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185話 変わった種族でした!?

「にゃ! ど、どこからそんなものを出しているにゃ!?」


 ローナは俺の手から出される石や木の建材を見て、声を上げた。


「これが俺の生産魔法なんだ……っと、こんな感じかな。完成だ」


 俺は巨岩の上に立つ家を見て言った。


 ローナや黒猫たちは、その家を見上げて目を丸くしていた。


「ローナたちは、巨岩に掘った溝から上がってくれ」

「にゃにゃ! 分かったにゃ!」


 ローナや黒猫たちは、巨岩に掘られたらせん状の溝を上がっていく。この溝は俺が風魔法で切り出したもので、上層への通路となる。


 一方の俺は梯子をかけ、それを上がった。


 頂上までは三階建ての家の高さで、上がるまで結構大変だ。でも、敵からの侵入を防ぐならこのほうがいい。


 巨岩の上はちょっとした平地になっていて、家が三、四軒は建てられそうな広さがあった。


 そこに二階建ての石造りの家がぽつんと建っている。


 人間や亜人が住むには少し手狭だが、猫の姿のノワ族には問題ない。


「にゃにゃ! こんなのが一瞬で!」

「うちらの先祖も使っていたまほーってやつらしいにゃ!」

「すごいにゃ! まほーはそんなこともできるにゃ?」


 黒猫たちはにゃにゃと声を上げた。


 それを見たメルクはぽつりと呟く。


「多い。狩りに出たのを含めれば二百はいそう」


 メルクの言う通り、ノワ族は結構な多さだ。


 つまりは、それだけの食料が必要になる。


 洞窟に蓄えていた木の実や干された野ネズミなどは、先程のデスワームにほとんど食べられてしまったようだ。


 先ほど俺がこの家を造っているときも、ノワ族は食料について不安を口にしていた。多くの者が今も狩りに出ているようだ。


 だがやがて地上から声が響く。


「とりあえず、シールドシェルを狩ってきたぞ!」


 地上ではシールドシェルが十体以上入った漁網を軽々と引きずるメッテが。


 メッテとイリアで狩ってきてくれたようだ。


 さきほどのデビルスネークの肉もあるし数日は持つだろうが……


 梯子で上がってきたメッテは、岩の上まで漁網を引き上げていく。


「さあ食料を持ってきたぞ。今、焼くから食べろ」


 ローナが申し訳なさそうな顔で訊ねる。


「い、いいのかにゃ」

「困った時はお互い様ですよ。気になさらないでください」


 イリアはそう答えると、メッテと共に俺の作った焚火台で料理を始める。


 ローナはそれに頭を下げる。


「ありがとにゃ」


 何か食料が得られるようにしないとな。


 だが、ノワ族は亜人の姿になれないから道具を扱えない。爪や牙を使って狩りをするしかないだろう。


 しばらくはフェンデルから定期的に食料を運ぶ必要があるかもしれない。


 ローナはこう呟く。


「うちらも立って物を持てればいいのじゃが……にゃ」


 その場でローナは後ろ脚だけで立ち上がる。


 長続きするがやっぱり辛いようで、ぴくぴくと脚を震わせていた。


 メルクが訊ねる。


「道具は便利。変身できない?」

「にゃあ……どうやるか分からないにゃあ」

「念じるだけ」

「にゃっ……駄目にゃ」


 ローナだけでなく、他のノワ族も目を瞑って念じたようだが、やはり亜人の姿にはなれないらしい。


 しかしローナは言う。


「皆でなんとか立つ練習をしてみるにゃ!」

「そうか。でも、無理はしないでくれよ」


 いちおうノワ族の体のサイズに合った道具を作ってみるかな。


 そんな中、ローナは何かを思い出すように言う。


「そうにゃ。ここまでしてもらったのにゃ。皆で話した結果、うちらのお宝をあげることにしたにゃ」

「いや、そんな大事な物受け取れないよ。見せてくれるだけで十分だ」

「遠慮しないで欲しいにゃ。ともかく、持ってくるのにゃ」


 ローナはそう言って、後ろの黒猫たちに顔を向けた。


 すると黒猫たちは俺の前に、口に加えてぼろぼろの道具を運んでくる。


「これが、我が一族に伝わる秘宝にゃ!」

「どれもボロボロ」


 メルクがそう言うと、ローナが怒る。


「にゃ! これはうちらの先祖が代々、大事に引き継いできたモノにゃ!」

「何に使う?」


 メルクの問いに、ローナは言葉に詰まる。


「そ、それは……分からないけど、お宝なのにゃ!」


 ローナはそう言い切った。


 ノワ族の宝はどれもさび付いていたり、古びた木の枝のようにしか見えなかった。

 しかし共通しているのは、どれも細長いまっすぐとした形をしているということ。


「これは……杖か」

「杖?」


 首を傾げるローナに俺は頷く。


「魔法を使うための道具だ。なくても使えるけど、杖があることでより魔力の吸収と魔法の操作が……えっと、ともかく魔法を使いやすくするための道具なんだ」

「にゃるほど。にゃら、うちらの先祖はこれを使って、まほーを使ってたかもしれないにゃ」

「その可能性が高いな。でも、魔法の名前とか憶えているか?」

「にゃあ……分からにゃいな」


 そう呟くローナにメルクとアスハが顔を見合わせる。


「メルクたちが魔法を教える」

「にゃにゃ、本当かにゃ?」

「魔法は道具と同じぐらい便利。魔法を使えれば、食料も簡単に集められる」


 メルクの言う通り、ノワ族が食料を集めたりするのに役に立つだろう。


 ノワ族の黒猫たちの体には、それなりの魔力を感じられる。もともと魔法を得意としていた種族なのかもしれない。


「なら、俺は杖を綺麗にするよ。一度、この宝を預からせてもらっていいかな?」

「もちろんなのにゃ! 皆、まほーを覚えるにゃ!」


 こうして俺たちは、ノワ族に魔法を教えることになった。

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