6月16日 バッティングセンター
俺は、バットを振りながら、昨日のことをふりかえっていた。明らかに昨日の試合は、俺が思った展開だった。接戦の中で、1.2打席目と連続でヒットを打てた。守備でも、相手のチャンスを捕殺していた。バッティングセンターのボールは、15球目を過ぎようとしていた。
昨日の試合、俺がホームランを打った瞬間、それまでの3安打は、全く意味がなくなってしまっていた。こんなことになるなら、ホームランなんて狙わなかったらよかったと後悔してしまっていた。俺は、交代を告げられた後、いろいろ考えてしまった。バッティングセンターのボールは、綺麗に真ん中に投げ込まれた。
カーン。金属音が鳴り響いた。昨日、俺の代わりに入った2人の成績は、何とも言えない結果だった。まずは、永谷満。2試合目に先発出場し、3打数1安打。本人は、あの事件以来、どうもやる気が失せているみたいだった。相変わらず、井上や宝来たちと遊びは続けてるみたいだ。
もう一人は、田中優聖。こちらも2試合目に先発投手として出場。投手としては、7回を3安打1失点。打者としては、4打数1安打。昨日は、バッティングよりもピッチングで結果を出したいみたいだった。そういう意味で言えば、とてもよかったと言える。
二人とも、そこそこの成績だったが、成績だけで言えば、俺の方がよかった。でも、監督は俺を使うだろうか?あんな形でベンチに引っ込めた俺を。ホームランを狙っていたことがバレるなんて想定外だった。結果として、ホームランだったんだから文句ねぇだろって感じだけど。
無心にバッティングセンターのボールを打ち続けることに集中することにした。先発出場できるかはわからない。でも、後は準備するしかない。3日後に迫った、淮南高校との一戦は、湯浅か佐藤のどちらかが投げてくるに違いない。カーン。今度は、右方向に鋭いライナーが飛んでいく。
バッティングセンターのボールは、一定のテンポで一定のスピードのボールが飛んでくるから実戦向きではない。それでも、このボールを打ち続けて昨日の試合を忘れるしかなかった。今度は、左方向に打球が飛んでいく。あんなにボールが飛んでいくなんてこのバッティングセンターのボールは何か入ってるのか?
20球目のボールを打ち終えた俺は、バットを置いて、大きく息を吐いた。打席から出て行き、すぐ近くにあったベンチに座り込んだ。試合に出たい。愚直な想いがこぼれ落ちそうになった。




