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15話 村を柵で囲みました!

「馬は村に集めろ! 装備はヨシュアのもとへ!」


 メッテはそう言って、鬼人たちに奴隷狩りの遺物の回収を命じた。


 鬼人たちはいとも簡単に奴隷狩りたちを倒してしまった。

 ちゃんとした武器さえあれば、彼らは戦闘に秀でた種族なのかもしれない。


 そんな中、小さい狼はイリアの前で伏せて、頭を下げた。


「ありがとうございます……わたしはおとーさ……マリティス族の族長ファロンの娘メルクです」

「メルクさんですね。私はフェンデル族のイリアと申します」

「あ……ごめんなさい、メルクと申します」


 メルクは間違えたとばかりに、そう言い直した。


「そ、そんなかしこまらなくても大丈夫ですよ。メルクさん」

「かしこま……らなくて?」


 小さな狼メルクは首を傾げた。


「わざわざ、難しい言葉を使わなくても大丈夫ってことだよ。です、とか、ますとかいらないってこと」


 俺は周囲の、怪我をした人狼に回復魔法を掛けながら、メルクに言った。


「き、傷が、治った? い、痛みも……」


 治療を受けた人狼に俺は言う。


「俺の魔法は一時しのぎに過ぎない。しばらくは安静にしておくんだ」


 俺が言うと、イリアが鬼人たちに言った。


「ヨシュア様の治療を受けた方を天幕に!」

「へ、へい!」


 鬼人たちは少し不安そうにしながらも天幕へ、人狼を運んでいった。


「見たところ、これで治療が必要なやつは皆、治せたかな」


 俺はそう言って周囲を見渡した。


 するとメルクが俺の前にやってきて、じいっと見る。


 なんだかとても眠そうな、間の抜けた顔をしている。

 目じりが垂れているっていうのかな。狼にしては、大人しそうだ。


「何、やったの?」

「魔法、だよ……うん? 君も頬に傷がついてるな」

「あ……枝に当たったのかも」


 メルクは頬に前脚を当てる。

 割と深い傷だが、逃げるのに精いっぱいだったのか、今気づいたようだ。


「待ってろ。今、傷を治す」

「うん……おおー」


 傷が治ると、メルクは抑揚のない口調で、驚きを露にした。


「暖かい……とても」


 そう言うと、メルクはすやすやとその場で寝てしまった。

 目には涙が浮かんでいるようだった。


 イリアはそんなメルクを抱きかかえる。


「この子……まだだいぶ幼い人狼のようですね」

「ああ、大人の人狼は人間よりも遥かに大きいはずだ」

「ご両親は……私、他の人狼の話を聞いてきますね」

「それがいい。俺は、周囲の木材を集めてきてもいいか。次襲撃があってもいいように、村を柵で囲いたい」


 見張り櫓で事前に対応できるが、できれば馬が入ってこないよう、防衛の際に身を隠せるよう、柵が欲しい。


 もちろん岩を見つけ、城壁をつくるまでの繋だ。


 もう少し武器や道具を作ったら、石材に適した岩や金属が周囲にないか探索するとしよう。 


「お願いいたします。ただ、木材でしたら」


 イリアはある方向を指さした。


 そこには、家が数件建てられるほどの丸太が山積みとなっていた。


「……え? どうしたんだ、あんな量の木材」

「鉄の斧を作っていただきましたし、ヨシュア様が必要になられると思い、木を伐らせていたのです。あそこに集めるよう、指示を出しておきました!」 

「そ、そうだったか。いや、助かるよ」


 五本しか斧は作ってなかったけどな……運ぶにしても、あの大きさはもう少し解体しないと無理だ。


「あっ……」


 思わず、そんな声が漏れた。

 遠くでは五べートルはあろう巨大な丸太をたった一人で運ぶ者がいたのだ。


 人間では絶対に不可能だ。


 鬼人はやはり力持ちなのだろう。


 それだけじゃない。クロスボウも鉄の斧もあっという間に使いこなしてみせた。覚えが悪いというのは、文字とかそんなことかもしれない。


 ともかく道具も武器も上手く扱える……これはもっと色々作ってやりたいな。


 そんなことを思いながら、俺は村の周囲に手早く、人の胸の高さぐらいの丸太の柵を張り巡らせた。


 また、簡単な馬の飼育方法や騎乗を鬼人たちに教え、さらにクロスボウと槍を増産するのだった。

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