表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/253

200話 亀探しの旅に出ました!

「それじゃあ、お父さん。行ってくるよ」


 ミリナがそう言うも、家の中にいるヨモツからは返事がなかった。


 メルクがミリナの背中をポンと叩く。


「気にしない。セレスが来たら、どうせ外に出る」

「うん……」


 ミリナは頷くと、もう一度ヨモツを見て、俺たちと共にフェンデルの城門へと向かった。

 俺たちはこれから、亀を探しにいく。


 ミリナも付いてくるので、ヨモツに挨拶をしたのだが……やっぱりヨモツは元気がなかった。


 狐人の前族長と話した後、俺はヨモツに訊ねた。お前は、死んだ者に会いたいのかと。


 ヨモツは何も答えなかった。魔王に関することはやはり、絶対に口を割るつもりはないらしい。


 とはいえ、今のヨモツにはもうそれに加担することはできない。魔王やキュウビの成功を祈るしかできない。


 ただ一つ分からないのは、キュウビとヨモツの行動と、魔王軍全体の動きの呼吸が合ってないように見える。


 俺たちも救援に向かったトレア王国がああも混乱しているとき、南にいる魔王軍は動かなかった。


 ヨモツが捕まったときの態度も変だった。


 魔王に引き渡すと言ったら、それだけは辞めるよう言っていた。ヨモツとキュウビが魔王に無断で、独自行動を取っている可能性はある。


 また、白砂島で会ったオルトらリザードマンは、戦いに積極的でなかった。一方で、魔王軍上層部は戦いを望んでいると主張していた。


 全体的に足並みが揃っていない……魔王が部族を統制できてないということだろうか。


 いずれにせよ、こちらは自分たちの態勢を盤石にするだけだ。

 残る大陸東海岸の南部を調べ、そこにいる亀たちと接触する。


「それじゃあ、行くか」


 俺の言葉に、イリアたちはコクリと頷いた。


 それから、とりあえずはノワ族の住処であるノワール村までは馬車で向かうことにした。


 さっそくユミルたちドワーフと、ゴーレムが街道を敷いてくれたのだ。


 フェンデル村とも接続された街道を進んでいく。


「すごいな、これは……」


 俺は馬車を走らせながら、思わずそう呟いた。


 メルクも呟く。


「全く揺れない」


 こんな街道は初めてだ。


 敷かれた石材に凹凸がないだけでなく、街道の中央には平行に伸びる溝があった。全部で四本の溝だ。


 その溝には鉄板が張られているようで、馬車の車輪がそこを通れるようになっている。右二本がフェンデル方面に向かう溝で、左二本がノワール村方面に向かうための溝のようだ。


 この溝のおかげで、揺れることも馬車が道を外れることもない。


 イリアが言う。


「もっと速度を出せそうですね」

「そうだな。馬の体力次第だけど、緊急時はすぐに駆けつけることができそうだ」


 今は普通に走っているが、馬をもっと速く走らせることもできそうだ。


「さすがドワーフだな……」


 フェンデルからドワーフ族の暮らす山ユミルディアに着くと、街道は山に掘られた坑道のようなものに繋がっていた。この坑道を抜けると、ノワール村への街道に入る。


 坑道の中ではユミルディアの倉庫に繋がる荷下ろし場が見えた。これなら雨に濡れることなく、物資のやりとりができる。


 俺たちは声をかけてくるドワーフたちに挨拶し、坑道を進んでいく。


 馬車の上でメッテが呟いた。


「ドワーフたち……見ないうちに、色々な物を作るようになってきたな」

「もしかしたら、前の飛行艇も作ってしまうかもしれませんね」


 アスハもそう答えた。


 そう遠くない内に、本当に飛行艇を作るかもしれない……ユミルが今、色々実験してくれているし。


 そんなこんなで、ノワール村まではあっという間だった。


 魔法を覚え、道具を使えるようになったノワール族も、だいぶ暮らしが安定してきたようだ。

 食料も、フェンデルから送らなくても自分たちで確保できている。


「にゃにゃ! よくぞ来たにゃ!」


 迎えてくれたのは、黒猫のローナだ。


「ローナ。村の調子はどうだ?」

「いい感じにゃ! お腹いっぱい食べられるようになったのはもちろんじゃが、子供たちもフェンデルのガッコ―が楽しいって言っているにゃ!」

「それはよかった」


 フェンデルの学校には、本当に多くの種族が集まるようになった。


 ローナが訊ねてくる。


「それで、亀たちを探しに行くんじゃな?」

「ああ。ここから南に行って、海から船で行こうと思う」


 亀は水辺に住まう……という先入観がある。

 また、数年前にカッパたちが、海岸で亀を見たという報告も聞いた。


「なら、ローナもついていくにゃ!」

「おお、歓迎するよ。亀たちも、ノワ族に見覚えがあるかもしれないし」


 イリアやメッテたちは、亀を見たことも聞いたこともなかったらしい。天狗も遠くからでは、亜人とは認識できなかったようだ。


 だが、ノワ族と狐人は度々接触している。

 ミリナとローナがいれば、亀とも話がスムーズに進むだろう。


 そうして俺たちはローナと共に南の砂浜に向かい、そこで船に乗り込むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ