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62話 良い鉱石が手に入りました!

「こんなものでいいかな?」


 俺はツルハシを作り終えると、ドワーフたちの服を作ることにした。

 男性には黒いシャツとズボンや、女性にはワンピースを。


 材料は……彼らの毛を糸にした生地を使っている。

 

 最初、ドワーフたちは服を着たがらなかった。


 だが夜になると寒くなるからと試しに着させてみたところ、動き易いと気に入ってくれたようだ。

 靴もとりあえず同じ素材で作ったが、頑丈そうだ。


 ドワーフたちは次々と俺が毛を回収し、服を生み出すのを見て、驚くような顔をしていた。

 ハサミやツルハシからして、目を丸くしていたが。


「軽いのじゃ! しかもすっきりしたのじゃ!」


 服を着たユミルは、嬉しそうにそこら辺を走り回った。


 まあ今まであれだけ大量の毛を持っていたんだからな……それも生まれてからずっと。


 食料もメッテたちが配ってくれて、とりあえずドワーフ百余名に行き渡った。


 そんな中、遠慮がちに食事をし終えたムスぺがやってくる。


「本当にありがとうございます、ヨシュア様、イリア様」


 イリアが答える。


「そんなかしこまらないでください。これからも助けになることがあれば、協力します」

「ああ。あとは、ドワーフたちの住居も少し弄りたいが……」


 俺は食事を終えたドワーフたちに目を向けた。


 ドワーフたち……特にユミルは洞窟の中へとツルハシを持ち込んで、そこで採掘をしようとしていた。


 これは……俺があれこれ指示をする必要もなさそうだ。

 塔を建てたら、道具と武具をいくらか作るぐらいにしておこう。

 彼らは勝手に街を造ってくれるかもしれない。


 だが、ムスぺはドワーフたちに声を荒げる。


「お前たち、ヨシュア様たちに礼も言わず勝手に!」

「いや、ムスぺさんそんなことはもういい。ただ、鉱山には掘り方があって……」


 ツルハシを持って洞窟へと入ると、俺はユミルたちに言った。


「掘っている内に亀裂が入ると、洞窟が崩れてしまう可能性がある。だから、俺が言うことを守ってほしい」


 まず、洞窟には掘らないでおく部分を決めておく。これは鉱柱といって、洞窟や坑道が崩れないように支えるためのものだ。

 そして天井はなるべくアーチの形に整える。これは難しいと思うので、最初はゴーレムに任せるとしよう。


 その他、丸太の柱を設けたり、異臭がしたら逃げるなど、必要最低限の知識を教えておく。


 覚えが悪そうな印象を受けたユミルだったが、俺の説明に頷く。


「分かったのじゃ! 必ず約束は守るのじゃ!」


 他のドワーフたちも真剣な表情で頷き作業に移った。


 ムスぺが俺に言う。


「な、何から何まで申し訳ありません。ヨシュア様……しかし、お礼のほうは」


 ムスぺは先程から不安そうな顔をしていた。

 何から何までしてもらい、後で自分たちに無理な要求をしてくるのではと心配しているのかもしれない。


 確かに、このままでは一方的な保護でしかない。

 俺たちも、少し要求をさせてもらうとしよう。


「そうだな……この洞窟で採れたものが欲しい。外の資源や食料は後々、相互で助け合えるようにしよう。あとは、有事の際一緒に戦ってもらう。こちらも、ドワーフたちのために戦うが」

「それが先程言っていた、亜人同士が助け合う集まりというわけですね……かしこまりました。何かあれば、都度指示をください。あなた方は、私たちの命の恩人ですから」

「ああ、よろしく頼む……ところで、なんだかこの洞窟の壁は変な色をしているな」


 紫色に輝く部分が所々にある。


 ドワーフたちはその部分だけは砕けないようで、周囲の岩ごと掘り出すことしかできなかった。


「頑丈そうな鉱石だな……」


 俺は紫色の石を含んだ岩を魔法工房に回収した。


 まずは岩を削っていき、紫色の部分を残す。

 そしてそれを熱して、さらに不純物を取り除くのだが……


「なかなか溶けないぞ……これはだいぶ熱に強そうだ」


 しかも、風魔法で形を変えようにも、なかなか思い通り曲がらない。

 インゴットにするのに鉄なら十秒もかからなかったのが、結果として三十秒もかかってしまった。


 俺はそれを水魔法で冷やすと、外に出して地面に置いてみた。


 色は鉄とそう変わらないが、微かに紫色の輝きが見える。

 熱したが、毒のようなものは出てこなかった。


 俺も知らない金属だな……


 俺は鉄の剣も作成し、それも取り出した。


「イリア。悪いがこの剣で、こいつを斬ってくれるか?」


 イリアは頷き、俺から鉄の剣を受け取る。


「強度を試すためですね?」

「そうだ。君の刀だと、絶対斬れるだろうからな」

「かしこまりました。では!」


 鉄の剣をイリアは遠慮なく、インゴットに叩きつける。


 すると、鉄の剣はぱきんと折れてしまった。


 次にイリアは、すぐに自分の鬼角の刀でインゴットを両断した。


 やはりイリアの刀では斬れるか……うん?


 イリアは少し首を傾げもう一度インゴットの片割れを斬ると、俺に言う。


「ヨシュア様……このインゴット、硬いですね。今までのどんなものよりも、硬いかと」

「そ、そうか。イリアが言うなら間違いないな」


 鉄の剣が折れてしまう時点で、この金属は黒魔鉄と同等か、それ以上の固さがありそうだ。

 そこにイリアの力が加わっているのだから。


「重さも、同じ大きさの鉄より軽い……これがあれば、頑丈な防具を作れるぞ」


 俺が言うと、ムスぺが嬉しそうに言った。


「本当ですか!? いや、お役に立てそうでよかった! よし、お前たち! いっぱいこの石を掘り出すぞ!」


 ムスぺの言葉に、ドワーフたちは威勢よく声を上げ、採掘を始めた。


 俺はこの後、洞窟周辺に塔と小さな防壁を設けた。

 道具や武具も作り、イリアたちにその使い方をドワーフたちへ教えさせる。


 ドワーフたちの覚えの速さは、目を見張るものがあった。

 武器は鬼人と変わらないぐらいだが、道具はまるで最初から使い方を知っているように扱ってみせたのだ。


 俺たちは新たな同盟相手を得て、村に帰還するのだった。

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