236話 謎の軍勢でした!?
俺たちは小型の飛行艇を使い、西へと向かっていた。
木々に覆われた山々を抜け、禿山の山地を越えると、やがて荒涼とした岩の砂漠が見えてくる。
グランク族の虎人たちの故郷は、この岩の砂漠より更に西の砂の砂漠にある。
この地域は村こそないもののフェンデル周辺の街道と同じく、南北に連なる街道が何本かあった。当然、人間と魔王軍の争いも度々起きていた。
俺は周囲を見渡しながら言う。
「西の古戦場……恐らくはここらへんのはずだ」
メルクが答える。
「臭いもずっと強くなっている」
そんな中、イリアがまっすぐ西を指さした。
「砂塵が濃い……あの中から何か、爆発するような音が」
イリアの言う通り、西側には砂嵐かと見紛うような砂塵が巻き上がっていた。
メッテも声を上げる。
「ところどころ、赤い光も漏れている気がするぞ。きっとあの中に何かいるはずだ」
となれば、そのまま砂嵐の中に突入するのは危険だ。
しかしアスハが答える。
「私にお任せください! 風で吹き飛ばします!」
アスハはそう言うと、杖を砂塵に向け風魔法を放った。
びゅうびゅうと音が立ったと思うと、砂塵が西へと吹き飛ばされていく。
すると、次第に中で何が起きているかが掴めてきた。
「あれは……」
砂塵の中では、戦いが起きていた。
一方は少数かつ小型の者たち、対するは光る人型。
魔力の流れで分かる。
少数のほうはソフィスがいる。周囲の黒い影は、配下の黒い鎧だろう。
それを襲っているのは、全身が青い光でできているような人型だった。
人型のほうはウィスプやレイスだろうか。初めて見るが、アンデッドの一種だろう。
一方でソフィスたちは、その人型を次々と倒していく。山のような高さの爆発が各所で起こっていた。
だが、人型のほうは、はるか西の地平線まで埋め尽くすようにいる。
ソフィスたちはその物量に押され、じりじりと後退しているようだった。
「すぐに加勢に!」
イリアの声に、俺たちは頷く。
「ああ。ここでソフィスを見殺しにするわけにはいかない」
まずアスハに伝える。
「アスハ。山とフェンデルへ異変を伝えるよう天狗にお願いできるか? あの数だ……防ぎきれない可能性がある。皆、臨戦態勢を整えるように、逆に向こうで何かあればすぐ伝えてほしいと言ってくれ」
「かしこりました!」
アスハはそう言うと、後ろから伝令として飛んできた天狗を呼び、東へと帰らせる。
一方で俺たちは飛行艇を着陸させ、ソフィスのもとへ向かった。もちろん飛行艇は魔法工房で回収しておく。
しかし、とてつもない爆発だ。
ソフィスはもちろん、黒い鎧たちの魔法も凄まじい。炎、水、風……あらゆる魔法で人型を倒しているようだ。人型のみならず岩をも砕くような威力だから、砂嵐のようになるのも頷ける。
いっぽうの人型は、光の剣や槍などを用いているようだ。個々の戦闘力はスケルトンと変わらないだろう。俺たちの武器や魔法で十分倒せるはずだ。
イリアは刀を抜いて言う。
「まずは、ソフィスさんと合流しましょう」
「ああ!」
相手が何者なのかを聞く必要もある。倒すにしても連携を取らなければ。
俺たちはまずはソフィスのもとへと走るのだった。




