23話 ゴーレムを作りました!
「吸収」
俺は即座に崩れる岩を吸収した。
イリアは刀を鞘に納めると、俺に振り返る。
「ヨシュア様、お怪我はございませんか!?」
「大丈夫だ。それよりもイリア、大手柄だぞ」
「え? あ、ありがとうございます! 嬉しいお言葉です! でも、今のはヨシュア様がほとんど」
「いや、倒してくれたのはもちろんすごいんだが。そうじゃなくて……これ見て」
俺は魔法工房から、真っ二つになった人形石の片割れを手に出す。
まだ赤黒く輝いている。
「これは、今のゴーレムとやらの」
「ああ、人形石だ。これ自体は結構脆くてな、だいたいゴーレムを倒した後、砕けてしまうんだ」
攻撃で砕けるのはもちろん、ゴーレムが崩れる時、落ちて粉々になることが多い。
「な、なるほど」
まだよく分かってないようなイリアに、俺は人形石の断面を見せた。
「まだ光ってるだろ? ここまで綺麗に斬ってくれたおかげだ。この状態だと、まだ人形石として使えるんだ。しかも、二体のゴーレムが作れる」
ただ、ゴーレムが集められる石の量は、その人形石の大きさによって決まる。
当然半分になったので、先程のゴーレムの半分程の大きさになってしまうのだ。
まあ、それでも人の背丈の二倍はあるわけだから、大きい事には変わらない。
騎士団にいる頃、俺は一体だけゴーレムを作成したことがある。
だが、団長のロイグによって、魔物は醜悪だと戦の捨て駒にされてしまう。
後で聞いた俺はロイグへ意見した。
しかし、ロイグは無視するだけだった。
イリアは少し考えたあと、俺に言う。
「つまり、今倒した岩の巨人を作れると? 作ったら、また襲ってきませんか?」
「人形石は手にした者の命令で動くから、もう俺の言うことを聞いてくれる。今みたいに人形石だけにしといて、侵入者が来たときだけゴーレムにしたりもできるよ」
一説によれば、人形石は魔王の血でできていると言われている。
孤独な魔王が、決して裏切らない部下を欲したため作ったという。
「信じがたい話ですが……とにかく、ヨシュア様のお役に立てて良かったです」
「いや、本当にお手柄だよ。この石は欲しくても、滅多に市場には出回らないからね」
俺が答えると、イリアは嬉しそうな顔をして頭を下げた。
「ともかく、試しに一つ作ってみよう。クラフト──ゴーレム」
といっても、ただ岩を人型に整えてやるだけ……いや、それだと少し心許ない。
なので、人形石の周囲を鉄板で覆ってみた。
一分も掛からない内に、先程の半分の大きさのゴーレムが現れる。
イリアはゴーレムがこちらに迫ってくるのを見て、刀の柄に手を掛けた。
「イリア、心配いらないよ」
すぐに、ゴーレムは俺たちの前で跪くような仕草をした。
「……やっぱり、ヨシュア様はなんでも作れるのですね。生き物さえも」
イリアは額から汗を流し、ゴーレムを見ていた。
ゴーレムが生き物なのかどうか……それは分からないが、動くのだから生き物と考えてもおかしくない。
「こいつは特別だよ。それに、核となる人形石は作れないからな……よし、せっかくだ」
俺はゴーレムに、岩場を指さす。
「岩を切り出せるか? このぐらいの大きさで、四角く」
地面に向け、俺は適当に指さした。だいたい、横幅一べートルの正方形だ。
ゴーレムは仰々しく頭を下げると、地面を拳で思いっきり叩いた。
そして、ちゃんと俺が指定した四角い石材を切り出し、持ち上げた。
「おお! ゴーレムは、こんなこともできるのですね!」
「ああ。岩を操る魔物だからな」
ここにきて、頼もしい仲間ができた。
石材の切り出しは、ゴーレムに任せるとしよう。
それだけでなく、彼らは防衛戦力としても役立ってくれそうだ。
鉄が豊富にあれば、鉄の鎧を着せてやるとか、アイアンゴーレムに改造するなんて手もある。ゴーレムは、岩や金属の種類だけ、亜種が存在する。
この後、俺はもう一体ゴーレムを作り、石材を作らせた。
それから村への道を覚えさせ、石を運搬させる。
そうして集まった岩で翌日、俺は塔を造ることにして寝たのだが……
まだ未明、外からの悲鳴で起床するのだった。




