表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

161/253

161話 迷子でした!?

「こっちじゃ!」


 ユミルが指さしたのは、狭い路地裏だった。


 俺は急ぎ、その路地裏に向かう。


 すると虎人のリーセが、先程の男に家の中へと連れ込まれていた。リーセは抵抗しているが、相手は大人だ。とても逃げられない。


 俺たちはすぐにリーセを追った。


 しかし扉は閉まっており、開かない。


 だが小窓の隙間から、中の様子がうかがえた。リーセを囲むように先程の男と、柄の悪そうな男が数名いる。


 リーセの顔にはロープが巻かれ、口を塞がれていた。


「へへ。まさか、あのグランク傭兵団の子供を捕まえるとはな」

「あいつら、やけに同族には高い値を付けて買い戻すしな。こりゃ、いい値段で売れるぜ」


 奴隷商とまでいかなくても、チンピラのようなやつらか。


 エクレシアはそれを見て怒りを露にする。


「なんてやつらだ。扉を開き、あいつらを」

「待ってくれ、エクレシア。刺激してリーセに刃物でも向けられたら厄介だ。ここは、奇襲で行こう」


 そう言って俺は、肩に乗るウィズに話しかける。


「ウィズ……この扉の鍵を、頼めるか?」


 ウィズは体を縦に曲げると、ぴょんと地面に飛び降りる。


 そして扉の下にある隙間へと入っていった。


 ウィズは俺と長年、色々なものを作ってきた。その中には、鍵や錠前もあった。だから鍵の構造は熟知している。このまま扉の施錠を解いてくれるだろう。


「エクレシアは、ここで警戒を頼む。エナは水魔法の準備を。ユミルは、扉が開いたらこれを部屋に投げてくれ」

「……うん、なんじゃこれは? 爆弾か?」


 ユミルは俺から球のようなものを渡されると、首を傾げた。


「いや、煙幕だ。煙を起こせる。その煙でやつらが混乱している隙に、俺がリーセを連れてくる」


 俺はそう言って、特殊な兜を魔法工房から出した。すっぽり頭を覆うような形で、顔側にはガラスが付いている。これなら煙を吸うこともないし、目に煙が入ることもない。


 視界はどうするのかということだが、俺には魔力の動きが分かる。リーセの魔力も分かるから、まっすぐに進める。


 皆、俺に分かったと頷く。


 すると、ガチャリと扉の錠前が開く音がした。


「よし、行くぞ?」

「わかったのじゃ!」


 俺が扉を勢いよく開けると、ユミルが火を点けた煙幕玉を部屋に投げ込んだ。


 すぐに、煙幕玉から煙が広がる。ただし、十秒もすれば煙は消えてしまう。


 俺はリーセに向かって走った。


「な、なんだ!?」


 案の定混乱する男たち。

 しかし俺にはリーセがどこにいるか魔力で分かる。


 リーセを抱き抱え、そのまま部屋を出ていく。


「ま、ま、待ちやがれ!!」


 男たちは案の定追ってきた。


 しかしこちらには、水魔法の使い手エナがいる。俺が作った、水魔法の効果が増大する杖こそ今回は持ってきていないが、エナは強力な水魔法が使えるようになっていた。


「エナ! 彼らの足元に!」

「はい!」


 エナは両手を向け、水魔法を放った。


「なっ!? なんだ、この水は!?」


 とても魔法で出たとは思えない波。男たちはその波に足を取られ、倒れてしまう。


「さすがじゃ、エナ!」


 ユミルがそう言うと、エナは少し恥ずかしそうにする。


 そのまま俺たちは、路地裏から抜け出しその場から退散するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ