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146話 呼び止められました!

 後方に石壁を設置し、俺は船に走っていた。


 やがて船が見えてくる。


「ヨシュア様たちが戻ってきたら、渡し板を!」


 船からモニカの叫びと、太い矢が矢継ぎ早に向かってくる。


 矢は俺たちの後ろから迫るスケルトンたちを粉砕していった。


「ヨシュア様、失礼します!」

「あ、アスハ! うぉっ!」


 アスハは俺を抱えると、船にそのまま乗せてもらった。


 イリアたちもぴょんと船へジャンプする。

 すぐに亜人たちはオールで桟橋を押して、船を離していく。


 スケルトンたちは河港に留まる者と、そのまま川へ突っ込んでくる者に分かれる。


 だが上手く泳げないのか、川に入ったスケルトンは上手く進めなかった。船には到底追いつけない。


 矢も飛んでくるが、甲板は紫鉄で覆われているから身を隠せば矢には当たらない。


 アスハや天狗が風魔法で矢を吹き飛ばしてくれるから、そもそも届いてこないのだが。


 そうして矢が届かない位置まで船を進めると、メッテが汗を拭って言う。


「岸がスケルトンでいっぱいになってしまったな……」

「警戒も強くなるでしょうね。ヨシュア様、一度島に引き返しますか?」


 イリアの声に俺は頷く。


「そうだな。助けた子供たちもいる。どこか休める場所が必要だろう……うん?」


 俺はどこかからおーいと叫ぶ声が聞こえた。


 その方向に真っ先に振り返ったのは、メルクだった。


「あそこ。誰かいる」

「あれは……人間だ!」


 河港とは対岸の、地下水道に繋がるような巨大な穴の入り口。

 そこから手を振る重装鎧の人間がいた。


「この国の騎士だ」


 獅子の紋章の入ったサーコートを着ている。

 体格と高い声からして女性のようだが、頭はバケツのような兜で覆われており顔は見えない。


「メルク……あの人間から腐った匂いはしないか?」


 使役されているアンデッドの可能性もある。

 メルクは鼻をくんくんと動かすと、首を横に振る。


「特にしない。人間の匂いだと思う」

「そうか。なら、一度近づいてみよう」


 俺は舵を取り、その地下水道のほうに船を近づける。


「中で泊められるよ! こっち!」


 騎士は手を振って地下水道の中まで誘導する。


 地下水道の中が見えてくるが、特に罠の気配もない。


 俺は地下水道の中へ船を進ませた。皆、オールを使い、巧みに船を操る。


 そうして地下水道の中で船を泊めると、地下水道の入り口に扉が下ろされた。


 誘導してくれた騎士が近寄ってくる。


「どこの誰かは知らないが、ありがとう。子供たちを助けてくれたのを見ていたよ」


 騎士は深く頭を下げた。


 俺も船から顔を出して、挨拶を返す。


「礼には及ばない。俺たちはフェンデル騎士団。亜人の戦士団……みたいなものだ」

「亜人!? ご、ごめん」

「いや、いいんだ。俺は人間だし、仲間には魔物もいる。俺は代表のヨシュア」

「私はイーリス。この国の──うん、ヨシュア?」


 騎士は言葉を止め、俺をじっと見つめてきた。


「ヨシュア……ヨシュアじゃん!?」

「え、えっと……」


 まさか、知人か?

 しかし、兜で声が籠って、いまいち分からない。

 それにイーリスという名の人物の知り合いはいない。


「私よ! アイリス! シュバルツ騎士団にいた頃、一緒に話したでしょ?」


 兜を脱ぐと、若い女性の顔が露になる。ブラウンの短い髪をふわっと揺らすのを見て、俺は思い出した。


「アイリス……アイリスじゃないか!?」


 俺は思わぬ場所で、かつての戦友と再会するのだった。

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