27話 きっかけ
作戦会議から六日後
私はまたあのカフェに来ていた
明日の夜から総出で犯人探しが始まる。
これでやっとこの不快な事件が終われる
そう思うとなんだか気持ちが楽になるような、それかあんな犯行を繰り返す犯人と対峙することに
対する不安感かなんだかよくわからない気持ちになる。
ただただ胸がざわついて仕方がないのだ
そんな私の不安とは裏腹にいつもの元気な声が聞こえてくる
「お待たせいたしました!チョコレートパフェです!」
「ありがとう!」
アリスちゃんの満面の笑み込々で運ばれてくる
チョコレートパフェはより一層輝いて見える。
「リナさん!また難しそうな顔してましたよ、例の事件のこと、まだ考えてるんですか?」
「げっ!また顔に出てた?」
「出てましたよ、リナさんそんなにあの事件が気になるんですか?」
「いや!別に違うよ!」
私はとっさに嘘をついてしまった
別に警察関係者でも何でもないのに一つの事件を考え込む一般人
そんな人いないからだと思ったから、それにこんな美少女と盛り上がる話題にしては物騒すぎる
ただアリスちゃんはそんなウソお見通しといわんばかりに話を続ける
「い~や、嘘ですね」
私の隣に座り込みにやっと笑って見せるアリスちゃん
「い、いいの?お仕事中じゃないの?」
私は思わず言葉がどもってしまう
「大丈夫ですよ、今の時間どうせお客さんなんていないんだから」
そう店内見渡して答えて見せた
バイトとは言えそんなこと言っていいのだろうか
「それより今度は何に引っかかっているんですか?というかリナさんって警察とかそういう人なんですか?」
それよりも事件のことが気になるといった様子だ、アリスちゃんから口早に質問が飛んでくる
どうしてこんなにもこの事件が気になるのだろうか?
「だから別に事件のことはもう考えてないってば、それに私は警察の人でもないよ」
私はそう答えてとりあえず話を変えようと試みる
「それよりもこのパフェなんか変わった?すごくおいしくなった気がする」
ありきたりすぎる話の替え方だが私の思いつく限りの最善がこれだったのだから仕方がない。
「本当ですか!ありがとうございます、でも別に何も変わってないと思いますよ」
私の最善がまるで歯が立たなかったようだ
「まぁ、リナさんが気にする理由もわかります、また事件起きちゃいましたもんね」
話を変える気はないと言わんばかりにまくし立ててくる、彼女もそれなりにこの事件に
何か思うことがあるのだろうか?
きっと彼女が言っているのはこの前の私が遭遇したあのことだろう
もうニュースにも流れているから彼女が知ってて当然だ。
仕方がない、彼女の納得いくまでこの話に付き合うしかないだろう
「わかったよ、まだあの事件のことを考えててね」
私は観念したように煙草に火をつけて話す
「実はこう見えて私はフリーランスの記者をしててね」
とりあえず事件のことを話すからにはそれなりの体裁を整えておかないとまずいと思い
自分は記者ということにしておいた。
「そうだったんですか?全然わかりませんでした」
そりゃそうだ、記者じゃないんだもん私、心が痛みつつも
この話をどうしてもしたいのはアリスちゃんのほうだし仕方がないと自分に言い聞かせた
「この事件になんか引っかかってるんだよねぇ」
とりあえず適当に話を終わらせるしかない、ましてやこういうのと対峙して生計を立てていますとは
言えない
もはや自分でも頓珍漢なことを言っているとしか思えない
「う~んと犯人の感情とかですか?どうしてこんなにグロテスクな殺し方をするのかとか」
「犯人の感情ねぇ、でもそれだけでこれだけするのもおかしくない?それに少女ばかり」
「おかしくないと思います。」
そう彼女はグッと私に顔を近づけてそう言った
「いやでもさぁーー
私はすこし怖くなって後ろに下がりながら反論しようとしたがすぐに遮られた
「例えばリナさんに壮絶な幼少期があったとして、ごくごく普通の一般家庭それも幸せそうな、
そんな家族を見てうらやましいとか、自分はなぜああじゃないかと、憎いと思いません?
ましてや自分を捨てた親がのうのうとどこかで生きてると思ったら、それこそ殺してやりたいと思いますけどね。」
こんなにもまくし立てられるとは、この子なりにも思うところがあったのだろうか?
「そんな過去があったのなら私も確かにそう思ってしまうかもしれない、でもね
人を殺した後も平然と生活できるのは人じゃない、それこそ化け物だよ」
私がこんなことを言ってはいけないことはわかっているでも
目の前の少女が殺人鬼寄りの意見を持っているのはいただけない。
この人もわかってくれない
ぼそっとアリスちゃんがつぶやく
私にはどういう意味かさっぱりだ
「ところでリナさん、少女ばかりって言ってませんでした?」
「あれっ?そんなこと言ったかな?」
やばい口を滑らせたかもしれない、ニュースで被害者家族の説明はされているけど
そこまで断定的ではなかったはずだ、よくもそんなことに気づくなこの子は
彼女に怪しまれてしまったかもしれない...
怪しまれる?アリスちゃんを無意識に警戒してしまっているのだろうか?
「えっと、記者だからそういう、、、ね?」
「あぁ~そうなんですね、確かに、ほかに何かニュースになってないこと知ってたりするんですか?」
「いやーどうだろうね」
ははと笑って彼女の質問攻めをいなす
とにかくなんだか落ち着かない、私は店を出ようと席を立つ
「ごめんねアリスちゃん、そろそろ行かなきゃ」
「もう行っちゃうんですか?そういえばリナさんってどこら辺住んでるんですか?」
「えっと街外れかな」
店から早く出たくて口早に彼女の質問に答える」
「そうなんですね、最近物騒ですから気をつけてくださいね」
「ありがとう」
私は奇妙な焦りというか不安感をぬぐえないまま帰路についた
「ただいま」
「おかえり~!リナ」
玄関を開けると元気よくサリィが出迎えてくれた
いつもと違うのはパジャマ姿ではなくしっかり余所行きの服を着ている点だ
今夜は見回りに行くというのをしっかりと覚えておいてくれたらしい。
どうやら、まだカイが帰ってきていないらしい
「サリィ、ミナミまだカイは帰ってないんですか?」
二人が顔を見合わせて頷き
「まだ帰ってきてないよ」
そういうサリィに続いて
「自分から言い出しといて何なのよ!」
とミナミが悪態をつく
ミナミをなだめつつ私も夜回りの準備を始めたのだった




