6月22日 朝練
早朝、鳥たちの鳴き声とともに、校舎裏のグラウンドには青春の汗が滴り落ちていた。選手たちは早起きし、真っ暗な中、グラウンドに集合していた。一歩ずつ、黙々と体を動かしていた。ノックを受けている者もいれば、バッティングをしている者もいる。そして、投手陣は走りこんでいた。そんな中、監督と2年の選手たちは、輪を作りなにやらアドバイスをされているように感じた。
朝練にくると、最後という感じが強くなるのは俺だけだろうか?いつものように健太郎たちとティーバッティングをしていた。今日は、いつもより多くのメンバーが来ていた。"聖淮戦"で勝ってから、勢いもついているんじゃないだろうか。
すると、監督から全員でバッティング練習を始める合図が出されたのだ。朝練は、自由参加で自由練習が基本だった俺たちは驚いていた。それでも、橘や八幡がやるように声を出したからには俺たちもやるしかなかった。バッティングゲージを運ぶことになった。俺は、さっきのティーバッティングで大量の汗が滴り落ちるくらい打ち続けていた。
もうすぐ7月になろうとしている季節には、なかなか勝つことが難しい。これまでの2年間、厳しい体力トレーニングを積み重ね、相当な力をつけてきたけど、この暑さにはなかなかだった。いつもそうだが、夏がくると、年々暑くなってないかと思ってしまう。実際、そんなことはないのだろうけど、苦しいな。
俺以外の健太郎や橋本たちも限界に達っしているように感じた。だんだん、吐く息も荒くなり、疲れた表情を浮かべていた。それでも、俺たちにとっては最後の夏だ。やれることはすべてやっておきたいというのが本音だった。それは、監督も同じみたいだった。俺たちとは、2年間一緒にやってきた。思い通りならないことの方が多かったけど、決して諦めることはなかった。ずっと、選手たちに励ましの言葉をかけながら、練習、試合に付き合ってくれたのだった。
そうした監督の姿勢に感謝している選手は、多い。その代表がエースの橘やショートの八幡だろう。監督は、何やら橋本が走っているところを止めて、声をかけているみたいだった。聞き終えた橋本は、俺たちのもとにやってきて、バッティング練習が終わったら、全員でグランドを走るように告げられた。これ以上、体をいじめるのかと落胆する気持ちもあったけど、残された時間は多くない。俺は、切り替えてバッティングゲージに入ることにした。




