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92話 街へ行く必要がありそうでした!

 もうすぐで夜中というころ、俺はフェンデル村の南にいた。


「よしよし、こんなものでいいかな?」


 俺の言葉にミノタウロスたちは何も答えず、ただ呆然と立ち尽くしていた。


 フェンデルの少し南。そこにあった土剥き出しの土地に、俺は新たな住宅地を築いた。


 村からまっすぐ南へ伸びた道、その道沿いに石造りの建物が建っている。

 ミノタウロスが住むので、高さも広さも人の家の倍にした。


 ミノタウロスの長ベルドスは、きょろきょろと周囲を見渡すと口を開く。


「エルフたちの住処を一瞬で作ったという話……嘘ではなかったようだな」

「一瞬、というわけじゃないけどな。二時間はかかっているし。それに村の皆が石材を集めてくれたから、ここまでやれたんだ」

「……いずれにせよ、お前と村の皆には恩を返さなければ」

「気にするな。困ったときはお互い様だ」

「しかし、食事までもらった。お前が一人働いてるところ、オレは……何か、我らにできることはないか?」

「それなら、明日イリアが皆を集めて今後のことを話し合うらしい。そこで狩や農作業の役割分担をしよう」


 ベルドスはそれでは気が済まないという顔をしたが、とりあえずは頷いた。


 そんな時だった。

 こちらに向かって土埃を上げ、向かってくる者たちが。


「メッメー!! 新入りの牛ってのはどこのどいつっすか!?」

「セレス!」


 やってきたのはモープと、その長のセレスだった。


「あ、いたっす!! お前たちがミノちゃんとかいうやつらっすね!」

「ベルドスだ」


 目の前に現れたセレスに、ベルドスは淡々と答えた。


 一方でセレスは興奮気味だ。


「ベルちゃんっすね! ベルちゃん! ここの草について、話にきたっす!」

「草?」

「そうっす! 牛は俺たちの天敵っすから! 草を横取りしてくるっす!」

「我らは草は食べない」

「メッメー!? あんな美味しいのに、食べないっすか!?」


 狼狽えるセレスたちに、俺は言う。


「ミノタウロスはミノタウロスだ。牛じゃない。そういえば、ベルドスたちは何を食べてたんだ?」

「オレたちか? オレたちはキノコと苔、子には乳を飲ませる」

「なるほど。地下だもんな……」


 イリアから聞いた話だと、ミノタウロスたちはフェンデル村で出された魚や肉を食べようとしなかったらしい。ほとんどが、木の実や山菜、キノコなどを食べたという。

 

 ベルドスは道端に生える草を見て呟く。


「草か……食べてみるか」

「メッメー! 駄目っす! 草は俺たちのっす!」

「まあまあ、セレス。ちょうど、牧草地に関して少し話をしたいと思ったところだ」


 俺はセレスをなだめるように言った。


「このままのペースでセレスたちが草を食べると……一か月もしない内に、フェンデル周辺の草はなくなるだろう」

「メッメー!? 本当っすか!?」

「ああ。だから他の農作物を育てる必要があるが……まだ育つのに時間がかかりそうだ」


 そこで、と俺は続ける。


「人間の街に、干し草を買いに行こうと思う」

「干し草っすか……」


 セレスは少し寂しそうに言った。


 新鮮な牧草と干し草ではやはり味が違うのだろう。

 干し草は通常、牧草の少ない冬季のために飼料として用意しておくものだ。


 しかしセレスは首をぶんぶんと振った。


「魔王軍にいたころは、毎日そればっかりだったす。でも、最近は新鮮な牧草を好きなだけ……そのせいかもしれないんっすが……」


 セレスはぶるぶると体を震わせた。


 すると脂肪のせいか、体が波のように揺れる。


「ちょっとダイエットするっす。正直、牧草ばかりで飽きてたっすから」

「ありがとう、セレス。でも、好みもあるだろう。干し草を買う時はついてきてくれ」

「もちろんっす!」


 俺はセレスに頷くとこう続ける。


「まあ、欲しいのは干し草だけじゃないんだ。他の食料だったり作物の種だったり。明日の会議で、皆に話すつもりだった」

「メッメー! なら今から、皆と話して欲しい物を決めておくっす!」


 セレスはそう言って、モープたちの群に帰っていった。


「忙しい奴だな……よし、とりあえず今日はもう遅いし、ベルドスたちも休むと良い」

「うむ、そうさせてもらおう。だが、その前に、水桶を借りてもいいか?」

「水桶?」

「ああ。近くに川もあるし、そこの水を汲んで体を洗いたい」

「そういうことか。なら、温泉なんてどうだ? 流れもないし、水が怖くても大丈夫だぞ」

「温泉?」

「暖かいお湯だ。なんなら、今から皆で行こう。俺も一日の疲れを取りたいと思っていたところだ」

「よくわからないが……体を洗えるなら」

「決まりだ」


 こうして俺たちは温泉で一日の疲れを癒すのだった。

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