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涼しい場所を求めました!

「それじゃあ気を付けるんだぞ!」


 フェンデル村の河港。

 その桟橋では、大人の亜人たちが川に出る船に手を振っている。


 その船には、手を振り返す亜人の子供たちが乗っている。皆水着姿で、手には浮き輪や団扇があった。


 俺もその船に手を振って船を見送る。


「白砂島の海水浴、ずいぶん人気になったな」

「川より白砂島のほうが自由に泳げますし安全ですし……それにこの暑さですから」


 俺の隣に立つイリアはそう答えた。


 白砂島で海水浴場を作り、一か月が経った。

 フェンデルも本格的な夏に突入し、亜人たちも連日うだるような暑さに喘いでいる。


 俺も思わず風魔法で体に風を送りながら言う。


「村じゃ、皆扇風機の前に集まるのがブームになっているようだしな……」

「アイスも相当な人気のようですが、モープさんたちも暑さでへばっていてあまり乳を出せないようで……今は、メルクさんがかき氷なんかも作っています」


 かき氷なる氷を削ってそこに蜜をかける食べ物が最近流行っているようだ。


「もっと暑さ対策を考えないとな……何かいい考えはないかな」


 俺がそう言うと、イリアはくすっと笑う。


「やめてください、ヨシュア様。ヨシュア様が来られる前の夏なんて、皆日陰でじっとしているしかなかったんですから。それと比べれば、今のフェンデルは天国です。もう、対策は十分ですよ」

「そう、か。まあ夏は暑いのが当たり前だしな……それでもやっぱり暑い」

「ともかく、どこか日陰へ向かって休みましょう。またマッサージして差し上げますから!」

「そ、それは悪いよ」

「そう言わずに!」


 イリアに手を引かれながら俺は村へと歩いていく。


 なんというかだいぶ積極的になったな……


 そんな中、木の下で丸まる巨大な羊に目が留まる。モープのセレスだ。


 セレスはまるでスライムのように伸びていた。


「メッメー……暑いっす……でも走り回りたいっす……アッチ―」

「セレス、大丈夫か?」


 俺はぐったりとするセレスに風魔法を送る。


「ヨシュア様、ありがとうっす……でも、大丈夫っす。じっとしているぶんには、このフェンデルは快適っすから。問題は……」

「走るとすぐに体が熱くなるってことですね」


 セレスはこくりと頷く。


「毛も切ってもらっているのにすぐに熱くなるっす……泳ぐのもいいっすが、やっぱりうちらは歩いたり走るのがいいっす」


 気が付けばいつも走っているのがモープたちだ。


「なんとかしてやりたいが……そうだ」


 俺は遠くに映る山々に気が付く。


「山の上ならそこそこ涼しいんじゃないか? 山で放牧されている羊もいるし」

「メッメ! 言われてみれば、高いところは涼しいっすね! 気持ちよさそうっす!」

「宮殿を作った山は南部からの人間が増えているみたいだし……久々に、アスハたちの住む山へと上がってみるか」


 フェンデルの南西には高い山がある。麓には温泉が湧き出る泉があり、山頂にはアスハたち天狗が住む山があった。


 イリアもそういえばと答える。


「山頂で魔王軍の竜と戦って以来、行ってませんでしたもんね」

「ああ。山の開発もそれっきりだったし、天狗たちが欲しい施設がないかも聞いてみよう。天狗たちは遠慮しているのかあまり頼みごとをしてこなかったからな」


 ゴーレムに運んでもらって麓から山頂まで一時間、徒歩で登るなら五、六時間はかかる山だ。


 ただ天狗は飛べるので、ほんの十分でフェンデル村と行き来できてしまう。それゆえ、フェンデル村の施設で現状満足しているのかもしれない。村から何か運ぶにしても飛行艇があるし。


「まあ、久々に散歩気分で行ってみようか。それに、一つ王都でも作ったものを作ってみたいしな」


 イリアは首を傾げる。


「王都で作った物?」

「うん。飛行艇よりももっと輸送を楽にできるかもしれない」


 するとイリアは何かを思い出すように言う。


「王都の川を渡るのに使った索道ですね!」

「ああ。あれをもっと頑丈にしたものを作る。どうせなら道も整備していこう」


 俺が言うとイリアはおかしそうに笑う。


「ふふ、ヨシュア様はやっぱり物を作るのがお好きなのですね」


 セレスも微笑みを浮かべてうんうんと頷く。


「メッメー。見習いたくなるぐらい、今のヨシュア様張り切った顔してたっす」

「そんなこと……そんな顔してた?」


 イリアとセレスは即座に首を縦に振るのだった。


 その翌日、俺たちはアスハたちの住む山へと向かうこととなった。

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