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オアシスに家を建てました!!

酢忍先生が描く本作コミック版2巻は本日(2月10日)発売です!!

「おおおお!! こんな場所があるとは!!」


 広大なオアシス湖を見て、メッテが声を上げた。


 ネイアも目を丸くして呟く。


「まさか、これほどの規模のオアシスが残っていようとは」

「すごいでしょ! 私が見つけたんだ!」


 自慢げな顔で呟くリーセ。


 とすると、ネイアも見たことがない大きさのオアシスと湖ってことか。


 だが、驚き以外の感情がその顔からは感じられた。


 イリアが呟く。


「フェンデルの南や白砂島と違って黄色い砂……とても明るく感じますね」

「でも、暑い……」


 メルクは杖で自分に風を送りながら言った。


 一方のアスハは周囲を見渡しながら呟く。


「この湖周辺には砂嵐がやってこないみたいですね。何か秘密があるのでしょうか?」

「可能性はありますね。ともかく、少し探索してみましょうか?」


 イリアの声に俺は頷く。


「ああ。何か希少な品も取れるかもしれない」


 そうして俺たちは周辺を探索することにした。アスハは一度、フェンデルと虎人たちに無事を伝えに戻ってくれた。


 オアシス湖自体には少なからず魚がいるようだ。また砂漠から小さい小川のようなものも見えた。砂漠の僅かな水がここに集まっているのかもしれない。


 湖周辺には砂浜もあるが、ほとんどが緑地であるオアシス。そこにはヤシの木や、ネイアたちも取ってきてくれた砂漠林檎が成る木が生えていた。


「楽園のような場所だな……」

「さっき飲んだ砂漠林檎のジュースがいっぱい飲める」


 メルクは砂漠林檎を一つ齧る。とても甘いのか、思わず尻尾をフリフリとさせた。


 俺は地平線の方まで広がるオアシスの木々を見て言う。


「すごい広いオアシスだ……魔石を使えば水も供給できるから、農業をやっても湖が干上がる心配はない」

「魔物や危険な生物もいない。あとは家があれば、暮らそうと思えば暮らせそうだな」


 メッテの声に俺は頷く。


「木材や石材は俺が持ってくればいいからな」


 そう言うと、リーセがこう訊ねてきた。


「じゃあ、リーセたちの家も作ってくれる!?」

「もちろんだ。好きなところを選ぶといい。一番最初に建てるよ」

「やったね、お姉ちゃん!」


 喜ぶリーセにネイアは微笑む。


「ああ。いい家を建ててもらおう」


 そう口にするネイアの顔はどこか寂しげだった。


 メッテが言う。


「よし、じゃあいい場所を探すか。やっぱり見晴らしのいい高い場所がいいだろう。あそこはどうだ?」


 メッテは岩の丘を指さして言った。


「うん! あそこなら湖の向こうまで見渡せそう! ヨシュアさん、お願いできる?」


 リーセの言葉に俺は頷いた。


「ああ。坂を上がる階段を作りながらいこう」


 そうして俺は丘の上まで階段を作り、その上にリーセの家を建てることにした。


 イリアが刀で岩を斬り周辺を平らにしてくれている中、今はリーセが設計図を描いているところだ。


「屋根は分かりやすいように高いといいな! 窓も大きく!! ベランダもベッドが置けるような広さで! お姉ちゃんはどう思う?」

「あまり大きなものはダメだ。一族皆で住むわけじゃないんだから……ヨシュア、悪いな」


 ネイアは申し訳なさそうな顔で呟いた。


「気にしないでくれ。それよりもネイアのほうで何か助言があったら教えてくれ。俺も砂漠地帯での建築は初めてなんでな」

「そ、そうか。なるべく風通しをよくするために窓は多いほうがいい。あとは壁に白い石灰を塗ると、家の中が涼しくなる」

「なるほど。やってみるよ」


 そうして俺はリーセたちの家を建てていった。


 ベッドやソファを作る素材も十分にある。最低限の家具も作ってあげた。


 間も無くして二階建ての家が完成する。


 一階の奥行きは馬車三台分、幅は馬車二台分。二階の部屋は一階の半分ほどの広さだが、一階の上部分がベランダとなっている。


「風魔法で外壁も乾かしてくれたし、部屋の中の地理や埃も払った。もう、すぐ住める」

「わーい! 私たちの家だ!!」


 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶリーセ。


「それじゃあゆっくり見学してくれ。欲しい家具があったらまた作るから。俺は、周辺に寝泊まりできるような場所を作ってくるな」

「わかった!」


 リーセの隣ではネイアがリーセに頭を下げさせる。


「ありがとう、だろ。リーセ」

「そうだった。ありがとう!」


 リーセは笑顔でお礼を言ってくれた。


「どういたしまして。じゃあちょっと行ってくる」


 そう言って俺は、外で設計図を描いているイリアたちのもとへ向かう。 


「考えはまとまったか?」

「はい! 噴水か何かあるといいなと思いまして」


 俺はイリアに頷く。


「乾燥するからな。魔石を使って水が出るようにしよう」


 そうして俺たちもフェンデルの皆が寝泊まりできるような場所を作ることにした。


 噴水を中心とした広場の周囲に、白砂島と同じく家は数軒、あとは見張り塔やら倉庫や物置小屋と必要最低限のものを建てていく。


「いい感じにできたな」

「はい! 飛行艇があれば来れますし、ここに住みたがる者も出てきそうですね」


 イリアはそう答えた。


 この景観なら、住みたがる者も出てくるだろう。


 それに、虎人たちも……


「そうだな……うん?」


 いつの間にか、アスハたちの飛行艇が帰ってきていた。アスハがこちらに慌ててやってくる。


「ヨシュアさん! 砂漠鈴が鳴っています!」

「何? リーセたちが鳴らしたんじゃ」


 何事かとネイアとリーセが出てくる。


 ネイアは顔を青ざめさせる。


「もしかして……あの馬鹿親父!」


 ネイアは丘を駆け下りていく。


「俺たちも追うぞ! アスハ、ネイアの前を風魔法で払ってくれ!」

「承知しました!」


 俺たちもネイアを追うことにした。


 砂嵐に向かうネイアの後ろから、アスハが風魔法で砂嵐を晴らす。


 やがてすぐ、耳にも鈴の声が響いてきた。


「父上!!」


 ネイアの進む方向から、一人の男が顔を出す。ベイロンだ。


 ベイロンはいつもの調子で呟く。


「なんだ、ネイア。生きていたのか?」

「──この馬鹿親父!! いいからさっさと傷を見せるにゃ!!」


 ネイアが無理やりベイロンの裾を捲ると、そこには砂嵐のせいか無数の切り傷があった。


 ネイアは感情が高まると、こうして口調が変わる。


「これぐらい、いつものことだろ? 何怒ってる」

「うるさいにゃ!! 私がヨシュアたちに助けを呼んでくるから、親父は待ってろって言ったにゃ!」


 そこにイリアが口を挟む。


「と、ともかく今は治療を」

「メルクに任せる」


 メルクはそう言ってベイロンの腕に回復魔法をかけた。


「悪いな……」

「気にしない。それよりもリーセが見せたいものがある」


 メルクの声に、リーセが頷く。


「うん! ヨシュアさんたちに家を建ててもらったの!! でっかい湖が見える大きなお家!!」

「またお前は借りを作るような……」


 ベイロンは呆れるような顔で言う。


「まあまあ。俺からしても結構良い家ができたと思う。ぜひ見ていってくれ」

「分かった……リーセ。そこで説教だからな──おい!」


 ベイロンの話も聞かず走り出すリーセ。


「全く……ネイアといい誰に似たんだか」


 ネイアはお前だろとでも言いたげな顔でベイロンを睨む。


「と、ともかく、オアシスに戻ろう」


 俺たちもリーセを追って、オアシスに帰還することにした。

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