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オアシスでした!?

本日、酢忍先生によるコミカライズ最新話がガンガンONLINE様で更新されています!

 天狗の山での建設を終え、俺はいつも通り道具作りの日々を送っていた。


 以前より作る物は減ったが、その分今は一人一人の要望に合わせて作ることができる。今は、天狗の山に登るための登山道具の注文が多い。


「天狗の山、白砂島に負けず劣らず賑わっているみたいだな」

「天文台は特に人気のようですね。白砂島のエナさんも、山の方が綺麗に見えると驚いたようで」


 イリアは昼食のために工房の後片付けをする俺の隣で言った。


「気に入ってくれているみたいで嬉しいな。おかげで俺も作る物が増えたし……」


 とてもありがたいことだ。俺はやはり何かを作っているときが一番楽しい。


 イリアも頷いて言う。


「ふふ、ヨシュア様が楽しそうで何よりです。それでは、行きましょうか」

「ああ、そうだな」


午前中の仕事はこれで終わり。イリアも襲来したボア退治から帰ってきたところだ。髪から良い匂いがするのはすでに風呂に入った後だからだろう。


 何を言うでもなく、俺たちは自然と村の中央にある食堂へと向かった。


 すると、どこからともなく良い香りが漂ってくる。


「なんだかすごい甘い香りだな……」

「食堂に人だかりができてますね。何か、美味しい食材が入ったのでしょうか?」


 食堂の厨房の前には、多くの亜人たちが集まっていた。


 するとその中から、メッテがやってくる。


「おお、ヨシュア! イリア様も。ちょうどよかった」


 メッテの手には、銀でできた大きな杯が。


 その中には薄黄色の液体が注がれていた。甘い香りの正体はこれらしい。


「美味しいぞ。飲んでみてくれ」

「あ、ああ。でも良いのか?」

「私はもう飲んだ。あとはヨシュアとイリア様で飲めばいい」


 今更、同じ杯を飲み回すことに抵抗はない。


 俺はさっそく話題のジュースをメッテから受け取り飲む。


「美味い……!」

「本当に! それになんだか体が癒されるような……」


 イリアも美味しかったのか声を上げた。


 メッテがこう答える。


「皆、これで騒いでいるんだ。とても珍しい果物が使われているみたいでな」

「へえ。エクレシアが見つけてきたのか?」


 メッテは首を横に振る。


「いや、エクレシアたちエントも見たことがない果物を、虎人が持ってきてくれたんだ。どうやら、グランク傭兵団の仲間が南の虎人の村を訪れたみたいでな。ベイロンやネイアが近くの砂漠で見つけた果物を俺たちに渡すよう、持ってきたらしい」

「ベイロンたちが? 水臭いやつらだな」


 イリアもこう呟く。


「もし近くまで来てらっしゃるなら、フェンデルに寄られればいいのに」

「まあ、今度来たら、フェンデルの食材やグランク麦でも……うん?」


 すっと風を切るような音に俺は振り返る。


 そこにはメルクと……虎人のネイアが急いでこちらに向かってきていた。


やはり挨拶にきたのだろうかと思ったが、少し様子がおかしい。メルクはいつもより駆け足だし、ネイアも顔面蒼白となっている。


 俺たちも異変を感じ、こちらから早歩きで向かう。


 メルクが俺たちの前で止まり、口を開く。


「ネイアを連れてきた。助けが欲しいらしい」

「情けないがその通りだ……」


ネイアも息を切らしながら足を止めた。


「ネイア、いったいどうしたんだ?」

「実はリーセが……西の砂漠で行方不明になって」


 フェンデルの東にあるヴァースブルグ……そのさらに東の山脈を越えた先には岩砂漠が広がっている。魔王ソフィスがキュウビの精霊と戦っていた場所だ。


 メルクがこう答える。


「もう、近くの森はエントが探してくれている。天狗も空から砂漠や山を探してる。でもなかなか見つからない」


 ネイアがこくりと頷く。


「強い砂嵐が迫ってきている……このままでは」

「分かった。俺たちも飛行艇で探しに行こう」


 俺が言うと、イリアとメッテも深く頷く。


 メルクもこう答えた。


「アスハがもう飛行艇を用意している。すぐにやってくる」


 ネイアは申し訳なさそうな顔で頭をさげた。


「すまない……お前たちにはいつもリーセのことで迷惑をかけているな」

「気にするな。こういうのは時間が勝負だ。それよりも、心当たりはあるのか?」

「お前たちにも渡した果物があるだろう。あれは砂漠林檎といってな、オアシスでしか獲れない貴重な林檎なんだ。それをもっと大量に獲ろうとリーセが……」

「なるほど。なら、オアシスを目指している可能性があるわけだな」

「ああ。だが、あの砂漠では魔力を含んだ砂が幻覚を見せたり、方向感覚を狂わせてくる。偽のオアシスや、隠されたオアシスもあるんだ……それだけじゃなく。たまに大事な人の幻覚も」


 ネイアの顔は青ざめていた。

 砂漠出身の虎人たちは、砂漠についての知見に豊富だ。それゆえに恐ろしさも知っているはず。


 リーセも少しぐらいなら大丈夫と砂漠に行ったのかもしれないが、もし幻覚にかかっていたら……


 メルクはそんなネイアを安心させるように答える。


「メルクに任せる。リーセの匂いはよく覚えている」

「ああ。私たちが探せばすぐに見つかるさ。だから、心配するな」


 メッテもそう言うと、ネイアは深く頭を下げた。


「皆、ありがとう」


 そうして俺たちは、西の砂漠へと向かうのだった。

本日、酢忍先生によるコミカライズ最新話がガンガンONLINE様で更新されています!

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