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36話 羊の家を作って寝ました!

「ここらへんでいいかな……」


 俺はフェンデル村の南東に来ていた。

 モープたちの家をつくるためだ。


 ここなら東の川も近く、水もすぐに飲みにいける。


「木材も十分……そういえば、セレス。どんな家が好みだ?」

「メッメー。広々として、皆でくっつける家がいいっす!」

「とすると、自分の部屋みたいのはいらないってことか?」

「そうっす! 自分たちを囲む板とか、いらないっす!」

「分かった……それじゃあ、大きな小屋をつくる必要があるな」


 構造は単純だ。

 約百体のモープが入れるように、今まで作ってきた小屋の十倍の大きさを建てればいい。


 ただ、そこまで大きなものだと、逆に難しい。

 なるべく柱を多めにすれば強度は上がると思うが……まあ、やってみるか。


「皆、俺の後ろにいてくれ。ビルド──ハウス」


 魔法工房で太い柱を生産し、それから床や壁の板を張り付け、屋根を作っていく。


 すると、ほんの一分で大きな長屋ができあがるのだった。


「メッメー!? 家がいきなりできたっす!?」


 セレスと他のモープは、一様に驚きの声を上げた。


「やばいっやつっす……もしかしたら、まおー様よりすごいんじゃないっすか!?」

「少なくとも、幹部のやつよりはすごいっす!」


 魔王軍にも、生産魔法を使うやつはいる。

 もちろん魔法を使える種族だけになるだろうが。


 俺……というかまず人間は見たことないが、たしか魔王城は魔王が生産魔法を使って一人で建てたなんて言われている。

 そう考えると、魔王ってのはやっぱりすごいやつなんだろうな……


 まあ、この話は魔王が自身の権威を高めるため吐いた嘘だと、人間の間では信じられているが。


 俺は「大げさな」とモープたちに返した。


「まあ、ともかく中に上がってくれ。とても暖かいはずだ」

「メッメー、感謝するっす!」


 モープたちは俺に頭を下げると、続々と小屋の中に入っていった。


 セレスが俺に頭を下げる。


「ありがとうっす! 毛と乳はいつでも言ってくださいっす! なんなら、今すぐ毛を切ってもいいっすよ?」

「いいのか?」

「はいっす! むしろ、最近伸びすぎで暑かったぐらいなんすよ」


 確かに、セレスの毛はもう立派な毛玉みたいだ。

 何というか触ってみたい……と思ったら、メルクが前脚でその毛を触っているようだ。


 とても触り心地が良さそうだな……俺ももふもふしてみたい。


 そんな逸る気持ちを抑え、俺は呟く。


「そうか、じゃあそうさせてもらおうかな……」


 普通の羊毛と要領は変わらない。

 まずはハサミで羊毛を刈っていけばいい。

 生産魔法では、風魔法で毛を綿のようにしてから一本の糸へぐるぐると絡め合わせていく。


 それから風魔法と水魔法で汚れを取り、毛織物に加工していく。更には衣服や布製品へと加工していくわけだ。


 騎士団の下着づくりは俺の役目だったので、良く作っていた。

 だいたい高位の騎士は、商人から高級な布の衣類を購入していたが。 


「でも」


 俺は家の中に入って、体を寄せ合うモープたちに気が付く。


 皆、疲れてしまったのか、寝てしまっているようだ。


「あ! お前たち、お礼もしてないのに失礼っすよ!」


 セレスが言うも、他のモープたちはぐうぐうと寝息を響かせるだけだ。


「メッメー……ここんところ、ずっと走ってたせいか、皆疲れちゃったみたいっす」

「無理しなくていいよ。また起きたらでいい」


 俺としてももう寝たいなと思っていたところだ。


 まあ、ぜひあの毛で作った布団で寝たかったけど……


 すると、俺の物欲しそうな視線に気が付いたのか、セレスはこう言う。


「それじゃあ……うちと……寝ちゃうっすか?」

「え?」

「うちらモープは、まおー軍の移動用ベッドでもあるんす! ヨシュア様のベッドになってあげるっす!」

「本当か? そうだな……確かに寝心地を調べてみたい」


 非常に眠いせいか、セレスのもふもふがとても魅力的に見える。


「頼む……天幕まで来てくれるか?」

「喜んで!」


 俺は天幕に戻ると、セレスにベッドになってもらった。

 予想通りというか、予想以上にもふもふが気持ちよく、すぐに眠りについてしまうのだった。

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