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209話 飛びました!?

 草原の上に、帆船がぽつんと置かれていた。

 全長十ベートルほどの船で、帆柱は一本だけの小型の帆船だ。


 だが、普通の帆船と違い、紫鉄の翼が取り付けられている。


 俺たちはその翼の生えた船──飛行艇に乗っていた。


「その管に風を送ってもらえば……どうじゃ!?」


 ふわりと浮かぶ船に、ユミルは声を上げた。


 船の中央には巨大な管の口があり、その縁には風魔法の扱いが上達する魔石が埋められていた。


 管は船体の底部に向かって何本かに枝分かれしており、いくつかの船底の穴に繋がっている。

 風を送るとその船底の穴から風が地上に向かって吹き出すようになっていた。


 その風の力で船が浮かぶのだ。


 今はノワ族の中でも風魔法の扱いに長けた者たちが、管に風を送っていた。三人で風を送っているが、上手く飛べるようだ。


 船から地上を眺めると、草原の草花が船の放たれる風で大きく揺れていた。


 メッテが感心するように言う。


「おお浮かんだ! ぐらぐらすると思ったが、ずいぶんと安定しているな。この翼のおかげか」


 ユミルは誇るような顔で答える。


「うむ! 底の部分を窪ませると、不思議と安定してのう」

「ほう、さすがドワーフたちだな」

「いや、ワシらだけではできなかった。ノワ族を始め、他の亜人たちも手伝ってくれたのじゃよ。前に進む場合は、管の隣の取っ手を引くことで今度は船尾の管にも風が送れるようになる」

「ほうほう……おお」


 メッテが取っ手を引くと、船は今度は前方に進んでいった。


「風を送っている……わけじゃなくて、後ろで風車みたいなのが回っているんだな」

「うむ。歯車を噛み合わせて、あの風車が高速で動くようになっているのじゃ。ただ風を送ってもどうしても進まなくてのう。色々ヨシュアの作った物を試したら、これが上手くいったのじゃ。フォニアからも、同じような風車が昔の飛行艇に付けられていると聞いてのう」

「へえ……俺も知らなかったよ」


 どういう原理なのかは分からない。

 ドワーフたちがあれこれ試行錯誤を重ねてくれたのだろう。


 イリアが言う。


「まさか、本当に船が飛ぶとは……」

「驚いた」


 メルクも感心するように呟いた。


 元々飛べるアスハはそこまで驚きもないようだが、喜んではいた。


「ふふ。亀人のフォニアさんも懐かしく思うでしょうね」

「ああ……ヨシュアが来て、一年も経たないうちに私たちはまた集まって、ここまでの物を作れたんだからな」


 メッテの声にユミルも頷いた。


「ヨシュア様様なのじゃ。これもヨシュアの作った物を合体させた感じじゃからな」

「俺は何にも……でも、これでもっと移動が楽になるな。本当に大陸北部や、東の大陸も気軽に見にいけるかかもしれない」

「なら、遠くに行ってもこの飛行艇で泊れるように、もっと大きくしてみるのじゃ。魔物にやられないよう、もっと頑丈にもしたいのう。海でもなんだかんだ使えると便利じゃ」

「俺も手伝うよ」


 張り切るユミルに俺は言った。


 まさか飛行艇がこんなに早く完成するとは思わなかった。


 いや、魔法が達者なノワ族が加わったことで開発も加速したのだろう。

 実際に飛行艇が飛んでいるのを見たフォニアたちから話を聞けたのも、この飛行艇の完成に貢献しているはずだ。


「しかし、本当に便利だな……」


 この飛行艇は単純に遠くへ早く行けるというだけでなく、戦闘においても使えるはずだ。


 例えば巨大な岩を落としたり……魔王軍が攻めてきたときに、戦術の幅が広がる。


 肝心の魔王軍は、やはりまだ動きがないが。


 それに、もしもの時……


 例えば魔王が何かを企んでいるなら、それを止めるために魔王城を急襲することもできるだろう。


 そんなことに使いたくはないがな……


 俺たちはその後、飛行艇でフェンデルの周辺を飛んだり、さらに大きな飛行艇を造ったりするのだった。

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