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5月31日 あの日

 5月も今日で最後。そんなことを考えていると、どこか寂しくなっていた。5月は、本当にいろんなことがあった。特に、驚いたのが遠山の引っ越し。俺は、あの日のことを鮮明に覚えていた。


 ー5月6日ー


 俺は、いつものように部室に向かった。今日は、健太郎と一緒に来なかったこともあり、いつもより早く着いた。部室には、八幡、川中、健太郎がいた。


 俺 「おはよ」

 八幡「おはよー」

 川中「うぃーす。今日は、健太郎と一緒じゃないん?」

 俺 「今日は、1人できたよ」

 八幡「俺、先いってバット振ってくるわ」


 そう言って、八幡はグランドに行った。俺は、ロッカー前で健太郎と川中が話をしていることに気がついた。俺は、ユニフォームに着替えながら、二人の話に耳を傾けた。


 川中 「昨日、ヤマと話した?」

 健太郎「何を?」

 川中 「引越すこと」


 どういうこと?俺には、よくわからなかった。


 健太郎「少しだけ聞いた」

 川中 「今日の朝、連絡来てビックリしてん」

 健太郎「やっぱりホンマやったんや」

 川中 「なんで教えてくれへんったん?」


 珍しく川中は、声量が大きくなった。


 健太郎「どうしても言わんといてって言われて」

 川中 「それでも言うやろ」

 健太郎「ごめん‥‥」


 健太郎は、下を向いていた。


 川中 「昨日なら、まだ何かしてあげれたのに」

 健太郎「ヤマの気持ち考えたら、言わん方がいいんかなって思って」


 健太郎の意見を真っ向に否定した。


 川中 「いやいや、おかしいやろ。この時期にメンバーおらんくなることがどれほどの意味もつかぐらい考えたらわかるやろ」

 健太郎「別に昨日言ったところで、ヤマが東京行かんくなるわけちゃうやん。ヤマが自分で決めたこと尊重しようや」


 健太郎もひくことはなかった。


 川中 「そんなんわかってるけど、みんなの前でどう言ったらいいん?代わりに言ってくれるん?」

 健太郎「‥‥」


 少し言い合いになったところで、橘がやってきた。


 橘  「どうした?大きな声だして」

 健太郎「うん?」


 健太郎は、動揺してしまった様子だった。俺は、行こうと思ったが、既に橘が近くにいて何もできなかった。


 橘  「何かあった?」

 川中 「昨日な‥」


"昨日"という単語の始まりを聞き、ヤマの引越しについて言われるのを覚悟した。


 川中「俺が二塁打打った時あるやん?」

 橘 「4回の攻撃のやつか」

 川中「そうそう。二塁アウトかセーフきわどかったやんか。その時の二塁の審判のモノマネしてたんやけど、健が似てないって言うねん」


 橘 「どんなんどんなん?」

 川中「いくで‥‥セェーフ」大きな声で腕を横に伸ばした。

 橘 「ちょっと違うな、こんなんちゃう。‥‥セェーフ」


 川中のとっさのアドリブで私たちの言い合いは、幻になった。こういう時に、アドリブで対応できるのはさすがだった。橘がモノマネをしていると、佐伯、田畑、橋本がやってきたのだった。

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