204話 来客でした!?
ざざんと波打つ音を聞きながら、俺たちは砂浜から東の海を眺めていた
「これで、一応東部の探検は終わりだな」
残すは北と西だが……
北には高い山脈と樹海がある。
そこに亜人が住んでいる可能性もあるが、南には俺たちがいるから魔王軍は北上できない。
また、人間もとてもその山脈と樹海は超えられないだろう。
だからもしそこに亜人がいたとしても、接触を急ぐ必要はない。
一方のフェンデルの西は、人間もよく通行する地域。亜人はあまりいないと考えていい。
もっと西にはグランク族の虎人のように亜人が住んでいる可能性はあるが、少し遠い。今は魔王軍も侵攻してきているし、接触にはもっと綿密な計画が必要だろう。
「それに、亀人たちの家も建て終わったし、とりあえずやれることはやった」
亀人たちには、ノワ族と同じ石造りの家を数軒建てておいた。
使うかどうかは分からないということだが、道具や武具も用意してある。
また、ドワーフたちにはさらにここまで街道を延伸してもらい、ノワ族や狐人たちはこの付近でもシールドシェルの狩りをやってもらうことになった。
天狗たちの警戒範囲もここまで広がったので、魔王軍がもし海岸からやってきてもすぐ察知できるだろう。
イリアも満足そうな顔で頷く。
「これで東は万全ですね」
「海の向こうは、また今度行く」
メルクが呟くと、アスハも首を縦に振る。
「飛行艇ができたら、もっと簡単に行けるようになりますし」
「船が空を飛ぶなんて、私はまだ信じられないが……」
メッテはそう言った。
「うちらも、その飛ぶ船を作るのに、魔法で役立てないか考えてみるにゃ」
ローナたち黒猫族の魔法が加われば、確かに船の一隻や二隻は飛ばせそうではある。
まあ別に、海は普通の船で行ってもいい。
もう少し状況が安定したら、もっと遠くも見たいな。
そんな中、イリアが呟く。
「それにしても、たくさんまた仲間が増えましたね」
「まさか、自分たちと同じ姿の仲間がいるなんて思わなかったよ」
ミリナが言うと、ローナも口を開く。
「虎人にゃっけ? うちらも似ている奴がいてびっくりにゃ」
「似てる?」
メルクの問いかけに、ローナはしっぽと耳をふりふりと動かして言う。
「とてもうちらとそっくりにゃ」
「……そうかもしれない」
メルクはローナの体をじっと見て言った。
「まあ、まだ、他にも似た奴がいるかもしれないぞ。人狼と狐人も似ていたし。もっとたくさん仲間が増えるといいな」
メッテの声に俺は頷く。
「これからも仲間は増やしていこう」
「ええ。亜人に限らず、人間や魔物の方も」
皆、そのイリアの言葉にうなずいた。
そんな中、一体の天狗が空からこちらに向かってきていた。
アスハはそれに気が付くと、飛び立ってそれを迎える。
空中で何かを話す天狗とアスハ。
するとアスハは焦るような顔で戻ってきた。
「……ヨシュア様! 魔王軍の特使を名乗る者が、村に来ているそうです!」
「なんだと?」
いや、俺は以前、白砂島でリザードマンのオルトに魔王との交渉の場が持てないか依頼した。
きっと、その件についてだろう。
俺はアスハに伝える。
「とりあえず、長老たちの集まる家で待ってもらうよう伝えてくれ。茶と果物を出して……エクレシアとベルドス、モニカたちには、内外の警戒を厳重にするよう頼む」
「はい!」
アスハはそう言うと、すぐに天狗と共に村へ飛んでいった。
俺たちもその後を追い、急ぎフェンデル村に帰還するのだった。
 




