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154話 仮面の男でした!?

「うぉおおおお!」


 メッテの声が響き終わると、そこには崩れ去った白骨だけ残っていた。

 金棒で倒していたのだが、声で倒しているような錯覚を覚えるほどの速さでメッテはスケルトンを倒した。


 一方のイリアは音も立てず、黙々とスケルトンを切り捨てていった。


 そうやってスケルトンを倒しながら、俺たちは白壁の神殿の前に到着する。


 最初は無限にスケルトンが出てくるかと思ったが、もう打ち止めのようだ。墓地に目を移すが、そこからはもうスケルトンが出てくる気配がない。


 俺はそれを見て、一抹の不安が頭によぎる。


 まさか……すでに墓地の遺骨は全てスケルトンにされてしまっていたか?


 いや、ここは重要な場所だから、スケルトンを待機させていたのだろう。


 そんな中、イリアがいち早く空を見上げた。


「皆さん! 上です! 神殿の上に!」


 俺たちは皆、白壁の神殿の屋根に顔を向けた。


 そこには、人型の者が立っていた。


 一見、人間にしか見えない。

 だが、その顔は狐の面で覆い隠されていた。


「お前はあの時の! キュウビ……いや、違うな」


 以前フェンデルの北で、ミノタウロスとエルフの争いを仲裁に行った際、俺はキュウビと名乗る狐の面の者を見た。

 自らを魔王軍の密偵と名乗り、北に行くといって俺たちから逃げていったが……


 そのキュウビと、屋根の上の者は同じ仮面をつけている。しかし、キュウビより体格がしっかりしていた。キュウビは男女どちらか分からなかったが、屋根の上の仮面の者は男のような体型だ。


 仮面の者は、俺に訊ねる。


「……キュウビを知っているのか?」

「この前、南で会った。ミノタウロスに人間を襲うように煽っていた。ミノタウロスはエルフを襲ったがな」

「あいつが、そんなへまを……ふむ、変な組み合わせだが、お前たちは亜人か?」

「人に物を訊ねるなら、まずは名乗ったらどうだ?」

「俺はヨモツ。魔王軍の密偵だ」

「お前も、密偵と名乗るんだな……」


 俺はヨモツが、キュウビと似ていることを確信する。キュウビも密偵と名乗った。同じ仮面だし、同じ種族かもしれない。


 それにしても、密偵が密偵と名乗るのはやっぱりおかしな話だが。


 ともかく、俺も自分の名を名乗る。


「俺はヨシュア。フェンデル同盟の盟主だ」

「フェンデル同盟?」

「人間と亜人、ここにはいないが魔物も一緒に暮らす国だ」

「そんな国があるのか……まあいい。俺たちは亜人とは戦うつもりはない」

「この前のキュウビは、人も亜人も変わらないと言ったぞ?」


 俺はキュウビに、フェンデル同盟には魔王軍と戦う意思はないと伝えた。

 しかしキュウビは、人も亜人も一緒だと一笑に付された。


 ヨモツは首を横に振る。


「キュウビがそう考えるのも無理はない……だが、あのお方には少なくとも、亜人と敵対する意思はない」

「あのお方とは、魔王のことか?」

「そうだ」


 魔王の意思などと言うのだ。このヨモツは魔王軍でもそれなりの高位の者なのだろう。


 フェンデルの南にある白砂島で会ったリザードマンも、魔王に会談できないか聞いてくれると言っていた。魔王としては、やはり主な敵は人間なのだろう。


 ヨモツはメッテたちを見て言う。


「だから、亜人たちよ。貴様らが退くというのなら、追いはせぬ。しかし、そこの三人の人間どもは違う」

「ふっ……」


 ヨモツの声に失笑したのはメッテだ。


 静かにヨモツはメッテに顔を向ける。


「……何がおかしい?」

「いや、今の言葉でたいした男でないと思ったのだ」

「何が言いたい?」

「イリア様が何者かも見抜けない男だと言ったんだ。ここにいる人間は二人しかいないんだ」


 イリアは弓を構えながら言う。


「結局あの方からすれば、亜人も人も大した差がないのでしょう。いずれにせよ、私たちがヨシュア様を見捨てることはありません」


 メルクも頷く。


「フェンデル同盟は亜人だけじゃない。人間も魔物もいる。魔王軍とは違う」

「……せっかく慈悲を与えてやろうというのに、やはり亜人は馬鹿ばかりだ。まあよい、俺の本音もキュウビと同じ……せいぜいお前たちの骸でさらに多くの人間を殺させてもらうとしよう」


 仮面の男はそう言うと、片手を天に掲げ、紫色の光を体に宿すのだった。

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