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女子高生が嫌いだ

作者: 鈴木美脳

(作り話です。)


 女子高生が嫌いだ。

 女子高生を可愛いと思っている人達が嫌いだ。

 女子高生を可愛いと思っている人達が存在する世界が嫌いだ。

 女子高生というブランドが嫌いだ。

 なぜ、高校に行けた特権階級の多数派にむしろ尊厳が伴うのか。


 ポルノビデオが嫌いだ。

 ポルノビデオのコーナーがある近所のレンタルビデオ店が嫌いだ。

 レンタルビデオ店が全国にあるこの国が嫌いだ。

 ポルノビデオの存在を許している法律が嫌いだ。

 ポルノビデオの存在を許している法律を肯定している国民が嫌いだ。


 性風俗店が嫌いだ。

 金銭で女にサービスを求める男達が嫌いだ。

 金銭のために男達に応じる女達が嫌いだ。

 売春を事実上合法化している法律が嫌いだ。

 売春を事実上合法化している政府を肯定している国民が嫌いだ。

 売春が世界中に存在する人間の世界が嫌いだ。


 漫画やアニメに登場する女性キャラクターが嫌いだ。

 女の肉体を強調して描く男性作家が嫌いだ。

 女の肉体を強調して描く女性作家が嫌いだ。

 女の肉体的な価値を規範的な記号に落とし込んでいく大衆が嫌いだ。

 時代の最先端を行く記号である洗練されたうまい絵が嫌いだ。


 小説が嫌いだ。

 古典的名作と言われるものすら、大衆娯楽としての扇情的側面があるから嫌いだ。

 消費者の欲望と作者の妄想によって性が非現実的に記号化されているのが嫌いだ。


 女の価値を女としての価値で測る世界が嫌いだ。

 女に女らしい身だしなみを求める社会が嫌いだ。

 女らしい服装が嫌いだ。

 女らしい化粧が嫌いだ。

 女らしい髪型が嫌いだ。

 妻でもない女達の短いスカートを眺めて喜ぶ男達が嫌いだ。

 夫でもない男達に短いスカートを見せて競う女達が嫌いだ。

 繁殖に適した若い女として売り物を陳列棚に飾る演出が嫌いだ。

 ありふれた記号を演じることを強いてくる社会が嫌いだ。

 自我を殺そうとしてくるこの世界が嫌いだ。

 私は、私として生まれ、私として生きのびたがっている。


 学校の勉強が嫌いだ。

 学校の勉強を知性だと思っている馬鹿達が嫌いだ。

 馬鹿しかいないあの学校が嫌いだ。

 馬鹿しかいないこの世界が嫌いだ。


 頭のおかしい両親に怯えるトラウマで人に恐怖しか感じられず。

 小学校や中学校では友達も作れず、勉強になんて集中できず。

 家の事情で高校も行けず。

 辛い現実に心は麻痺して、存在として死に隣接していて。

 どんな将来、どんな希望がありえるだろうか。

 見いだせない希望を探して、頭はぐるぐる眠れないよ。


 既存社会の常識的な価値観は、どれも間違っていると思う。

 愛と正義によって発展することなく、利己心と蔑みによって足を引っ張り合っている。

 頭の悪い自尊心から来る間違った価値観で築かれた多数派の権威主義体制。

 義のない経済と技術的な軍事力の論理で定義されている国際関係。

 物事を見通す目が私にはあるのに、それは私を不幸にしか導かない。

 崩れていく世界を傍観することしか許されていない。


 少し奇抜な髪型をしてみる。

 少し奇抜な服装をしてみる。

 自分をわかってくれる誰かとの繋がりを願望している。

 でも自分の外見に価値が認められるとすればきっとせいぜい女としての価値であって。

 繋がりを築けるとしても寄ってくるのは性欲しかないゴミだけだろう。

 だから、田舎町を出歩いたって意味はない。


 暗い部屋。

 スマートフォン、インターネット。

 文字を追う。世界を眺める。

 何もない。つまらない。何も面白くない。

 時間だけが流れていく。

 時間だけが流れていくことに、いつも底なしの恐怖を感じてる。


 私が悪かったのだろうか。

 私はただ、自宅の前を通学する高校生達みたく、笑顔で時間を過ごしたかっただけなのに。

 気違いの子供に生まれて全身はトラウマだらけ。

 現実を直視するのは怖すぎるけど、空想に夢を見ることもできなくなってく。

 涙、流れ落ちる、世界の悲しさ。


 若く純粋な、心の悩み。

 でもそんな子、日本中に、世界中に、たくさんいるでしょう。

 純粋な男の子も女の子も、みんな孤独に苦しんでいる。

 だから、どんなみじめに朽ち果てても、一人じゃない。

 最後に残る、唯一の希望。


 健康で裕福で地位があって悩みの少ない人よりも。

 深い悲しみを知る人のほうがきっと綺麗だ。

 本当に美しい花は、派手じゃない。有名でもない。

 でも実在して、心の中まで愛と正義で彩られている。

 真に純粋で、真に可愛い。


 本当に優秀な人々は自分達が優秀だとよく知っている。

 本当に美しい花は自分こそ最も美しいとよく知っている。

 正しい価値観は、世俗的な価値観とあまりに遠く隔たっている。

 汚いものが美しいものをよごすことはできない。

 だからいつかはきっと、幸せになる。そう信じて。


 明日のため今日を生きのびる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 厭世的なように見えて希望を抱き締めているような文章が素敵です。小説というよりは詩のようですね。 [気になる点] 身近なものの否定からより大きなものの否定という流れを狙っていたのであれば、間…
[一言]  女子高生、途中からどっか行っちゃったね。  別に女子高生の話ではなかったですね。
2021/01/16 19:58 退会済み
管理
[良い点] 深いですね。哲学っぽいです。 実は私、軽薄っぽい小説を書いてます。すみません。 読む方は、重い、暗い、哲学っぽいものが好みです。 魔法、転生、勇者など現実離れ小説は苦手です。 美脳さんの作…
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