178話 同じミスを犯しました!?
本作の小説情報キーワードにはR15とありますが、念のため。
今回のお話はR15でお願いいたします(たいして何ということもないですが)
閑話のようなものですので、飛ばしていただいても結構です。
このお話で三章は完結となります。
フェンデルへの凱旋を祝う宴会の途中。
俺は体が熱くなるのを感じ、一足先に家に戻っていた。
別に頭痛があったり、気持ち悪さを感じているわけではない。胸が高鳴るような不思議な感覚だ。
酒を飲んだわけでもないのに体が熱い……というか、なんかこの感じ、前にもあったような。
枕となってくれているウィズが一際ひんやりと感じられた。
そんな中、家のすぐ近くから若い女の声が響いてくる。
「もうっ……本当に心配してたんだよ」
「お前は、いつまで俺をガキ扱いするつもりだよ……俺はもう一人前の大人だぞ」
聞こえてきたのは、遠征にも同行した鬼人の声だ。
「私……会いたかった……会いたくて仕方なかった」
「俺もだ……毎日、お前のこと考えていた」
次の瞬間、二人は互いに愛していると言って、激しいキスの音を響かせた。時折響くのは、角が触れる音だろうか……
……熱いな。さらに熱くなってきた。もっと相応しい場所があるだろ。
二人の声がさらに大胆なものになってくると、俺の胸の鼓動もどんどんと早くなっていく。
駄目だ……耳栓でも作るか。
そう思い、俺は上半身を起こした。
だがその瞬間、がちゃっと家の扉が開く。
「うん? イリアたちか……?」
そこにいたのは、寝間着のローブに身を包んだイリア、メッテ、モニカがいた。
「メルクさんたちは風呂ですね」
イリアの声にメッテが頷く。
「ええ。子供たちの世話でしばらく抜け出せないでしょう。メルクのやつ、旅のことをずっと武勇伝みたいに小さな子供に語ってます。ユミルもアスハも」
「なんだかズルい気もしますけど……」
モニカがそう言うと、イリアがこう答える。
「なら、モニカさんはまた今度でも。今日は私とメッテだけで」
「そ、それは! せっかくですから、私も!」
せっかくとは、どういうことだろうか。
だが次の瞬間、俺はその意味を知ることとなる。
イリアたちはばさりとローブを脱ぎ捨てたのだ。
「……え?」
俺は我が目を疑った。
イリアたちの付けている下着は、俺が大量に作ったものではなかった。
皆、すらっとした体に似合った、際どい下着を身に着けている。
イリアはその長い白銀の髪の色と同じ、純白の下着を身に着けていた。可愛らしいレースの下着だ。さらに太腿の半分まで包む長い靴下を履いて、ガーターベルトまでつけている。
いつになく大人っぽいイリアの姿に、俺は強く胸が高鳴るのを感じた。そもそもガーターベルトを付けた女性を、俺はこの時まで一度も見たことがなかった。
紫色の髪をポニーテールにしたメッテも、目のやり場に困る光沢のある紫色の下着を身に着けていた。三人の中ではもっとも布少ない下着で、胸も尻も溢れそうになっている。ある意味でメッテらしい大胆な格好だった。
とはいえイリア同様、長靴下とガーターベルトを付けているので、いつもとは違って見える。
そして水色の下着のモニカだ。
イリアとメッテと違い、水色のコルセットを付けている。とはいえ、これはこれで……
二人と違い恥ずかしそうにしているのも、なんだか変な気分になる。
「み、皆、どうしたの、それ?」
そう訊ねる俺は、とても間抜けな顔をしていたと思う。
イリアが答える。
「買ったんです、王都で」
「王都……」
俺はイリアたちが大人向けの服飾店に入っていたのを思い出す。
「そ、そうなんだ」
「どうでしょうか、ヨシュア様? 似合っているでしょうか?」
少し自信なさげな顔で聞いてくるイリアに、俺は無言で頷くしかなかった。
それからもぞもぞと布団の中に潜る。カメが甲羅に籠るように、布団を強く握って。
しかしその布団は簡単にはがされ、俺の顔を覗き込むように立つ三人が目に映る。
見上げる三人は、本当に美しい体をしていた。
イリアたちはそのまま俺の隣で横になった。
「……私っ! やっぱり子供が欲しい!」
「俺も! いっぱい欲しい!」
外から聞こえる声が、さらに気まずい空気にさせる。いい加減、場所を改めたらどうなのだろうか。
いや、本当に空気が違う……こんないい香り、どこで。
イリアたちからは、とてもいい香りが漂ってきた。
香水だろうか。エクレシアの作った物とはまた違うので、これも王都で買ったのかもしれない。
……もはや頭がどうにかなってしまいそうだ。
「来てっ!」
「行くぞ!」
そんな声が外から聞こえた時、俺の頭の中で何かが弾けた気がした。
だが、俺は耐え留まる。
シュバルツ騎士団で鍛えた鋼の理性は、こんな場所では決して砕けない。
俺は目をぎゅっと閉じた。
しかし次の瞬間、俺の顔を柔らかいもの包む。
「ヨシュア様……大好きです」
「イリア……」
「私もだ……ヨシュア」
後ろからはメッテの声も響いてきた。すぐに俺の背中に抱き着いてくる。
モニカも俺の手をぎゅっと握って言う。
「お慕いしています、ヨシュア様……」
俺は三人の甘い声に、心がどっかにいってしまいそうだった。
俺だって三人……いや、他の皆も大好きだ。
だけど、こんなに俺一人が幸せになってもいいものだろうか。
いや、自分の気持ちに嘘は吐けない。三人も色々と恥ずかしいのを堪えて、こんなことをしてくれているんだろうから。
「俺も……皆のことが」
そう言いかけたときだった。
ドアがばたんと開く。
「見つけた」
「また、抜け駆けですか! 今度はメッテさんとモニカさんまで!」
怒り心頭と言った顔なのは、メルクとアスハだった。
「ま、待て皆。争う必要は!」
そう言うもすでに遅かった。
それからは誰が最初だと、皆俺をもみくちゃにする。
そこには、いつもの鬼もちゃっかりいた。最初は恐怖だったが、なんというか最近慣れたような……
ともかく俺はその夜、好き放題にされるのだった。
ここまでお読みくださりありがとうございます!
次回からは四章となります!
周囲が落ち着き、次は未開拓の場所へ?
 




