152話 突入しました!
「よし、ここまで深く杭を打てば大丈夫だ」
人の背丈の二倍はある長さの杭を地中に埋め込んだ。杭は全部で三本だが、三脚のようにつながっており、接続した部分にロープを通す穴がある。
そこにイリアと共にロープを通し、展張していくと、王宮の城壁と繋がる索道が完成した。
イリアが汗を拭って言う。
「敵に見つからずに完成しましたね!」
「ああ、ここまでは順調だ。あとは皆が来るのを……メッテたちも気が付いたようだな」
宮殿の城壁の上で、メッテたちは索道に荷台を吊り下げている。
まずは小さな荷台が通され、箱詰めになった岩が下ろされてきた。
次にウィズが小さな荷台に乗って降りてきた。ここまでは試運転といったところだ。
「ウィズ、大丈夫そうだったか?」
ウィズは今までも俺と共に索道を作っている。揺れや、ロープの縺れなど確認して、索道が安全かどうかいつも調べてもらっていた。
俺の声にウィズが体を縦に曲げる。どうやら問題ないらしい。
それから、俺は持っていた旗を城壁に振った。
しばらくすると、城壁の上からわあっという掛け声が上がる。
「イーリスさんが演説しているみたいですね。そろそろ陽動が始まります」
俺には聞こえないが、イリアには聞こえたようだ。それからすぐに宮殿の城壁が開き、兵士たちが出ていった。
目標は神殿のある地区と宮殿地区を結び付ける橋。
スケルトンはやはり、その橋を守ろうと大挙して集まってきた。
千を軽く超え、すぐに万近い数にまで膨れ上がる。
王国兵はそこで激戦を演じ始める。攻略が目的でないので、盾を使ったりして敵をくぎ付けにする作戦のようだ。
「よし、いい感じに惹きつけてくれてるな」
「あとは皆さんがやってくるだけですね!」
改めて城壁に目を向けると、索道に大きな荷台が通されていた。
その荷台は、勢いよく……はやってこなかった。アスハが風魔法で荷台に風を吹きつけ、ゆっくり降ろしているからだ。俺が頼んでおいた。
そのおかげもあってか、荷台は無事にこちらまで降りてきた。
メッテ、メルク、アスハ、そしてイーリスが荷台から下りる。
ユミルとセレス、モニカには船で、川にいてもらう。もしものときは、俺たちの脱出を手伝ってもらうのだ。
俺が荷台からユミルに頼んでおいたものを回収しているとメルクが呟く。
「思ったのと違った。もっと、シュバって到着すると思った」
「あまり勢いよく下りてくると危険だからな……それよりも皆、準備は良いか」
俺の言葉に皆頷くと、今度はイーリスが口を開く。
「皆、王国のためにこんな危険なこと……本当にありがとう。私と王国の民は、必ずあなたたちに報いるわ」
頭を下げるイーリスに、メッテがうんと頷く。
「なら、できればこの国の美味しいものが食べたいな」
「メルクも」
「私は、お召し物とか」
メルクもアスハもそんなことを言った。
「私はこの件でフェンデル同盟と王国の人々が仲良くなれればいいなと思います。
イリアの言葉に、イーリスは「必ずそうしよう」と頷いた。それから俺に真剣な眼差しを向ける。
「ヨシュア、行こう」
「ああ。皆行くぞ」
皆、応と応えた。
それから神殿に向かって走り出した。
 




