22話 厄介ごと
さて、買い物前にどこかでお茶でもして行こうか
私はそう思い最近行きつけのカフェに行くことにした
つい先日オープンしたばかりで、おしゃれな外観にひかれて一度入って以来、お気に入りになってしまった。
私にとってカフェは雰囲気がすべてだ、何ならコーヒーなんてどれもあんま味変わらなくね?
とすら思ってしまっている、だからカフェに漂う空気感、居心地の良さとでも言うべきだろうか?
このカフェのそんなところに惹かれている
なにせ午後は始まったばかりだ、家事は済ませたしサリィとミナミはお昼寝中
カイは何やら次の仕事で電話に忙しそうだった
また依頼が舞い込んでくれば、その一件を片付けるまで休日など存在しないのだから
「はぁ、次はあんな大けがせずに済めばいいけど...」
仕方がないとは言え毎度この仕事には命を懸けさせられる、それで金をもらって生きているのだから文句は言えないが学生時代だらだらバイトして給料日に、はした金をもらってた頃には気づけないな、金を稼ぐということがこんなにも大変だとはね
「金は命より重い、ねぇ」
こんなにもこの言葉に実感がわく日が来るとは思いもしなかった
そんなこんなで少しどんよりとしていた私の気持ちを晴らすような声が聞こえてきた
「お待たせいたしました!」
「うわ~おいしそう!」
「毎回、そう言ってますよね」
「そうかな?」
私はそう言い運ばれてきたこの店おすすめのクリームたっぷりに蜂蜜の掛けられた
パンケーキを頬張り、味を堪能しつつ、コーヒーで流し込むこの最高に甘ったるいパンケーキの後に
来るコーヒーとの組み合わせが何とも言えない味わい感じさせる。
そして何より、私の栄えあるお気に入りとしてこのカフェが選ばれた大きな要因が
この店員、アリスちゃんだ
「あぁ!最高においしいよ」
「もぉ~リナさん、それもいつも言ってますよ」
フフッと口に手を添えて笑う彼女は何とも可愛いらしい
「そうそう、前言ってた大学のレポート大丈夫だったの?」
「ぎりぎりにでしたけどバッチリです!」
と彼女は自慢気に親指を立てた
「よかったぁ、わからないことがあったらおねぇさんに聞いてよー!まぁ、私は中退したんだけどね」
彼女が嬉しそうにしていると私もうれしくなってしまう、ついでに余計なことまで言ってしまうまでに、
彼女の笑顔にはそんな力があると思っている
時間帯とオープンしたばかりの知名度の低さも相まって彼女の事を独り占めにし、ある程度の談笑を済ませ私は店を出ることにした。
「お仕事中なのにごめんね」
「いえいえ、お客さんもまだあんまりいませんから」
「そんなこと言っちゃってぇ、またくるね!」
ありがとうございましたとアリスちゃんに笑顔で送られ、店を後にした。
なんか私、アリスちゃんにおっさんみたいな絡み方してないか?大丈夫か?少々不安になりつつも
私だけカフェで贅沢するのもなんなので家のちびっこどもに何か買い物ついでにスイーツでも買ってあげようかそう私は思った。
「ただいま帰りましたよー」
家の玄関を開け中に入る、いろいろと寄り道をしていたらすっかり夜になってしまった
「おかえりー」
サリィの元気な声が聞こえる
「今日は二人にお土産があります、駅前の人気なシュークリームで・・・えぇ!」
ミナミとサリィがカイと一緒におとなしくソファに座ってニュースを見てる
こんなことがあり得るなんて
「どうしたんですか?二人とも、いきなりニュースなんて見て」
ミナミとサリィにシュークリームを渡しつつ質問する
「カイが次の仕事に必要なことだってよ」
ミナミがぶっきらぼうに答える、おそらく見たい番組をニュースのせいで見させてもらえないんだろう
それに次の仕事で必要な事?一体どういうことだ?
「カイ、次の仕事って何なんですか?」
冷蔵庫に買った物をしまいながらソファに座るカイに質問する
「これだ」
短くそうカイが言ってテレビを指さした
ちょうどタイミングよく流れてきたのは連日世間をにぎわせている連続一家惨殺事件の事だ
「次の仕事がこれですか?」
だが話がよく見えない、この件に私たちが介入する余地があるように思えないからだ
前にカイが言っていた通りなら頭のいかれた一般人の犯行のはずだ
仮にそうならこれは警察の役目であり私たちの出る幕じゃないし、誰が大金はたいて私たちのような存在に始末を願うのだろうか?警察が無料でやってくれるのに
「どういうことですか?」
カイに立て続けに質問する
「カナメのやつが面倒な仕事を拾ってきたんだ」
と面倒くさそうに煙草を吹かす
そのままかくかくしかじかとカイから説明を聞いた
「なるほど」
タバコに火をつけ一呼吸入れる
用はこの件の被害者遺族からの仇討ちらしい、一向に犯人は捕まらず被害者は増えるばかり
そして増え続ける被害者遺族たちが金を出し合った、そしてカナメさんは金に目がくらんだと
この仕事が完了されないと仕事のオフィサーとしてカナメさんには一銭の金も入ってこない
そしてこの増え続ける大金を逃す手はないとでもそれは私たちにとってもうまい話のはずだ、本当にただの人間なら今までみたいに超次元バトルとはならずに済むからだ
「簡単そうじゃないですか?」
そうカイに思ったままのことを告げた
「話はまだ終わってない」
はぁ、とため息か煙を吐いただけなのかわからないが続く話が厄介そうだというのは
今のカイの顔を見ればわかる
「これを見てみろ」
カイから数枚の写真を見せられる
「うわ、なんですかこれ」
写真に写っていたのは顔が破裂したかのような死体の写真だ
顔だけじゃない破裂していなくともボコボコっと腹や手足、体中が煮立ったような
そんないかにもグロテスクな写真だった
「うげーこんな死に方絶対いや!」
サリィが舌をべぇッと出して言う
「人の死に方とは思えないわね」
ミナミもいかにも最悪って感じの表情だ
「これは恐らくただの人間の犯行じゃない、能力者だ」
そうカイが言い切った
そんなぁ、またか、今までの仕事の記憶が蘇る、銃が効かない木偶の棒や
奇妙な能力を持った刀使いの少女、そして今度はむごい殺しを平然と繰り返す変態ときたもんだ
「またですか、、、」
「またというべきか当然というべきかだな」
カイが厄介だなとそんな感じに言い放つ
なんだ?前は一般人の線が硬い的なこと言ってたくせに
カイが続ける
「能力者の能力は根本的に戦闘でしか役に立たない場面が多い、私の能力に然り、サリィの能力に然りだ」
そういえばそうかもしれない、カイの空気を固められる能力も空気の湿度や気温によって左右されがちだ
これを普通の仕事で生かそうとすればどう使えばいいのだろうか?そういう能力だからこの仕事ねと割りてられても(そもそもそんな仕事あるのか知らないが)今日はそういう空気じゃないんで無理です、帰りますとでも言うのだろうか、サリィの能力も然りだ、私たちの能力は万能じゃないしそこまで便利じゃない
「だから、こういう仕事にたどり着くのは変人ばかりだ、表の仕事では上手くやっていけるだけの人間性がない、かと言って自分に自信がないような奴らでもない、変に自分はできるって信じ込んでるそういう厄介な連中がな」
自分は人とは違う特別な力あると気づいてしまったらそう自分は強いと過信してこの世界に足を踏み入れるものもそりゃいるだろうし無理のない話だ
それはそれとしてこの話はカイ自身にも当てはまるのではないか?自分で言って大丈夫か?
そんな気持ちがよぎりつつも
あの写真を見ながらおいしそうにシュークリームを頬張る二人を見て変人しかいないという点については納得した
「それにこの仕事の厄介なことは相手が能力者って点だけじゃない」
カイが説明を再開する
「というとなんです?」
まだあるのか、相手が能力者ってだけでもうおなかいっぱいだ
「まだ何処の誰が標的かわかってない」
「つまり?」
「この事件の犯人捜しからしなければならないということだ」
頭を抱えてカナメのやつと小声でつぶやく
マジか、いや驚くのはおかしいのかもしれない
犯人がわかっていれば今頃警察の御用になっているに違いない
つまり今回はそれだけ長丁場になるということかもしれない
というかカナメさんも情報屋なら表に出回ってないとっておきの情報とか持っているのが映画とかのセオリーでしょ、本当に厄介な件だ、私が数分前に簡単そうだと言った時のカイの顔今なら理解できる
とは言え文句ばかりは言ってられない、ド派手な仕事続きで弾薬代や新しく購入した私の拳銃に
最近、カイが私の治りたてほやほやの体を気遣ってか、仕事もほぼなかったので懐事情も若干寂しい
そのうえ私含めみんな普段通りの生活を続けており節制などしていない
かくして私たちはこのありがたい依頼達成のために仕事に取り掛かることになった




