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5月17日 喪失

 俺は、山里侑大。聖徳高校に通う高校3年生だ。今日は、土曜日ということもあり、練習試合が行われていた。練習試合の相手は、道和高校。夏の大会では、ベスト8常連の高校で、今の聖徳高校の強さを確かめるにはいい相手だった。

 聖徳高校野球部には、最近、遠山が引っ越すという出来事が起こっていた。引っ越しは仕方なかったが、遠山が引っ越しをしてから、俺たちが気づくという前代未聞の通知の仕方だった。

 遠山がいなくなってから、どうもチームの調子が出ない。仲が良かった八幡、佐伯だけでなく、俺とよく話す健太郎まで、気持ちが沈んでいた。

 そんなチーム状況を示すように、3回までに、エースの橘が6失点をするなど苦しい展開となっていた。なんとか雰囲気を変えたい聖徳高校は、4回表に私の打順から始まる。俺は、今日も1番センターで試合に出ていた。1回の第一打席では、三球三振に終わっていた。

 「プレイ!」。審判の力強い声が響いた。道和高校のピッチャーのスピードは、かなり速かった。道和高校のスコアボードには速度表示があり、私に投げた初球のボールは、140km/hを示した。「ストライク!」。続いては、アウトコース低めのカーブだった。「ボール」。狙い球を、ストレートから先ほど投げてきたカーブに変え、打席に立った。

 すると、狙い通りのカーブがきた。カキーン!!痛快な一撃がライトを襲う。打球はライト奥深くへ潜り込み、2塁打となった。続く2番の安田もレフト前ヒットを打ち、ノーアウト1.3塁となった。

 チャンスで、3番の橋本が打席に入った。橋本は、甘く入った初球を捉えた。橋本の打球は、一二塁間を抜き、ライト前ヒットとなった。ライト前ヒットとなってから、俺は、ホームベースへ走り、聖徳高校の最初の点となる得点を決めた。

 再び1.3塁で4番の川中がバッターボックスに。この試合ニ打席目であるが、一打席は全く歯が立っていなかった。川中の立ち振る舞いから、私は、打つだろうなと確信していた。しかし、川中は、低めの変化球を打たされ、ショートゴロダブルプレーとなった。2点目は、入ったものの、チームの流れは一気に止まってしまった。

 その後は、道和高校の2人のピッチャーに打線は完全に封じられた。一方、投手陣は、6失点をした橘、橘を受けた竹田が5失点、3番手の葛西も4失点とトータル15失点をする結果となった。

 あまりの強さに私たちは、自信を失うしかなかった。この日は、時間の関係上、一試合のみ行い、私たちはバスで学校に戻ることになった。自信を失った俺たちは、バスの中で寝るものやスマホを触るなど、誰一人話す者はいなかった。


 

 

 

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