6月23日 カップル
今日もぐったりだった。いつものように18時まで練習して部室を出て自転車置き場に向かっていた。ノック中心のメニューで、ヘトヘトだ。この後、塾がまだあると思うと、とてもじゃないけど、気分はノッてこなかった。
今日は、健太郎が部室から出るのが遅そうだったから、自転車置き場で待とうと思っていた。人混みに足を進めていたとき、前方にカップルを発見した。
あれは、、、、。俺の前にいたのは、まぎれもなく野球部だった。野球部の横にいる女の子は短いマーカーを着用していた。八幡と渡邉だ。八幡は、さっきまでつけていた帽子を斜めに被っている。渡邉は楽しそうに笑い、八幡の手を握っていた。こんな堂々とカップルの行動をとられるとは。
二人は優雅に歩いており、俺は抜くに抜けなかった。俺は、彼らを見ながら懐かしい気分に陥った。俺は、中学生以来、彼女がいない。彼女といつも一緒にいたあの頃が羨ましい。当時、付き合っていたアイツは、どこで何をしているのだろうか?
先に自転車置き場についた二人とは、別のところに留めていた俺は、自分の自転車を撮りに行く。すると、またしてもカップルがいることに気がついた。突然目の前に現れたカップルは、サッカー部だ。あれは、沢田だ。久しぶりにみたけど、相変わらずのモテっぷりだな。横にいた女子の顔は見たことがあるけど、なんていう名前かは知らなかった。
二人を見ていると、俺に二次元の物語を超える現実感をもたらそうとしていた。沢田は、彼女との思い出の日々を考えているかのように、感慨に浸っているみたいだった。俺は、羨ましい気持ちが自然と湧いてきた。俺は、二人に見つからないように、自転車の鍵を開けた。自分自身の気持ちに向き合い始めた。ホントは、ここで待とうと思ったけど、こんなところでは待てない。
俺も彼女に心を開いて、自分と同じ時間を共有したらもっと気分が上がるのだろうか?沢田はたちが横に歩いてきたので、見つかるうちに自転車を漕ぎ出した。このままいけば、バレないだろう。俺は、ちょうど沢田とすれ違う時に、猛スピードを出していたら、止められずにすむことがわかった。
俺は、彼女がいないという現状に耐えることはできないから、その現実から目を背けることにした。自分自身を変えて、新しい彼女と出会うという発想は、俺の中になかった。俺は、ゆっくり坂を自転車でおりていく。静かに立ち上がり、自宅に向かって進み出していた。




