6月8日 3本目裏
6月5日から、俺たちが群れることはほとんどなかった。というのも宝来が来てないからだ。アイツのことだから、また現れるとは思うけど。どこか心配になっている自分がいた。
ー6月5日ー
PK戦は、中盤へとさしかかっていた。攻守交代する際の宝来は、どこか余裕があるように見えた。
健太郎「すげぇな、二人とも」
俺 「そうだな」
橘や橋本と見ていた健太郎が近くにやってきた。
健太郎「後で、バッティングしようぜ」
俺 「ティー?」
健太郎「いや、フリーで」
俺 「ええよ」
キッカーの唐沢は、三度目のボールをセットした。
健太郎「俺、先行くわ」
俺 「このタイミングでいくの?」
健太郎「お前みたいに余裕ねぇからな。ハハハ」
健太郎は、そう言って俺たちから離れた言ってしまった。本音を言ってしまえば、俺にも余裕はねぇ。でも、この戦いを見ずして練習に集中できなかった。俺が、別のことを考えている瞬間、唐沢は、ボールを蹴っていた。歓声とともに、視線を向けた。またしても、唐沢が蹴ったボールは、ゴールネットを揺らせなかった。
橘 「まじかぁ、惜しいなぁ」
永谷「もうちょいやったな」
橘 「これで、次、宝来決めたら試合が決まりそうやな」
橘は、このPK戦をとても楽しんでいた。
永谷「ほんまそれ。沢田どう?」
沢田「もう、宝来の勝利じゃないかな?」
後ろにいた、沢田は、永谷の肩に手をおいた。
永谷「どうして?」
沢田「おそらく、唐沢は精神的に追い込まれてると思うし」
永谷「そうなの?」
沢田は、二人の心情を推察していた。攻守交代をして、キッカーの宝来は、悠々とボールをセットした。今回は、中沢が笛を鳴らしてもすぐに蹴らなかった。俺たちの視線を集まるかのように、時間をかけた。
沢田「たぶん、止めようと思えば、唐沢のシュートは止められると思うから」
どういうことだろう?
永谷「えっ、どういうこと?」
沢田「どういうことだろうね。ハハハ」
沢田は、不適な笑みを浮かべながら、上着を脱いでいた。背番号は「9」だった。
永谷「あぁー」
沢田「これで、決まりかな?」
永谷「どこいくの?おい」
沢田は、スパイクの紐を結んで、グラウンドの奥へと進んでいくのだった。
宝来が蹴ったボールは、ど真ん中だ。ここでど真ん中を蹴れるメンタルがすげぇ。定位置にいれば捕れていたが、既に唐沢は右に飛び込んでいた。




