第二話〜本当にすごい神様なのよ〜
「こーんにちはっ!」
セリアがロアの家に遊びに来た。
「イマジンッ
幻想界はあなたの世界でしょ
他の世界に繋がってたなんて
なんで早く知らせなかったのよっ‼︎‼︎
昨日も言ったけど
あなたが作った世界かも知れないけど
まだ全部自分で決めるのは早いのよっ‼︎‼︎
その為にあなたにもアバドンにも
天界の門をいつでも……
通れる様にしてあげてたのよ‼︎‼︎
知らなかったの⁈⁈」
あれから三日、エオマイアがヴァンデルンの体でしていたアバドンの説教は、イマジンに変更された様である。
「アバドンは偉かったわ
ちゃんとすぐにあなたとセリアが
あの世界に行ったのを
知らせてくれたからね……
あれが遅かったら
あなたはどうなってたと思うの?
あなたが殺されても
こっちは文句言えないのよっ‼︎‼︎」
セリアはそれを聞いてそっと扉を閉めて、逃げる様に帰ろうとしていたが……。
「セリアちゃんどうしたの?」
セリアの背後からアバドンの声が聞こえ、恐る恐る振り向くと、ロアとアバドンが買い物に行っていた様だ、アバドンの顔を地上の人々は知らない、知っているのはあの場にいた者だけで、地上の人々も天使も、あの巨大ミノタウロスの姿しか知らないのである。
その為にアバドンの説教も兼ねて、ロアの家に住んでいるのだ。
因みにセリアが遊びに来たのは、あれ以来毎日三食、ミルク消費の生活が続き、飽きて来たセリアは普通のご飯が食べたくて一人で遊びに来たのだ。
「いや……その……
イマちゃん忙しそうだから
帰ろっかなと……」
セリアが汗をかいて言う。
「ふ〜ん……
あの時セリアちゃんを
止めようとしたイマちゃんが
巻き込まれたよね?」
アバドンがセリアの顔に迫りながら言う。
「そ……そうだったけぇ?」
セリアの目が泳いでいる。
「そうだよねぇ……
セリアちゃん?」
アバドンが凄みを出して更にセリアに迫りながら言う。
「セリア?」
ロアが優しくセリアを呼んだ。
「ロアさんっ!」
セリアが助けを求めた。
「セリアはいい子だから」
ロアがそう言い、セリアはうんうんと頷いている。
「友達おいて逃げないよね?」
ロアが優しい笑顔で言った。
(はぐぅぅぅ……
いまは逃げたいっ!!)
セリアがそう思い固まり、ロアがセリアのローブを掴み家の中に引きずられて行く、セリアにとってロアは絶対であり、全てを諦めた様にジタバタもせずに、説教に巻き込まれていった。
そして二時間が過ぎた頃。
「確かこの街よね?
オプス様」
シャーゼンの街の上空にユリナが来ていた。
「はい
教えてもらった
シャルル様の小屋から
一番近い街ですし
間違いないと思います」
ユリナが背負う暗黒からオプスが言う。
それを聞いてユリナが神の瞳でさっと街を見ると、ヴァンデルンに説教されてるセリアとイマジンを見つけた。
「あの家ね」
ユリナはそう言いシャーゼンの街に降りていった。
(お説教長い……)
セリアはそう思っていた。
(セリア?
こっちはそれ毎日聞いてるのよ
少しは我慢しなさい)
ロアがメーンスの魔法で優しく言ってくれたとき、ドアがノックされた。
「こんにちわ
遊びに来たわよ」
ユリナの声がする。
(救いの神っ‼︎)
セリアがはっとしてそう思った。
ロアが玄関を開けて、ユリナが入って来てくれた。
「素敵な家ですね」
ユリナがそうロアに言う。
「いらっしゃい
いまちょっと煩いかも知れませんけど
ゆっくりして下さいね」
ロアがユリナを席に誘い、紅茶を入れる。
「うーん……
今日はこのくらいでいいわ
ユリナさん来たし
また明日にします」
黎明のエオマイアがそう言った。
(やった‼︎‼︎)
セリアがほっとして喜んだが……。
「あっ
気にしないで続けて下さい
明日にされるなら
いましといた方がいいじゃないですか」
ユリナがそう言った。
(はぐっ……)
セリアは突き落とされた気分になる。
「ですが……」
エオマイアも予想してなかった言葉に焦る。
「私はそう思います
大切なことほど
ちゃんと最後まで怒って反省してもらって
なるべく早く終わらせてあげること
長くなると
お互いに疲れちゃいますからね」
ユリナが状況を知らずに自論を言うが、その自論じたいは間違ってないと、誰もが思うがロアが言った。
「いいのよ
これ……三日も続いてるんだから
そこのアバドンは二週間
もう慣れたわ」
「…………」
ユリナとオプスは汗をかいた。
(ユリナさん失礼しますね)
暗黒の中からオプスがそう言い、その姿を表した。
「はじめまして
私は闇の女神オプスと申します」
闇の女神オプスが丁寧な挨拶をする。
その場にいたユリナ以外のみんなが驚いている。
オプスは白い肌に黒い髪をしているが、髪の中には星が瞬いていて、黒いローブにも時折星が瞬いている、可愛らしい顔立ちに紫の瞳と紫の唇がまた印象が強く残るが、愛らしい笑顔を見せ、誰もがその笑顔に惹かれる感覚を覚えた。
「えーっとエオマイア様?
お二人は反省してると思うのですが
許して差し上げても
いいのではないでしょうか?
この世界の神ではないわたくしが
言うのもおかしいのですが
絶対神である
エオマイア様の懐の深さに
甘えてお願いします
ぜひ許してあげて下さい
わたくしは許すと言う行いが
何よりも神聖な行いだと
そう信じていますから」
オプスは自分達の世界ではないことを考え、あえて神聖さを出さずに、自然な口調で言った。
(おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……)
セリアは感動していた。実は正座し続けて二時間経過している、イマジンは既に感覚すらない……。
「オプス様は
お優しいのですね
イマジンはまだ……
ですがアバドンは許せません」
エオマイアがアバドンを見て言った。
アバドンはしょぼんとしてしまうが、その姿をオプスはニヒルの瞳を使い、神の瞳よりも深く深くアバドンを見通した。
「それはエオマイア様が
ご自分を責めているからでは?」
オプスが静かに言った。
「え……」
アバドンが小さく声を漏らした。
その言葉にロアもイマジンもセリアも耳を疑ったが、ユリナがロアの耳元でささやいた。
「オプス様は
本当にすごい神様なのよ」
そしてオプスが話始めた。
「世界を
アバドンさんが滅ぼそうとしたこと
それはエオマイア様が
昔考えたこと……
その理由はアバドンさんが
世界を滅ぼそうとしたこと……
でもそれは
本当はエオマイア様が
最初に考えられたのですよね?」
「どう言うこと……」
イマジンが呟いた。
オプスは静かに話続ける。
「最初にエオマイア様が
この世界を作られ
イマジンさんの様に
人型の魔物を生み出され
後から生み出された
人間と上手くいかなかった
それが悲しかったのですよね
そして間を取り持つ為に
ヴァンデルンさんをアバドンさんの
妹として生み出そうとされました
でも血から生み出すのに
疑問を持たれてしまった……」
「そんな……
ヴァンデルンが……」
アバドンが信じられない様な顔をしたが、血から生み出すことに疑問を持ったと言う言葉で踏みとどまった。
それはアバドンは、エオマイアの血から生まれたが、ヴァンデルンが生み出された時には、色々と問題を起こしていたからだ、疑問を持たれても仕方ない気がしたのだ。
「そしてエオマイア様は
ヴァンデルンさんにご自身の身体を
お貸ししました
それでどうしていいのか解らず
世界を滅ぼして全て作り直すことを
一時でも考えてしまいました
余りにも上手くいかないので
責任も感じて
自らの死も考えられました
そのエオマイア様の悩みは
アバドンさんに通じてしまったのです
エオマイア様の血からお生まれになった
アバドンさんにとてもとても強く
影響を与えてしまっていたのです
そしてご自身と全く同じ姿をした
アバドンさんが起こしてしまったことの
本当の原因がご自分にある
それをエオマイア様は
ご自分のお姿と同じアバドンさんに
当たってしまっているのです
ご自分と
重ね合わせてしまっているのです」
そのオプスの言葉を聞いた、エオマイアは全てを見抜かれ膝をついてしい、手をつき涙を流した、それは誰も予想してなかったことだった。
既に力はエオマイア程ではないが、闇の女神オプスの絶対的な慈愛を、エオマイアを責めることもなく、エオマイアが本当に大変だったと言うことを伝える様に話す、言葉の強弱からみんなが感じていた。
(ほんとうに……すごい神様だ……)
セリアが心からそう感じ呟いていた。
そしてオプスは次にエオマイアの心を見通して話始める。
「辛かったんですよね?
私はそれが解るとはいいません
ただ私も本当に臆病で
怯えていた時がありました
私が生まれた世界は神々の中でも
差別という現象がありました
私の瞳はニヒルの瞳と言って
それが知られては
私の身も危なかったのです」
オプスは思い出しながら涙を流し、エオマイアに寄り添う様に話している。
「ですから私は
私にされたくないことを
全ての人や神にしないことを
誓いました
それでも怖くて隠していたのです
辛かったし苦しかったよ
でも……
死の女神ムエルテが
初めて気付いてくれて
受け入れてくれました」
「ムエルテ様って
この前イマちゃんと戦った神様?」
セリアがオプスに聞いた。
「はい」
オプスは涙を流したまま微笑んでセリアに応えてくれた。
「ムエルテは自分のことを
こう言ってくれました
(妾は死から生まれた……
誰もが恐れる死から生まれたのじゃ……
天界から追い出されたら……
妾と共に生きれば良い……)
私はその言葉に救われたのです
それから私は本当の友達が出来ました
今では何でも話せます
私の一番大切な友達なのです」
オプスは長くなってしまったが、神として自分の辛かったことを全て話した、この前の黄泉の国でロアが言ったことから、エオマイアの女神が現実逃避してるのでは?と感じていたからだ。
「わたしは神に向いてないのよ……
大切なことは
解ってるつもりよ……
でも私には出来ないよ……」
エオマイアが女神であるオプスに言った、その言葉に空気がとても重くなってしまう。
「ごめんなさい……」
オプスがそう呟き、エオマイアの頬をおもいっきりひっぱたいた。
パチンっと言う音がして、エオマイアは悲しくなる、そしてオプスは言った。
「はい
出来ないと思います……」
その言葉にイマジンもアバドンもセリアも、えっと思うが、ロアとユリナは最後まで聞く様に静かに紅茶を口にする。
そしてオプスは言った。
「私もエオマイア様と同じように
一人で世界を見るのは
出来ないと思いますよ」
そう言って優しく微笑んだ。
それを聞いてエオマイアは以前にユリナが言った、一人で世界を見ることの大変さを思い出した、そして多くの天界の天使達に仕事を任せているが、天使達の出来る事は限られている、代わりに混沌が天界に行って色々してくれているが、悩みは増えている。
「エオマイア様は頑張って来ました
わたしはそう思います
だから最初に……
ご自分を許してあげて下さい
まずはそこからです
自分を大切に出来ない方が
自分と同じ様に
世界を大切に出来るとは思えません
人だってそうです
ご自分を大切に出来る方が
ご家庭を大切に出来て
ご友人を大切に出来るのです
そしてそれがお仕事を
大切に出来ることに広がり
それがまた広がり
愛する人を本当に大切に出来るのです
エオマイア様あなたは
本当に頑張って来られました
でもやり方を
少しだけほんの少し
間違ってしまっただけなのです」
様子を見てオプスは優しく話していた。
(オプス様
本当に優しい……
わたしじゃそんな綺麗な言葉
思い浮かばないよ……)
セリアが感動し涙を流していた。
(やっぱり神様が一人なのより
沢山いた方が神様も育つのかしら……)
ロアは神の質的な所を見て器的には、エオマイアよりオプスの方が遥かに上の様な気がしていた、そしてロアが言った。
「黎明さん……
ちょっと思うんだけど
試しにイマジンとアバドンに
手伝って貰えば?
二人とも女神を目指して
神の領域に手をかけたんでしょ?
イマジンもアバドンも
自分で世界を作れるんだから
手伝って貰ってもいいんじゃない?」
「それは凄いですね
私達の世界の神々でも
自分で世界を作れる神様は
私を含めて五人しかいませんよ」
オプスが笑顔で言った。
それを聞いて、イマジンとアバドンは自分達の実力をやっと自覚出来た、二人は比較対象が少なすぎて感覚が解らなかったのだ。
「エオマイアさん
ものは試しでいいと思いますよ
神様の仕事も勉強より
実際にしてみないと
解らないこともあるし
出来なかったらその時に
考えればいいと思うし」
ユリナが言った、ユリナはイマジンがムエルテの首を落とす程の力と、世界を作れるだけ実力も持っているのに、女神じゃないことに勿体ない気がしていた。
みんながそう言うが、エオマイアには不安があった、イマジンもアバドンも確かに、神の領域に手をかけていたが、神の領域に立ったメーゼルと違いまだ見通せる力が甘いのである。
「どうされますか?
お一人で悩むより
みんなで悩んだ方が楽しいですし
色々と変わりますよ」
オプスがエオマイアの背中を優しく押してくれ、エオマイアは涙を拭い静かに立ち上がって言った。
「アバドン
ごめんね……私が悪かったのに
大変な思いもさせちゃって……」
エオマイアは最初にアバドンを許した、それは自分を許したことも同時に意味していて、沢山泣いたせいか少し気持ちもスッキリしていた。
「イマジン
あなたもいいわ
強くなりましたね
あのムエルテ様の首を落としたんです
自信を持って下さい」
黎明がそう言い、セリアは友達と言っていたオプスを見た、セリアだったら友達がそんな目にあったらただじゃ済まさないからだ。
オプスはそれを聞いて微笑んでいた、セリアは不思議に思ってオプスの袖を引っ張って聞いた。
「オプス様って
友達が酷い目にあっても大丈夫なの?」
そんなセリアにオプスは微笑んで言った。
「ムエルテは
本当に強い神です
ですからきっと
首を落とされたくらいじゃ
気にしませんよ」
オプスが微笑んでそう言ったが、言ったことが言ったことで、セリアはムエルテが化け物なんじゃと思ったが、オプスがムエルテを深く信頼していることにも気づいた。
オプスとセリアがそう話してる間に、イマジンはエオマイアに許されていた。
「これから
二人は七日に三日
天界で混沌の手伝いをして
女神の勉強をして下さい」
エオマイアがアバドンとイマジンに言った。
「そっそれは……」
アバドンが驚いていた。
「ちゃんと
勉強しないと女神になれないから
しっかりしなさいよ」
エオマイアがそう言ったがイマジンが聞き返した。
「エオマイア様は
どうされるのですか?
この世界に神は唯一無二……
それはエオマイア様が
居なくなると言うことですかっ?」
イマジンの言葉を聞いてみんなが、エオマイアを見た。
「ねぇユリナさん
あなたの世界って神様何人いるの?」
エオマイアがユリナに聞いた。
「う〜ん
解らないわ沢山いすぎて
でも大切なのは
最高神ね……
私もこうしてるのは
お母さんがいるから……
最高神のアインズクロノス・エレナ
お母さんに全部任せられるから
こうやって遊びに来れるんです」
ユリナは可愛らしい笑顔で教えてくれる。
「なるほど
ユリナさんのお母上
素晴らしい方なんですね……
一度あってみたいな」
エオマイアが考えながら言った。
「まだ先の話ですね
少し考えてみます
でも二人とも私を支える女神になるなら
苦労しますよ
それでもいいのですか?」
それを聞いたイマジンとアバドンは一瞬で想像した、何もしないかも知れないエオマイアにこき使われることを、だが二人は世界を作り自分の世界を見ていたので知っていた。
世界を作り管理することを、作業抜きでするには果てしない、膨大すぎる魔力が必要だと言うことを、エオマイアは何もしてない訳ではない、ただその膨大な魔力を放出し続けていると言うことだった。
「はいっ!
大丈夫ですっ‼︎」
アバドンが先に言った。
「もちろんですっ!
絶対に優秀な女神になりますっ‼︎」
イマジンがはっきり言った。
セリアがそれを聞いてうんうんしている。
「セリアも行って
勉強して来なさいね」
エオマイア言った。
セリアは勢い余ってうんうんしてしまい、はっとして顔を横に全力でふったがエオマイアは見ていない。
「はい決まりね
三人でお勉強して来なさいね」
笑顔でエオマイアが言い、こっそりとロアがご飯を作っていた。
「アバドン
イマジン手伝ってちょうだい」
ロアが二人を呼んでご飯の用意を手伝って貰ってもらっている間も、セリアは固まったままだった。
「ロアさんこれ多くないですか?」
イマジンが手伝いながら聞く。
「いいのよ
シャルル達も呼んだから」
ロアが微笑んで言う。
(べんきょう……
手伝い……
あのつまらない日々があぁ……)
その間、セリアはそれしか考えていなかった。
「ユリナさんと
オプスさんはお酒飲めます?」
ロアが聞くとオプスが答えた。
「ユリナさんは少し飲めますが
わたしは遠慮しておきます」
オプスが微笑んで言う。
「あら遠慮しなくていいわよ」
ロアがそう言いお酒の用意もしている様だが、みんなの居るリビングに来て、手をスッと振るだけで、テーブルが大きいテーブルに変わった。
(いまの……
神のしぐさ……)
闇の女神オプスは、それだけでロアの力に気付いていた。
固まっているセリアは久々に、ミルクを使ってない料理の匂いに正気を取り戻した。
「ご飯っ‼︎
肉っ肉っーーーーーーーーーー‼︎‼︎」
セリアが騒ぎ出し、配膳を素早く手伝って行く。
「セリアッ!
落としたりしないでね」
ロアが言った瞬間。
「あっ‼︎」
セリアが期待に応えてこけてしまい、料理を吹っ飛ばした。
「ばかっ‼︎」
イマジンが叫びロアの顔に血管が浮き出る、ヴァンデルンが瞬間移動をして受け止めようとしたその僅かな一瞬で、ユリナが指を鳴らした。
ユリナは料理の時だけを戻し、綺麗に料理をテーブルに置いた、
その力を一瞬で理解したエオマイアは驚いた、エオマイアは以前に冥界でユリナが見せた時の鏡は、魔法の一部か何かと思っていたからだ。
「すっごいっ‼︎
すっごい‼︎‼︎
凄いよユリナさんっ‼︎‼︎
ユリナさんって
なんの女神なのっ‼︎‼︎」
その力の意味を知らないセリアがはしゃいで聞いている。
「私は時の女神なの
だから時間を戻したり
過去に行ったりも出来るのよ」
ユリナが微笑んで言った。
「すごい……
カッコ良すぎる……」
セリアが呟き、その能力にイマジンとアバドンは圧倒的過ぎる開きがあることに気付いた。
(なんて力なの
時を完全にあやつる……
それじゃ秘密の力を使って
やっと対等……)
エオマイアがそう考えているとユリナが言う。
「あと
闇の神剣暗黒で
斬った相手を無に返せるかな」
ユリナがウィンクしながら言う。
(まけた……)
エオマイアが思った。
「エオマイアさん
闇の神剣は私の力なんで
気を落とさないで下さいね」
オプスがちょっと困りながら優しく言った。
「こんばんわ」
シャルルとセリエがロアの家について挨拶して入って来た。
「いらっしゃい
こちらはユリナさん
異界から来た時の女神様で
こちらはオプス様で
ユリナさんの世界の闇の女神様よ」
ロアがシャルル達に紹介した。
「ユリナ様
セリアが以前ご迷惑をおかけして
申し訳ありません
なんてお詫びをしていいのか……」
シャルルがユリナにお詫びしている、母親としてセリアが他の世界で迷惑をかけたからだ。
「気にしないでください
セリアちゃん
いい子じゃないですか」
ユリナが笑顔で言いシャルルを隣に招いた。
席はユリナの右隣にシャルルが座り、ユリナの左隣にオプスが座り、そこから順にセリア、ヴァンデルン(黎明?)イマジン、アバドン、セリエ、ロアとなった、かなり自由に何も考えずに座った結果、シャルルとロアは自然と隣同士になった。
セリアは珍しくロアの隣に行きたがらず、オプスの隣に行きたがったのだ、優しいオプスに甘えようと思った様だ。
席にはどこに誰が座ってもいい様に、ワイングラスが用意されていた。
セリアとセリエ、ヴァンデルン、イマジン、アバドンには白いブドウジュースをシャルルが注いでまわり、ロアがユリナとオプス、シャルル、そして自分のグラスに白ワインを注ぐ……。
「それじゃ始めましょ
乾杯」
ロアがそう言い、みんなで乾杯した時にそれは起きた。
オプスがスッと上品にワインを飲み、目が一瞬見開いてから優しい目になる。
「いいワインですね……」
顔をほのかに赤くしたオプスが言った。
「あれ?オプス様って
ジュースが良かったんじゃないの?」
セリアが肉料理を食べながら言う。
「あ……ごめんなさい」
ロアが言いブドウジュースの瓶を手に取り、オプスに注ごうとした時、ユリナが呟いた。
「もう遅いわ……」
「えっ……」
ロアが戸惑うと……。
「ユリナさん
注ぎましょうか?」
オプスがワインの瓶を手に取り、ユリナに言った。
「いえ
まだありますので……」
ユリナが戸惑い断った瞬間オプスの目が座った。
「ユリナさん
わたくしのお酒が飲めないのかしら……
それとも……
いつもあなたを先輩として見守ってる
わたくしに不満でもあるの?」
オプスの優しい声にささやかな殺気がこもっている……。
全員が、あの優しいオプスからのかわり様に目を丸くする……。
(えっ……どう言うこと?)
ロアがメーンスの魔法でユリナに聞いた。
(オプス様はお酒だけはダメなのよ……)
ユリナが仕方なくお酒を注がれながら言う。
「ねぇユリナさん
お姉ちゃんの真似しようとして
雪の中で転んで深い雪の中で
2時間も埋もれてましたよね?
あの時メトゥスちゃんが
心配してたの知ってます?
絶対神のあなたの恥を
一生懸命黙ってくれてるんですよ」
オプスがユリナに絡み始めた。
「ぷぷぷっ」
セリアが笑いを堪えていたが小さく笑う、だがイマジンとアバドンは恐れ始めていた、他の世界の神、そして能力が解らない神の暴走、絡まれたらどうしていいのか解らなかった。
そういったことに慣れているのか、セリエは関係なく料理を静かに食べている、エオマイアはユリナもオプスもツワモノと感じていた。
「ユリナさんって面白いんだねっ!」
セリアがはしゃいでオプスに言った。
「あらセリアちゃんも飲む?」
オプスがセリアにお酒を勧め始めた。
「ちょっとオプス様っ‼︎
セリアはまだ子供ですっ‼︎‼︎
神様だからって
子供にお酒を勧めていいんですか⁉︎⁉︎
お待ち下さい‼︎」
セリエが叫んで止めようとした、オプスは自分でワイングラスにワインを注ぎ、飲みながら聞いてセリアに聞く。
「そうなのか?
セリエよまだ酒も飲めぬのか?
それはつまらぬと思わぬか?
そう思わぬか?」
セリアは闇の女神オプスが怖くなって、首を横に振って全力で拒否すると、オプスはユリナを見て言う。
「ユリナよ
子供とはなんじゃ
余からすればそのようなこと
人々が勝手に
作った決めごとじゃないかしら?
神々の私達にそんなことを
願ったものも居なければ
そんなことを
叶えた神も居ないわよね?」
オプスの知性はユリナを軽く超えている。
「ちょっとオプス様
お酒入りすぎて
ムエルテ様みたいな
口調になってるよ」
ユリナがそう言うがオプスが言う。
「余とムエルテは友じゃ
少しくらいまねごとも良かろう?
ほらユリナ
こやつらが納得できるようにしてやれい」
オプスは完全に酔っ払って、オプスより格上のユリナに喰ってかかる。
「余が許すっ‼︎」
オプスが力強く言った。
「はいはい……」
ユリナがそう言い、セリアにスッと指を向けると、セリアが輝いた。
「こんやだけだけど
三歳くらいね」
ユリナが言った。
「わぁっ‼︎
胸がおっきくなった!」
セリアが微妙だけど大きくなった胸に驚いていた。
「いや……
胸だけじゃなくて
顔も綺麗になったわね……」
シャルルが驚いて言う、セリアは大人になっていたのだ。
「ほれセリア
これで飲めよう
酒くらいのめねば
良いおなごになれぬぞ」
オプスの悪酔いにシャルルは戸惑う、先程までの神聖さ溢れた態度は微塵もない、そしてセリアは半分怯えている。
(とんでもない席に座っちゃったよ
エオマイアさまぁ……
助けて下さいぃぃぃぃ‼︎)
大人になってもセリアは酔っ払ったオプスに怯え、ヴァンデルンの中に入っているエオマイアに助けを求めていた。
「エオマイア様
オプス様を止めて下さいっ!」
イマジンがそれに気付いて言った、次に自分に飛び火しそうな気がしたのだ。
「どう止めろと言うのです……
お酒飲の席で酔っ払いに絡まれるの
は当たり前のことです
そう言うときは……」
そうエオマイアは言い、立ち上がりイマジンとアバドンを掴みヴァンデルンの力を使って消えた……。
「ちょっとっ!
エオマイア様っ‼︎
逃げないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」
セリアが叫び、ロアが頭を抱えていたがシャルルが言う。
「仕方ないわね
セリアも大人になったんだし
付き合うしかないわね……
セリア?
お母さんとお酒を飲めるなんて
まだ三年も先よ
今しかないんだから
付き合いなさい」
シャルルがそう言いワインを一気に煽った。
「話がわかりますね
流石ね
奇術の魔女さん」
そうオプスが言い食事会が宴会に代わり、セリアは巻き込まれ逃げられないことが確定した。
(なるほど……
オプス様にお酒を勧めるのは
しない方がいいわね
にしてもエオマイア様も
お酒弱いのかしら……)
ロアはそう考えながらワインを口にしていたが、エオマイアが逃げた訳を暫くしてから知る。
朝日が登り始めた頃……。
「オプスってなんて強いのよ……
このターナってお酒も
強すぎない?」
お酒の強さに自信のあったロアはオプスに付き合わされ、なんとか持ち堪えていたが流石に酔い潰される寸前まで来ていた。
エオマイアは混沌が尋常でなく酒に強いのを知っていた、混沌が居ない今、もしオプスがそれと同じくらい強かったらと、戦線を離脱したのだ、ロアはやっとそれに気付いた。
(黎明……
教えてくれても良くない?)
ロアは内心、本気で訴えたくて仕方なかった。
「ロア殿そちはよいのぉ……
余の酒にここまでついて来れるのは
ムエルテのほかに見たことないのじゃ
ささっ飲むがよい」
オプスがそう言いながらロアに酒を注ぐ、既にシャルルとセリアは酔い潰され、一番最初にユリナが潰されたのが致命的であった。
(ユリナさんお酒弱すぎ……
シャルルより弱いのは仕方ないとしても
セリアより弱かったじゃない……
まったく役に立たないじゃないっ‼︎‼︎)
ロアはそう思いながら注がれたお酒を煽る。
もう既に意地になっている。
ロアは最初に聞いたユリナの力を頼っていた、こうなる前に、ロアが注ぎ間違える前に戻してもらおうと考えていたのだ。
「オプス様?
新しいお酒が届きましたので
お召し上がり下さい」
セリエが闇の翼を出し、そう笑顔で言いながら酒壺ごとオプスに渡した、オプスに勧められてもセリエは全力で拒否し続けていたのだ。
「さっき届いて沢山ありますので
どうぞ遠慮しないで下さい」
セリエが微笑んで言う、ロアはその言葉とセリエの微笑みに魔女の気配を感じて、何かあると悟って窓の外を見て見つけた。
ロアの家の外でエオマイアが覗いている。
「エオマイア様
どうですかね
メーゼル様に頼んで
この世界で一番強いお酒を
用意しましたが……」
イマジンがエオマイアに言う。
「大丈夫です
私の創造の力で
より強くしましたから
あのままじゃ
わたしがわたしの世界のみんなを
見捨てたみたいじゃない」
エオマイアが言う。
(半分見捨てたよね?)
アバドンがイマジンに小声で言う。
(うん見捨ててたよ
本気で絶対に……)
イマジンが小声でアバドンに言う。
「これはきくのぉ
ほれロア殿も飲まれ飲まれ……」
オプスが酒壺を飲み干し倒れ込んで寝はじめた。
「助かった……」
ロアがため息をして呟いた。
「ロアさん大丈夫ですかっ!」
まるで最後のボスを倒した時のように、アバドンが叫び、イマジンと一緒に家に飛び込んで来た。
「えぇ……
なんとか……
でも……」
ロアはフラつきながら家の外に出て思いっきり盛大に吐いた。
イマジンが背中をさすり、アバドンが水を持って来てくれる。
「セリエさん
よく頑張ってくれました
ありがとうございます
あとの片付けは私達でしますから
休んで下さい」
エオマイアがセリエに言った。
「はい……
でもこれ……」
セリエが闇の天使としてエオマイアに丁寧に聞こうとした時、ロアが外で力尽き倒れ、吐いたものの海に沈む。
「どうやって……
片付けるのですか?」
セリエがそう言い、闇の女神オプスの高圧的な態度に耐え抜いて、疲れ果てたのだろうか?倒れてしまった……。
危ない世界の様な酒の臭いに満たされた、ロアの家……主人のロアが倒れどう片付けるかなんて、イマジンもアバドンも、エオマイアすら思いつかなかった。
ただ、絶望する三人がそこにいた。
そしてロアの記憶には、ユリナが言った。
「オプス様は
本当にすごい神様なのよ」
その言葉が色んな意味で記憶に、深く深く深すぎる程に刻まれた。