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8話 ☆ロイグ、後悔する!

 ヨシュアが去って五日が経ったシュバルブルク。


「ヨシュアめ、意見しなければ、少しは給料を上げたものを……ヴィリアン、生産局のほうはどうなっている?」


 居城の執務室で、ロイグは側近のヴィリアンに訊ねた。


「我が故郷、ベルソス王国の王都から最も優秀な生産魔法師を呼んできております! ヨシュアなど話にならないほど、優れております!」

「そうか。ヨシュア以上に働いてもらうとしよう」


 しかしそのとき、執務室に怒鳴り声を上げ、入ってくる者が。


「ふざけるな、ヴィリアン殿! 話が違うじゃないか!? こんな安月給なんて聞いてないぞ!」


 入ってきたのは、ヴィリアンが王都から招いた生産魔法師だった。


「き、給料はその……初任給ということで……後々もちろん増えますよ! ね、団長?」


 ヴィリアンはなんとか誤魔化そうとしたが、生産魔法師は更に語気を強める。


「だいたい一日で武器を何かしら百ずつ、矢を千本、ポーション千個作れだって!? 加えて次々に、車輪だの、建材だの大工道具だの作れって依頼がきやがる。あげくには、城壁の修繕ときた! ……こんなの、俺が百人いたって、無理だ!」


 その言葉に、ロイグは声を荒げた。


「はっ!? そんなこともできないのか!? 一分で一本の剣、一秒で一本の矢を作ればいいんだよ!」

「あんた、どうかしてるぜ! 一分で一本の剣? 俺が知ってる最も優れた生産魔法師だって、剣一本作るのに一時間はかかる!! まさか、シュバルツ騎士団がこんな狂ったやつらの集団だとは思わなかった!」


 生産魔法師は「やめる!」と怒鳴ると、執務室の扉を強く閉めた。


 ロイグは顔を真っ赤にし、ヴィリアンを睨んだ。


「どういうことだ!? あんな無能を呼んでくるなんて!」

「も、申し訳ございません! ただ、王都では一、二位を争う優秀な生産魔法師として有名だったのですが……」

「お前は騙されたんだ! ああ、むかつく! もっと優秀なやつらを呼んで来い! ちゃんと、剣を一分で一本作れるやつを!!」

「は、ははあ!」


 その後、ヴィリアンや側近たちは、自分の故国から生産魔法師を連れてこようとした。


 だが、誰一人、ロイグと騎士団の需要を満たせるような生産魔法師は現れなかった。


「だ、団長……どうもヨシュアの腕だけは、相当なものだったようで……生産魔法師としては別格の者だったようです」


 ヴィリアンの震える声に、ロイグは顔を曇らせた。


 ヨシュアが有能だった……

 心の中では認めたくないと思いつつも、現実がそれを証明していた。


 高給を約束し募集したのにも(かかわ)らず、誰一人ヨシュアの代わりになるような男は現れなかったのだ。

 面接に訪れ、作業量を聞いた生産魔法師の誰もが、そんなの有り得ないと口にして帰ってしまった。


 ここにきて、ロイグは初めてヨシュアの真の実力に気が付く。


 しかし、ロイグにもプライドがあった。

 今更戻って来いとは言えなかったのだ。


「……仕方ない。これから武器や道具は、金を払って買うとしよう。ちっ、こんなことに金を使うことになるなんて」

「……かしこまりました。良い商人を知っておりますので紹介いたします」


 ヴィリアンは満面の笑顔で頷くのだった。


 こうしてシュバルツ騎士団は、装備や消耗品を外注することになった。


 だが、買っても買っても、ヨシュアの生産する量には追い付かなかった。


 そればかりかヴィリアンら側近が紹介する商人は悪徳業者ばかりで、高価かつ質の悪い装備を騎士団は買わされる羽目になる。


 ロイグの浪費癖はそれでも収まらなかった。連日、自分の豪邸で盛大なパーティーを開くことに勤しんだ。


 また、故国の商人を儲けさせたいヴィリアンや側近が、財務局の警告を握りつぶしていた。


 やがて騎士団の財政は、支出が収入を遥かに上回り、あっという間に資金が底を突くのだった──

読者の皆様へ。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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