第一話〜違う世界?〜
「こーんにちはっ!」
イマジンがそう元気にロアの家のドアを開けた。
「ねぇ解ってる?
あんたがしたことで
地上がどれだけ困ったことになったか
解ってるの?
土下座じゃ済まないのよ」
黎明のエオマイアが自分の体を使って、生き返らせたアバドンを説教していた。
「で……
でも私達だって
言いたい事はいっぱいあったんです
でも黎明様がどこに居るのか……」
アバドンは思い思いに言う。
既にアバドンとヴァンデルンが同じ姿な理由を、イマジンは黎明から聞いていた、もうイマジン的にはそれは気にしていなかった。
イマジンは、まだ続いてると思いながらロアに聞いた。
「ねえ?
セリアちゃんは?」
「もうシャルルの小屋に帰ってるわよ……
いつまで続くのかしらねあれ……」
ロアが疲れたように言う。
「長ければ千年くらいかな……」
イマジンが神の時間で例えて言う。
「ここでやらないで欲しいな……」
ロアが本心で言う、既に一週間も続いてるのだ、少ししてアバドンが玄関に来た、今日の説教が終わったようだ。
アバドンはひしっとロアに抱きついてきた、力も抑え込まれ、ただの魔物と変わらない状態のアバドンはただ聞くしかなく、つい三ヶ月まえに世界を追い込んだ者とは思えないほどである。
ロアは仕方なく、ぽんぽんとアバドンの頭を優しく撫でるように叩いた。
「イマジンっ!」
アバドンが次にイマジンに抱きついた。
「アバドン……
だから言ったじゃん
地上に手を出しちゃいけないって
怒られたってしかたないよ
私達が神様になっても
見る世界がなくなっちゃうじゃん」
イマジンが言う。
アバドンがそれを聞いてうんうんと頷いている、よほど懲りたようだ。
「黎明様
アバドンとセリアちゃんのところに
遊びに行っていい?」
イマジンが言う。
「いいわよ
じゃ少しだけ……」
黎明がそう言いアバドンに向けてスッと指をさした、そしてアバドンは力が湧き上がるのを感じた。
黎明がアバドンに力を少しだけ返したのだ、セリアと遊ぶ……ある意味ただでは済まないこともあるからだ。
「あ……
ありがとうございます……」
アバドンは黎明にお礼を言って、イマジンとシャルルの小屋に向かったのを見て、ヴァンデルンは、ふふっと笑っていた。
「って……まぁ……
そうだよね
セリアちゃんと遊ぶって……」
イマジンはセリアがどんな遊びをしてるのか、想像出来なかった。
それはついこの前、セリアが誘ったミルク勝負でイマジンは負けず嫌いを見せ、気合いで72杯飲み、ダウンしたがセリアは71杯で負けたのだ、その後二人は倒れ、気絶したままミルクを吐いていた。
その苦い出来事をイマジンは思い出し、吐き気を覚えた。
シャルルの森に入り、小屋までの道を歩いている時にイマジンは何故か不安を感じた。
そしてシャルルの小屋が見えてきて、イマジンが小屋に向かって手を振ると、セリアが飛び出してきた。
シャルルが小屋の中で微笑みながら、二人が結界を通れるようにする。
「アバちゃーーーーーーーーーーーんっ‼︎」
セリアが大きな声で叫びながらアバドンに飛びついた。
「ねぇちょっとまってよ
私が生き返らせて貰ったとき
あんなに泣いて謝ってくれたけど
あの涙はなんだったの?」
アバドンは仲良くしたいが、そのセリアの変わり身に驚いて聞いた。
「いいじゃんっ!
いいじゃんっ!
ヴァンデルンちゃん来てっ‼︎‼︎」
セリアが言った瞬間、ヴァンデルンが沢山の樽と一緒にシャルルの小屋の前に現れた。
「ちょっと
なにあの樽……」
シャルルはヴァンデルンが、何かを届けるのを知らなかったのだ。
「セリアちゃんっ!
ミルク300杯分届けたよっ!」
ヴァンデルンがイマジンとアバドンにとって意味不明なことを叫んだ、シャルルもそれを聞いて頭を抱えた……。
「イマちゃんっ!
今度は負けない……
今度は負けない……
今度は負けないよっ‼︎
ミルクで勝負だっ‼︎‼︎」
セリアがイマジンを見て大きな声で言った、イマジンは知らなかったセリアも負けず嫌いだったことを。
そしてアバドンは果てしなく、巻き込まれた感で溢れていた……、それはイマジンが挑まれれば退かない性格だと知っていたからだ。
「アバドン手伝って‼︎」
昔もアバドンはイマジンにそう言われたが、ろくなことが無かった、そして今回も、ろくなことにならないのが、目の前に……目に見えていて固まる。
シャルルはミルクの背後にアネモがいるのに気づいて、アネモの近くに行って聞いた。
「アネモも大変ね……
これ冷やしに来てるの?」
シャルルが言う。
「はい……
痛んじゃうし
ぬるいと美味しく
無いからって
セリアちゃんに」
アネモはセリアに頼まれてミルクを冷やしに来たのだ。
「そうね……
キンキンに冷やしてあげてね」
シャルルは鼻で笑いそう言い、アネモもシャルルの魔女の笑みに気付いて小さな笑みをこぼした。
そしてヴァンデルンとセリエが手伝い、不毛な戦いが始まる。
「なんで私までっ
うっうっ……」
アバドンがぶつぶつ言いながらミルクを一気に飲んでいく、そして気付いた、出るミルク出るミルクが凄まじくキンキンに冷やされている。
(これはまさか……)
アバドンは気付いてゆっくり飲み始めた。
セリアとイマジンはガツガツ飲み続け、既に25杯は飲んでいる。
セリアとイマジンは睨み合い、馬鹿になったように30杯目を飲んだ時それは来た……。
「うっ……」
セリアが声を出してお腹を押さえ、凄まじく冷えていることに気づいた。
「と……とい……」
セリアが立ち上がって家に入ろうとしたが、イマジンは既に居なかった。
「先にぃぃぃぃ
行かれたぁぁぁぁぁぁ……」
セリアは家に入れず倒れ込んで、お腹を押さえもがき苦しんでいた、アバドンはゆっくりミルクを飲んでいた、魔力でこっそりミルクを温めながら……。
「ばーか……」
アバドンはそう言いながら、ゆっくりとしていた。
セリアが悲痛な顔をして我慢の限界に近づいた時、ヴァンデルンがセリアの前に立ってセリアの手を取り二人は消えた。
そしてセリアはロアの家の前に連れてこられた。
「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
セリアはロアの家の扉が輝いて見え叫んだ、そして最後の力を振り絞りロアの家に飛び込んだ。
「ロアさんっ!
トイレかしてっ‼︎」
セリアが大きな声で言い、ロアの家のトイレに駆け込んだ……。
「何やってるの……」
ロアはよく解らずトイレの方を見て聞くが、中でセリアが腹痛と戦っている声しか聞こえなかった。
「ヴァンデルン何をしたの?」
ロアが聞く。
「私は注文通り届けただけですよ」
ヴァンデルンは困りながら言うが、嘘はついてなくイタズラした様子も全く無く、相変わらず善意の塊であった。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」
暫くしてセリアがトイレから出てきたが、顔は既にげっそりしていて、ロアは汗をかいて何も言えなかった。
「ロアさんありがとう……
ヴァンデルン……
行くよ……」
セリアがそう言いヴァンデルンがセリアをまた連れて行った。
セリアがついた頃にはアバドンが既に40杯飲んでいたが、アバドンは苦しそうでは無い、イマジンはセリアより早く戻ったのか42杯になっているが、凄まじく苦しそうであった。
セリアは苦しみながらも席についたが……。
「少し休んだら?
無理しすぎよ……」
セリエが言いそして三人はやっと休憩した、まだ200杯分近く残っている。
セリエとアネモにシャルルとヴァンデルンは家に入り、ゆっくりし始める。
「ねぇ……
知ってる?
私の幻想界で見つけたんだけど
私の知らない世界がありそうなの」
イマジンが言う。
「えっ……
知らない世界?」
セリアが聞いた。
「ちょっと待ってよ
イマジンが支配してる幻想界に
イマジンも知らない世界があるの?
それってエオマイア様も
知らないんじゃ無いの?」
アバドンが聞く。
「多分知らないと思う……」
イマジンが言う。
「どんな世界なんだろ……」
セリアが言った。
「ちょっと見てみる?」
イマジンが言う。
「見て見たいっ!」
セリアが言い、アバドンも気になっていた。
「じゃっ見てみよう!」
イマジンがそう言い、イマジンはセリアとアバドンを自らの魔力で包んで消えた。
「ここが幻想界?」
セリアが言った、すごくふわふわしている空にふわふわした感じの大地だが、足が取られる事はないのがとても不思議な感じがした。
「ようこそ
私の世界へ……」
イマジンが丁寧に言う。
「久しぶりに来たけど
相変わらずいい世界ね……」
アバドンがあたりを見回しながら言う。
「こっちよ」
イマジンが二人を誘う。
すると少し歩いていくと、急に硬い普通の地面になる。
「あれここ……」
セリアがふわふわの世界から急に地上見たいな世界になったのに不思議に思って言う。
「剣や色々と練習するのに
必要だからね」
イマジンが言う。
「イマジン……
様子がおかしくないか?」
アバドンが言う。
「あぁ……
最近みた事ない魔物が
そこから出てくるんだ……
この世界……
私達の世界の魔物じゃない奴らだ」
イマジンがそう言った時に、何体かの魔物に囲まれていた。
「アバドン……気をつけろ……」
イマジンがアバドンに聞いた。
「私よりセリアちゃんは?」
アバドンがそう言ったが。
「ほっとけばいいと思う」
イマジンが言う。
「え……ええっ‼︎」
アバドンが驚く。
「ちょっと待ちなさいよ
イマジンっ!
セリアちゃん
あれでも人間なのよっ‼︎」
アバドンが言う。
「その人間に負けた
私達はなんだっての?」
イマジンは静かに言った。
「およ?
およよ〜……
見たことない子だね」
セリアがそう言い前に出た、セリアは笑顔だがその魔物から強すぎる殺意を感じていた。
そして聖炎の槍を出して笑顔で言った。
「遊ぼっか?」
セリアがそう言った瞬間、正面の魔物に襲いかかった、巨大な猿のような魔物を一瞬で貫いたとき、他の魔物がセリアに襲いかかった。
セリアは素早く躱し聖炎の槍で、力一杯殴りかかった。
「ほらっ……」
魔物達を一掃するセリアを見てイマジンが余裕でいた。
「イマジン
あれのこと?」
アバドンが少し先にある岩から何かが漏れ出しているのに気付く。
「そうあれあれ
今は私の力で封印してるけど
変な六芒星があの岩をどかすと
あるの……
そこからこいつらが
次元を曲げて来るのよ……
だからこの辺りは結界を張ってるのよ」
その六芒星の向こうでは何者かが話していた。
「なんじゃこの仮面の様な印は……
妾も見たことがないのぉ……
なんにせよ黄泉の国に現れて良かった
地上に現れたら大ごとじゃぞ
カイナ?そっちは片付いたか?」
その者が言った。
「はい……
ムエルテ様……
こんな魔物……
見たことがありませんよ
トロルの様ですが
木の様な……」
カイナと言う者が魔物となった魔女を倒して言う。
「そやつ
元は人じゃなぁ……
だが我らの世界の魂では無い
まったく妾の黄泉来るとはな……」
そして仮面の印の向こうでは……。
「ふぅ……
いい運動になったね
とりあえずキミ達を
元の世界に返してあげるねっ」
セリアにボコボコにされた魔物はアバドンの魔力で縛り上げられていた、最初に貫かれた魔物も致命傷でなくまだ生きている。
「じゃっ行ってみようっ‼︎」
セリアはそう言って岩に近づく。
「待てセリアっ
やっぱりエオマイア様に
相談してからじゃないと危ないのでは?」
イマジンが止めようとセリアのローブを後ろから掴んだ時、六芒星が輝きその光に巻き込まれ、セリアとイマジンは六芒星に吸い込まれてしまった。
「まぁ……
この程度なら
妾にも消す事は出来る……
が……
何か来るぞっ‼︎」
ムエルテが強く言いカイナが身構えた時。
「うぁぁあわあわあわ‼︎‼︎」
セリアとイマジンが仮面の印から飛び出して来た……。
セリアとイマジンはムエルテの前飛び出し、無様に転倒しその上にセリア達が捕まえた魔物が降って来た。
「むぎゅっ‼︎」
イマジンは躱してセリアだけが潰された……。
「なんだこやつら……
今度は人が出て来たと思ったら
イエティまで連れて来たぞ……」
ムエルテが静かに言い、カイナがイエティを片付ける……。
(なんだこいつ
この力エオマイア様よりは……
だが神の気配……)
イマジンがムエルテの力に気付いて、剣を向けた。
(誰だ……
女神を目指した者で
こんな奴は知らない……)
イマジンが凄まじい殺気を放つ。
「言葉が解るなら
よすがよい妾の作った黄泉で
妾と同等に戦えるのは
最高神か絶対神しかおらぬ……
それとも……
試してみるかの?」
ムエルテが言った。
「世界を作った……
私だって世界を作れるっ‼︎」
イマジンが叫び、ムエルテに襲いかかった。
イマジンの剣が白い幻で包まれ、ムエルテを襲った、ムエルテが死神を思わせる骨の大鎌で受け止め、イマジンを素早く切り裂いた。
「えっ
イマちゃん……」
イマジンが切り裂かれたのをセリアが見て時が止まった感覚を覚えたが、すぐに怒りはおさまった。
「イマちゃん!」
セリアがイマジンを見た、その姿は全く傷ついていなかった。
「こいつやる……」
イマジンが言う。
「ほう……
素晴らしいのその力……
死の女神である妾の鎌を躱しおった」
ムエルテが言う。
「死の女神……
そんな女神私は知らないっ‼︎
私は幻想界を司る
イマジンっ‼︎‼︎
私の世界を侵そうと言うならっ!」
イマジンが叫び襲いかかった。
「?なんの話じゃっ!」
ムエルテはなんの話か解らず、イマジンの剣を避けながら聞く様に叫んだ。
イマジンの剣から凄まじい勢いで、何かが溢れ出した、セリアと戦った時の様にもやの様な光が溢れ出したが、それは銀色に輝いていた。
「そうだよっ
イマちゃん‼︎‼︎
憎しみじゃない気持ちを
いっぱい乗せるんだよっ‼︎‼︎」
セリアが元気に叫んだ時、何かが割って入ろうとした、黒い翼に槍を持っているカイナがムエルテに加勢しようとしたが、それを聖炎の槍が止めた。
「イマちゃんの邪魔はさせないよっ‼︎‼︎」
セリアがカイナに襲いかかった。
「なんだお前はっ
黄泉の国に来て何をしていると思ってるんだっ‼︎」
カイナが言う。
「イマちゃんが
おっきくなろうとしてる
邪魔はさせない」
セリアがそう言い天使の翼をだし、カイナの速さについていく、カイナとセリアは激しく槍をぶつけ合い、二人とも一歩も退かなかったが、カイナは右手だけでセリアの相手をしていたが、セリアが六枚の翼を出し襲いかかった。
「六枚の翼……」
カイナがセリアの翼と美しさに一瞬目を奪われ、セリアの槍で叩かれ地面に叩きつけられた。
「イマちゃんがんばれ‼︎‼︎」
セリアがイマジンを応援し始める。
ムエルテは鎌に死霊を乗せイマジンの剣を受け止め、押し返し素早く蹴り飛ばし、神の瞳でイマジンを見て気付き思わず言った。
「こやつ神ではないっ!
だがこの世界の
生半可な神より強いっ‼︎‼︎」
イマジンは素早くムエルテの首を斬り落とし、ムエルテの体を斬り裂いたが、斬り落とされたムエルテの顔が笑った。
「お前らぁぁぁぁっ‼︎」
カイナが叫び、骨の左腕を出し本気でセリアに襲いかかった。
「ちょっと待って!
死んでないじゃんっ‼︎‼︎」
セリアが思わず叫び、セラフィムの姿になり、カイナの槍を受け止めた。
「カイナ……
慌てるでない……」
切り落とされたムエルテの首が浮き上がりそう言った。
「えぇっ‼︎‼︎」
流石のセリアもビビってしまい、カイナの力で吹っ飛ばされた、イマジンもその姿に戸惑いを覚えた。
「妾は死そのものじゃ……
カイナ忘れた訳ではあるまい?」
そう言いながらムエルテは自らの体に繋がり、また立ち上がり、傷も綺麗に癒えていく。
「にしても
妾が首を落とされるとは
何万年ぶりかの……
そうさの古の更に古に
オディウムが落として以来かの……
すなわち其方は
古のオディウムに匹敵するのか……
見事じゃ褒めて遣わす……」
ムエルテがそう言いながら、瞳に死を宿しイマジンを見つめた。
「なっ‼︎」
イマジンは動けなくなった。
(これは……)
イマジンが感じたのは死である、だが何か違った、奪われる感覚であった、何かにもぎ取られる様な悍ましさを感じた。
「ダメだ……
自分を保てない……」
イマジンが金縛りにあったようであるが、呟いた。
「イマジンッ‼︎」
セリアが叫びムエルテに襲い掛かろうとしたが、それをカイナが止める。
「お前の相手はわたしだっ
散々暴れて何様のつもりだっ‼︎‼︎」
カイナがそう言い、セリアに食いついていく。
(強いけど……
パパより弱いっ‼︎)
セリアがそう心で言いメーゼルを思い出し翼を広げ、無数の羽をイマジンに向けて飛ばした。
「そんな技もあるのかっ‼︎」
カイナが大きな声で言った。
「友達だからっ助けるんだっ‼︎‼︎」
セリアが言い返す。
(ともだち……)
カイナはアヤのことが一瞬頭によぎった。
その羽はイマジンに当たると体に吸い込まれていく、セリアは命の羽をイマジン大量に送ったのだ。
(セリア……)
イマジンが心でセリアを思い、セリアの力の暖かさがイマジンの体の奥底から湧き上がって来た。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
イマジンが身体中から魔力を溢れさせムエルテの力に抵抗し始めた。
(やはりな……
こやつの命は幻に近い……
だが命である事に変わりないが
簡単に掴めぬ……)
ムエルテはそう思い、瞳に宿した死を静かに消した、するとイマジンの金縛りが解けてイマジンは地面に落ち気絶してしまう。
すぐにセリアはカイナを押し返し、蹴り飛ばしてイマジンに駆け寄った。
「油断した……
お前ただで済むと思うな‼︎」
カイナが叫び再び襲い掛かろうとした、いまカイナを見てくれているムエルテの首が一度でも落とされたのだ、カイナは怒りを込めて飛びかかろうとした。
「まてっ!
カイナっ‼︎‼︎」
ムエルテがカイナを止めた。
「ですが……
ムエルテ様……」
カイナが我慢しながら言ったが、ムエルテはセリア達の先、仮面の印の方を見ていた。
「えぇ……
待ってほしいわ」
ロアの声がした。
「待って貰えないなら
私が相手になるわよ」
ロアがそう言い、瞳を見開いた時、右目に赤い瞳孔が二つ、そして左目に青い瞳孔が二つあった。
黎明と混沌が一つになった、二人に分かれる前の、エオマイアの女神がロアの体に入って助けに来てくれたのだ。
(ところで……二人とも
なんで私の中に来たのよ……)
ロアが黎明と混沌に聞いた。
(それは……
ロアさんが一番セリアちゃんを
助けたいって思ってたから……)
黎明が言う。
(私はロアの体が一番使いやすいからだ)
混沌が言う。
ロアは一瞬で考えた、アバドンが慌ててロアの家に知らせに来た時、たまたま天界の仕事の事で、混沌のエオマイアが黎明と話す為にロアの家に来ていた。
そしてあの場に神以外はロアとヴァンデルンしか居なかった、戦うかも知れないと言う選択肢がある以上、自動的にロアになると……、ロアは顔をひくつかせながら一筋の汗を流す。
「ロアさん……」
セリアが呟いた。
「全く二人とも
なんで私に知らせなかったのよ
異界に勝手に行くなんて……
無茶しないでよ」
エオマイアの女神が言う。
(こやつは神じゃの……
しかもユリナと同じ
絶対神程の力があるの
厄介な相手じゃ……)
ムエルテはそう感じてカイナに言う。
「カイナよ
あの二人の姿を見て敵に見えるか?
妾がそやつの命に触れようとした時
そこの派手な天使が助けおった……
オディウムの配下なら
その様なことはすまい……」
ムエルテが言い。
セリアはなんのことだか解らないけど、うんうんと頷く。
「なんて言えばいいのかしら
とりあえず聞くけど
先に手を出したのはどっちかしら?」
エオマイアの女神がムエルテに聞いた。
「そこの
イマジンとやらじゃが
どうするのじゃ?」
ムエルテが言う。
「そうなのセリア?」
エオマイアの女神が聞く。
セリアは何か恐怖を覚えるが正直に頷いた。
「嘘はついてないわね……」
エオマイアの女神はそう言い、イマジンを左手の人差し指で指差した、するとイマジンを優しい光が包み込み、イマジンが目を覚ました。
(こやつ命を与えおった……
妾と同じ神か?
いや違うあの赤い瞳は破壊も好む……
ニヒルに近い力じゃ
命と無と言ったところか……
試すか……)
ムエルテはそう思ったが気付いた、今まであれだけ戦っても、セリアにもイマジンにも一度たりとも死相の印が現れなかった。
つまりどう闘おうが、二人とも死に近づかなかったと言うことだ。
ムエルテがそう考えた時の、エオマイアの女神がイマジンを連れ、一瞬で神の瞳でも映らない速さでムエルテの前に現れ、イマジンをムエルテの前に出して言った。
「イマジン謝りなさい……」
エオマイアの女神が声のトーンを低くし凄みを出して言う。
(今……
時を……止めたのか……
速さでは無い……)
ムエルテがそう感じたが、イマジンはエオマイアの声を聞いて土下座して謝った。
「申し訳ありませんっ!
勝手にこちらの世界に来たにも関わらず
剣を向けてしまい
本当に申し訳ありませんっ」
イマジンは本気で謝っている、ムエルテに悪いと思ってないが、黎明と混沌が一つになったエオマイアの女神の力は、普段分かれている黎明と混沌の比ではないことを、イマジンは知っていたのだ。
「死の女神様っ!
どうかお許しくださいっ‼︎‼︎」
イマジンは神の領域に手をかけた、今までの努力が無駄になるかも知れない、そう思い必死である。
(こやつ……
妾にはなんとも思っておらぬ……
それ程にこの女神が怖いのか……)
ムエルテはイマジンを見透かしていた。
(イマジン……
反省してないわね
それじゃ私がただの……
悪者みたいじゃない)
エオマイアの女神はそう思った。
(…………)
二人の女神はただ無言で、イマジンを見つめてこう思った。
(反省してないっ‼︎‼︎)
エオマイアはそう思い。
(こやつに反省と言う文字は無いのぉ
まぁ良い
騒ぎを聞いてあやつが来よった
許さねばうるさいかのぉ……)
ムエルテはそう思い言おうとした時。
「ムエルテ様なら
許してあげますよね?」
何者かがそうムエルテに声をかけた。
「遅かったのぉ……
ユリナ何をしておったのだ?」
ムエルテが言う。
(この人は強い神ね
ムエルテって神様も立派だし
この世界はなんて言うのかしら?)
エオマイアの女神はそう思っていた。
「ムエルテ様
許して下さいますよね?」
ユリナが言う。
「あぁそのつもりじゃ」
ムエルテが答えると、ユリナは指で円を描いてその円を見てうんうんと頷いている。
「なーにしてるの?
おねーさん!」
緊張のカケラも無い、セリアがその円を除き込んだ。
「ちょっとセリア!
失礼じゃないの
相手は私と同じ神様なのよ」
エオマイアが言う。
「いいのよ
どうせ見れない……」
ユリナが言った瞬間。
「わぁおっ‼︎
すっごいすっごい‼︎
イマちゃんカッコイイ‼︎‼︎」
セリアははしゃいで円を見ている。
「あなた見れるの?」
ユリナが聞いた。
「うん‼︎
私もカッコイイ‼︎」
セリアがはしゃぎまわる。
(この子……
時の力を持ってるのかしら)
ユリナがそう思って時を止めた。
ピタッとユリナ以外の全てが止まる。
「気のせい……
なわけ無いわよね……
だって時の鏡みれるんだもん」
そう言いユリナが時を動かした。
「ヒャッホーッ‼︎」
セリアは変わらずはしゃいでいる、ユリナはまた時を止める、セリアはまた止まる。
ユリナのイタズラ好きな面が顔を見せた。
ユリナがはしゃぐセリアを見て、細かく時を止めた、セリアは細かく止まる。
「ふーん面白いわね
えいっ」
ユリナがそう言い、時を止めたがセリアは止まらなかった。
「あれっ……
負けちゃった……」
セリアが呟く。
「負けちゃったって何に?」
ユリナが聞いた、ユリナは気付いていたセリアが気合いを入れてで自分で止まっていた事に。
「だるまさんがころんだ……」
セリアが呟いた。
「ふふっ面白い子ね」
ユリナが言う。
「ねえちょっと聞いていい?」
セリアが聞く。
「なぁに?
いい子だから教えてあげる」
ユリナが言う。
「なんでこの世界には
神様が沢山いるの?」
セリアが素朴な疑問をぶつけた。
「あなたの世界に
神様は沢山いないの?」
ユリナが聞いた。
「うん
エオマイアさんだけだよ……」
セリアは寂しそうに言った。
「大変なんじゃない?
それ……」
ユリナは自然と口をついた言葉を言い、指を鳴らして時を動かした。
「ねぇムエルテ様
世界を一人で見るってどう思う?」
ユリナが聞いた。
「うん?
悪いが断る……
妾は死と命だけで十分じゃ
妾には出来ぬ」
ムエルテはあっさり断った。
「なんの話をしてるの?」
ロアが聞いた。
「この世界には沢山の神様が
居るみたいなの
でも私達の世界は
エオマイアさんしか居ないじゃん
だからどうして?って」
セリアが聞いた。
「この世界にはね
沢山の命が輝いてるわ
それは
あなたの世界も同じだと思うの
でもね神様一人で出来ることって
限られてる気がするのよ
それはその神様の力に
よるかも知れない
でもね……」
ユリナがそう言い、過去を思い出しながら言った。
「私は解ったのよ
神様にも限界はある
どんなに強い神様だって
どんなに偉い神様だって
傲慢な態度をとっちゃいけないし
一人で出来ないことなんて
数えきれないくらいあるんだから」
ユリナはそう言いセリアを見た。
「たしかに……」
セリアはそう言い一生懸命に考えるが、エオマイアが一生懸命に何かをしているところを、見たことがないっと気付いた。
「エオマイア様……
最近なんかしてる?」
セリアが呟くように聞いた。
「そうね……
最近は占いの本にハマってるわね
あとアバドンのお説教
あとはセリアの噂を
集めたり……色々してるわね」
ロアが最近の黎明のエオマイアの行動を教えてくれる。
(たっ楽しんでるっ‼︎‼︎)
イマジンとカイナが思う。
(どうしようもない神じゃな……)
ムエルテは静かにそう思った。
(いいなぁ……
やりたいことやってる……)
ユリナはそう思っていた。
(おい……黎明……
私が天界で仕事してるのに
お前は何をしていたんだ?)
真面目な混沌が黎明にきいている。
「私の噂って……
なんの噂っ‼︎
わたし最近
何かやったぁぁぁ⁈⁈」
セリアが神のことより、噂に気を取られていた。
「まぁ……
色々ありそうね……
探せば……」
ロアが言う。
「探さなくても
色々巻き込んでやってる」
イマジンが今日のミルクを思い出して呟く。
「へ〜面白そうじゃない
やんちゃな子なのね……」
ユリナが言いながらロアに近づいた。
「うん?
セリアに何かようでも?」
ロアが聞く。
「ちょっとこの子
こっちの世界に貸してくれない?
あなたが神様よね?
ねぇいい?」
ユリナがエオマイアに話した。
「そうね
沢山の神様がいる世界……
楽しそうじゃない
お行儀勉とか強出来るんじゃない?
セリア遊んでくる?」
黎明がセリアに言った。
「いや〜帰る〜」
セリアがロアに言った。
「あら意外ね」
ロアが言う。
「だってみんなと一緒がいいっ!
だから帰る‼︎」
セリアがロアにしがみ付いて言う。
(ちょっと待ってよ
お行儀って私がまるで
捨てられるみたいじゃないっ!
そんなに私
悪いことした?迷惑かけた?
ミルク300杯分って
あれ私のお金で買ったし
みんなに迷惑かけてないよ
遊んでただけじゃない)
セリアはその他にも様々なことを考え、捨てられると思い、珍しくロアにしがみついて怯えていた、そしてセリアはエオマイアの海で独りぼっちになった時を思い出し、寂しさにも怯えていた。
(安心しなさい
私がそばにいてあげるから
嫌なら帰ればいいだけじゃない)
見るに見かねて、混沌のエオマイアがセリアの中に入って来てくれた、ずっとロアが混沌のエオマイアの体を使ってセリアを守っていたせいか、混沌のエオマイアはとてもセリアを気にしてくれていた。
(混沌しゃんっ!)
セリアは精神的にも混沌のエオマイアにしがみつく。
「まぁその様子じゃ無理そうね
でも気が向いたら
また遊びに来なさいね」
ユリナが微笑んで言う。
「ユリナがそう言うなら
良かろう……
じゃが
いきなり剣を向けるでないぞ」
ムエルテが言った。
「えぇそれは良く言っておきますね」
エオマイアがそう言い、イマジンを見たがその目が怪しく光っていた、その光を見てイマジンは気絶する。
「じゃぁ
私達はそろそろ帰りますね」
エオマイアがそう言った。
「えっ?
どうやって帰るの?」
セリアが聞いた。
(流石セリア
何も考えずに来たのね……)
ロアがそう感じため息をする。
「多分この印は
それぞれの世界のシンボルか
何かだと思うの
だから来た時と同じように
触れるだけで行き来出来るはずよ」
黎明がそう言った瞬間、セリアは仮面の印に飛びつき、一瞬で帰って行った、相当怖かったようだ。
「ふー……
帰って来れた……」
セリアが幻想界につき一安心していた。
次々とみんな帰って来たが……。
「へーここが
イマジンちゃんの世界なんだ」
何故かユリナが来たが様子を見て、エオマイアと何かを話し、セリアを見て手を振って笑顔で言ってくれた。
「また遊びに来てね
今度は地上を見に行こうねっ」
ユリナはそう言って帰って行った。
(やっぱりいい神様だよね?)
セリアはユリナの笑顔を見てそう思っていた。
一方その頃、シャルルの小屋では。
「セリアもイマジンもアバドンも
何処に行ったのよ……
このミルクどうすればいいのよ……」
シャルルが言う、シャルルとアネモはこの有り余ったミルクをどうすれば良いのか解らなかった。
シャルルは答えを出して言う。
「一週間……
クリームシチューか
グラタンかドリアね……
セリアに文句言わせないわっ‼︎」
その言葉には気合いが入っていた。
「わ……私もですよね……」
セリエも巻き込まれ、他にミルクを使ったメニューを考えていた。
「そうですね……
私も使い切るまで帰れなさそうです」
アネモが涙を流して呟いていた。