に一瞬の痛みが走り、ビビったけど、それ以上にみんなが笑ってくれて嬉しかった。こんな日々がずっと続いたらいいのに。俺は、どこか感慨深くなっていた。


 健太郎「ってなると、俺ら以外か」

 八幡 「でも、これいつから貼られてたの?」


 やっぱり、八幡たちは貼られていることを知らなかったみたいだ。ってことは必然的にメンバーは限られてくる。


 健太郎「俺らが、昨日の朝練から戻ってくる前にはあったよ」

 八幡 「まじ?俺らが部室から出る頃には、なかったよな?」

 川中 「うん、なかったな」


 八幡や川中が部室を出て、俺らがくる前に貼られたということか。


 八幡 「じゃあ、お前らやろ」

 橘  「ちゃうって。どう見ても、この字俺じゃないやろ」


 たしかに、字は橘のものではなさそうだ。橘は、字が汚いわけではないけど、この横断幕の字は明らかに綺麗すぎる。


 川中「まぁ、誰でもいいんちゃうか」

 八幡「後で考えよか。練習いくぞ」

 橘 「おけぃ」


 横断幕の件は、結局解決することはなかったが、それ以上に練習することに気合が入っていた俺たちは、勢いよく、部室を飛び出していったのだった。

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