201話 静かな出会いでした!
「おお、ついに砂浜が見えなくなった!」
メッテは船の進む先を見て言った。
東へまっすぐ続いていた海岸が、岬のような所でようやく途切れている。
あの岬を境に、今度は北へ海岸が伸びていくのだろう。
「一旦、あの岬に上陸して食事にしようか。今後のために灯台も作っておきたい」
皆、俺の言葉に賛成してくれた。
船を岬の近くの浜に停め、船を回収する。
岬は小高い丘のようになっていたので、その頂上に上がることにした。
「おお、見晴らしがいい!」
ミリナが岬の上から海を眺めて言った。
イリアがそれに頷く。
「目を南東のほうに向けると、全く陸地が映りませんね」
「にゃにゃ。ずっと海が続いているのか気になるにゃ」
ローナがそう言うと、アスハが答える。
「暖かくなると、この海の向こうから大きな鳥がやってくるんです。きっと陸地があるのしょう」
「ああ。この海の向こうにはまた違う東の大陸や島がある。でも、その大陸の一番東に行くと、そこも海みたいで……ずっと続いているのかもしれないな」
東の大陸の者たちは、その海の向こうを知っているのだろうか。西は西でどうなっているのかという疑問も湧く。
「そしたら、またこの大陸に戻ってくるかも」
メルクの言葉に、俺は頷く。
「その可能性もあるな……意外に、世界が丸かったりして。とにかく、皆でご飯にしよう」
俺たちは岬の上で、料理をすることにした。
「よし。今日は、簡単で美味しい物を作るぞ!」
メッテはそう言って、グランク麦のパンを焼き始めた。
そうして焼きあがったグランク麦のパンに、切り込みを入れていく。
最後にその切れ込みに焼いた魚、野菜を挟む。少しだけ、かんきつ類のようなものも入れているようだ。
「よし、完成したぞ!」
メッテが声を上げる。
たしかに簡単な料理だ。
だけど、誰もメッテの作る料理を不安に思うものはいない。
俺たちは岬で腰を落とすと、魚と野菜を挟んだパンを両手で持ち、それをぱくりと頬張る。
「美味い……魚とかんきつ類がよく合うな……」
俺が言うと、もぐもぐ食べるメルクも呟く。
「野菜もシャキシャキしている」
「パンもカリっとしてます!」
アスハは食感を楽しむようにパンを噛み締めた。
「本当に美味しい……なんだか、日に日に食べる物がますます美味しくなっていきますね」
イリアも微笑ましそうに言った。
ローナとミリナも無言でむしゃむしゃ食べていく。
それを見たアスハが言う。
「二人もすっかりメッテさんの料理が気に入ったみたいですね」
「ふふ、当然だ。簡単だから、一人一回はおかわりを許可するぞ!」
メッテがそう口にするなり、皆おかわりと言った。俺もどさくさに紛れて。
「お、おう! 今作る!」
嬉しそうな顔でメッテは答えると、すぐにまたパンを焼き始めた。
その後も、俺たちはしばらくこの岬で食事をするのだった。
「いやあ、食った食った……皆、美味しかったか?」
メッテの声に、皆うんうんと頷く。
俺は皆に向けて言う。
「そしたら、俺は灯台を造るよ。皆はここで休んでいてくれ」
「なら、少し休ませてもらうか。ちょうど、椅子にぴったしの岩があるし」
よいしょと、メッテは岬の上にあった岩に腰を落とそうとする。
だが、少し尻が触れると、メッテは首を傾げた。
「うん? な、なんだ、岩がぴくりと」
「なんだはこっちのセリフよ……なんなの、あなたたち?」
その声が聞こえてきたのは、メッテの座ろうとした岩からだ。
「え? ──っ!?」
メッテが座ろうとしていたのは、岩ではなかった。
岩から現れたのは、動物の頭、そして四肢。
皆が声を揃える。
「……亀!?」
俺たちは早速、亀を見つけるのだった。




