6月11日 宣誓
俺は、ずっとこの姿を待っていた。この大きさだ。
ー6月5日ー
異様なムードに包まれたサッカー部のコート。沢田から宝来へとキッカーが変わった。俺も永谷も二人の結末を見守ることにした。宝来の1本目。宝来が蹴ったボールはゴールポストに当たってしまい、ゴールの外へと外れてしまっていた。さっきの流れはどこにいってしまったのだろうか?
1本目を終わって、沢田がリードをしていた。沢田は、余裕の表情を見せていた。まるで、自分が勝つかの様な雰囲気が出ていった。たしかに、1つ目の宝来vs唐沢戦で、宝来も余裕の表情は見せていたが、どこか違う。
そして宝来と入れ替わりで沢田がやってきた。宝来とは対照的だったのが沢田だった。余裕の表情の中、どこか真剣さが漂っていた。あんな沢田は、あんまり見たことがない。他の人にとっては、ちゃらけて見えるのかもしれないが。
"おおぉ!!!"。ゴールが決まり、サッカー部や生徒たちから大きな声が上がっていた。2本目も沢田は、難なくゴールを決めてしまった。コイツにミスの二文字はないのだろうか?驚きとともに愕然としてしまっていた。
ボールは、ゴール上に抜けていってしまう。苛立ちからか、俯いてしまった。宝来は、またしてゴールネットを揺らすことはできず流れは完全に沢田の方にいっていた。2本目が終わった2点差。いよいよ宝来にあとがなくなってしまった。
3本目。ここで沢田が決めると、宝来の負けが決定となる。運命の3本目。キーパーの宝来は、俺から見て右の位置に大きくポジションをとる。唐沢との試合でやったやり方かぁ。沢田は、右利きだから、左へとカーブはかけやすいのか。宝来としては、一二の三で左に飛びこむという作戦なのだろう。ここで、あえて右に蹴るという沢田はあるのか?
永谷「ここで、右に蹴ったりしねぇかな?」
俺 「沢田だったらやりそうだけどな」
なんか、沢田がなにか仕掛けそうな気がした。
永谷「たしか、このやり方、唐沢ともしてなかった?」
俺 「してたな」
永谷「あれだよな。蹴り出した瞬間動くってやつだな」
沢田。コイツはわかんないな。
俺 「沢田の性格から絶対、右だろ」
中沢の笛とともに助走をし始めた。すると、右手をゴールポストに向けた。どういうこと?すると生徒たちから声が上がった。横から見ていた俺たちにはわかんなかったけど、どうやら右に蹴るという宣誓みたいだ。




