表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/253

162話 壊れてました!?

「もう大丈夫だからな」


 エクレシアはリーセを抱き抱えながら言った。


 先ほどまでは不安そうな顔をしていたリーセだが、俺たちの顔を思い出したのか落ち着きを取り戻している。


 以前、リーセはフェンデル村で少しの間過ごしていたから、俺たちの顔を覚えていたのだろう。


 ユミルはリーセに変な顔を作って挨拶する。


「久しぶりなのじゃ~! ほれ、エナも同じように挨拶するのじゃ!」

「え、えっと、そういう顔でですか?」

「当然じゃ! 子供はこういうの喜ぶのじゃ!」

「え、エナです。よろしくお願いします、リーセさん」


 ユミルの声に、仕方なくエナも変な顔をして挨拶した。


 リーセはそれを見て耐えきれなくなったのか笑い出す。


「ははっ……やめて……二人とも変な顔」


 その言葉にユミルは俺と顔を見合わせる。


 リーセはもう喋れるようになっていた。以前は、まだ会話できないと思っていたが成長したのだろう。


 ユミルは恥ずかしくなったのか顔を赤くする。エナも同様に。


 ともかくユミルたちのおかげで、リーセの雰囲気が明るくなり話しやすくなった。


「しかし、どうしてこんな場所に? ベイロンやネイアはどうした?」


 俺の声に、リーセはちょっと暗そうな顔をした。

 そして口を開く。


「父さん……お姉ちゃん……ケンカする。だから、仲良しさせたかった」

「ふむ。父と娘で喧嘩か。珍しくもないが……まだ小さなリーセが見ている前でそれは許せんな」


 エクレシアの声に、ユミルもエナも全くと首を縦に振る。


 確かに、ネイアが父のベイロンに意見をするところを俺も見ていた。組織のトップとその娘だから、意見が食い違うことも多いのだろう。


 俺はリーセの視線の高さと合うよう腰を落とす。


「それは大変だったな。でも、どうしてリーセはあの広場に一人で来たんだ?」

「直してほしかった。お父さんが壊しちゃったもの」


 リーセはそう言って、袋を俺に見せた。

 袋の口を開けると、そこにはキラキラとしたものが入っていた。


「何かの欠片か?」


 丸みを帯びている欠片を見るに、いくつかの宝石が砕けてしまったもののようだ。摩耗した組み紐も入っているから、ブレスレットだったのだろう。紐の一部には血のようなものが付いていた。


 リーセは悲しそうな顔でそれを見て言う。


「お父さんが腕につけていたの。だから直してもらおうって、色んな人間に頼んだ。でも……」

「断られたわけだな……」

「ふむ砕けた宝石か……確かに、これはちょい厳しいのう」


 職人でもあるユミルはそう呟いた。砕けた石をくっつけるのは容易ではない。


「そう、だよね……皆無理って言ってた」


 リーセは暗い顔をする。


 もちろん、近くの店では直せないだろう。


 だが、俺の生産魔法なら……


「……俺が、直してみてもいいか?」


 リーセの表情が途端に明るくなる。


「直せるの!?」

「ああ。でも、足りない部品があるかもしれない……とにかく、一度預かってもいいかな?」

「うん!」


 リーセは嬉しそうな顔で頷くと、袋を手渡してくれた。


 それから俺は魔法工房に、袋の中のブレスレットを回収する。


「粉のようになってしまっているな……埃やもともとブレスレットじゃない木くずも入ってそうだ。これは、ちょっと時間が掛かりそうだ。どこか、そこの喫茶店でも入ろう」


 そう提案すると、皆賛成と返事した。


 俺たちは、大通りにテーブルが置かれた喫茶店に行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ