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66話 強力な兵器を作成しました!

 ドワーフを助けてから三日後の昼。

 俺は村にアスハを呼びだした。


「……こんにちは、ヨシュア様」


 天狗のアスハは、ぼそりと言った。


「やあ、アスハ。急に呼びだしてごめん」


 俺が答えると、アスハはぶんぶんと首を横に振る。


「ヨシュア様にはいつもお世話になってますから……私もお役に立ちたいです。それで御用というのは」

「ああ、それなんだが……天狗族で一番動きが素早い者を呼んでくれと言ったと思うが、アスハが一番速いのか?」

「はい。一族の中では、私が一番です」


 小さな声でだが、アスハは堂々と言い放った。


 族長ともなれば何かしら部族の他の者より優れてそうではある。以前も見たが、確かにアスハの飛行は速かった。


「そうか。そんな君にお願いしたいことがあってね……だが、とても危険なことだ」

「なんでも仰ってください」


 アスハは即答した。


「本当にいいのか? ……まあ、どう危険なのかも一応説明するから、ちょっと聞いていてくれ」


 そう言って俺は、魔法工房から赤い魔石を出した。


「これは……以前倒した竜の」


 アスハの言う通り、この魔石は天狗の村を襲った竜のアンデッドが落とした魔石だ。

 赤色の魔石は火炎魔法の効果が増大したり、上達しやすくなる。


「ああ。もし、魔王軍や人間の大軍勢が押し寄せたとき……この魔石は大いに役立つはずだ」


 俺は魔石を手にしながら、火魔法ファイアを誰もいない空へと放った。


 赤く燃える炎は全く勢いを失うことなく、まっすぐ、どこまでも高く伸びていく。


 正直言うと、俺も意外だった。低位魔法のファイアがここまでの火炎を出せるとはと。しかも、やろうとすれば炎を極大にできそうだ。


 魔石はとても綺麗な赤色で、しかも大きい。


 一旦炎魔法を止めると、そこにイリアとメッテが驚いた様子でやってくる。


 イリアは心配そうに訊ねてきた。


「ヨシュア様! い、今のは……」

「ああ、俺も驚いたよ。この赤い魔石のおかげらしい」

「と、とんでもない石だな……また竜が現れたと思ったぞ」


 メッテは石を見て、目を丸くした。


 一方で、アスハとメルクはぱちぱちと拍手している。


 エクレシアのほうは……遠くでがくがく震えながらこちらを見ている。エントは火が苦手だしちょっと怖がらせてしまったかもしれない。


 そんなエクレシアに頭を下げて、俺は続けた。


「ともかく、これがあれば強力な火魔法を放てる。この魔石を使って杖を作るから、アスハ、君がその杖で空から火を撃ってほしい」

「わかりました、任せてください」

「ありがとう。だが、魔王軍は知っていると思うが、人間の戦士も空への対策は練っている。矢や魔法を放ってくるだろう。なるべく高く空を飛んでほしいんだ」

「高く……できる限り高く飛びます」

「そうしてくれ。君の鎧も、今作るよ」


 俺は風魔法でアスハの体を測ると、紫鉄のプレートメイルを作成した。

 なるべく薄く、しかし様々な攻撃に耐えられるよう頑丈に。


「必ず、お役に立ちます」


 アスハはぺこりと頭を下げる。


 もちろん、これだけじゃない。以前バーニッシュと戦ったときのように石炭も使う。

 天狗たちにその石炭を上空から撒いてもらい、魔法の効果を強めるとしよう。


 メッテが愉快そうに呟く。


「いやあ、しかしこれならもう難攻不落とかいうやつだな。城壁の内側に籠っていれば、もう怖いものなしだ! まさに鬼に金棒だ!」


 一人豪快に笑うメッテだが、俺は正直不安だ。


 騎士団も魔王軍も、千人以上の軍勢ともなれば、火を防ぐ手段は講じている。


 水魔法だったり、魔法の防具だったりと、防火と消火の対策はしているものだ。

 

 バーニッシュの時は彼らが油断していることもあって一網打尽にできたが、今度もそう上手くいくとは思えない。

 

 慎重で多勢な相手なら、長期戦も覚悟しないといけない。


 だが戦いが長引けば、こちらも何かしらの被害はでる。


 矢や魔法は城壁の向こうまで飛んでくるし、城壁を崩す投石器が投入される恐れもあるだろう。そうなれば、戦えない老人や子供にも被害が及ぶ。


 だから、この村付近ではできるかぎり戦いたくないのだ。街道のような、見晴らしの良い場所で戦いたい。


 もちろん打って出るのも危険……何か強力な切り札が必要だ。


 その切り札が、紫鉄を使った兵器となる。


 ドワーフたちが本当に小さな山ぐらいの紫鉄を掘ってくれているので、色々なものが作れそうだ。


 その中でもあれを作りたいな……


 俺は優雅に走り回るモープたちに視線を送った。

 ……あのスピードと図体なら行ける。


「メッメー! ん?」


 セレスは視線を感じ取ったのか立ち止まったが、すぐにまた走っていくのだった。

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